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破落戸達が覆面を付け始めた。
アーミュはその様子をぼんやりと眺めていたが、嗄れ声のローブ男が次に発した言葉に声を荒げる。
「(おい、王子はひっ捕まえろよ。
あぁ、傷の一つや二つは構わねぇ。
死んでなきゃそれでいい)」
「は!?
何言ってんのよ!?
フィスに傷ですって!? その上死んでなきゃいいって……アンタ、あたしを騙したわね!!」
嗄れ声のローブ男に掴み掛ろうとしたアーミュを、何処から現れたのか、覆面男が締め上げて押し倒した。
アーミュは大声を上げて暴れようとするが、それより早く眼前にギラリと光る刃先が付きつけられる。
「(うっせぇよ…おめぇが馬鹿なだけだろうが。
王子を傷つけねぇなんて、言った覚えはないぞ。
ってか、お前はもう用済みだ)」
「…!!」
アーミュの顎先に指をかけ、強引に顔を上向かせる。
「(大人しくしとくってんなら殺さねぇでおいてやる。
ま、行先の保証はしねぇがな)」
嗄れ声のローブ男が言い終るより早く、アーミュは猿轡を嚙まされていた。
「んん~~~~っ!! ん~~~」
顎先から指を外され、強かに地面に打ち付ける。
「(ったく、王子サマも気の毒なこった。
おめぇみたいな疫病神に付き纏われてよぉ…。
しかも嫌われて捨てられたってぇのに、更に嫌われようってんだから…。
頭おかしいんじゃねぇか?
ま、おめぇも別に王子サマに心底惚れてた訳じゃねぇみたいだしな。
心置きなくこの先の地獄を楽しめよ)」
嗄れ声のローブ男は立ち上がり、地面に押さえつけられたアーミュの後頭部を、ゴミでも見るような目で見下ろした。
エリルシアから見て、子供を抱えた覆面男の背後に回り込む事は可能そうだ。
しかし、覆面男も抱えられた子供の視線も、何処に向かっているのだろうと辿ってみる。
すると3つの人影があった。
一人は、王宮でよく見る警備担当の騎士の装いに近い。
抜剣して構えている。
その後ろには仮面を被った……少年?
身体つきはほっそりとしていて、少年とも少女ともつかない。だがあの髪色は……。
(……まさか…王子殿下なの…?)
更に後ろの方に目を凝らす。
何処で見た様な黒っぽい緑色が見える。
(どう見ても公子様よね…)
思わず反転180度しかけるが、流石に子供の方を見捨てるのは寝覚めが悪い。
近づいてくる複数の気配も感じるし、さくっと子供を盾にしている卑怯者から処するとしよう、そうしよう。
まずは…と、スカート部分を裂いて破り落とす。
冒険者稼業や手伝いで農作業他もしているせいで、普段からワンピースの下にブリーチやズボンを穿いている事が多い為、スカート部分を落としても何の問題もない。
まぁ元は姉のお下がり品なので、それなりに高級品である事だけが引っ掛かりはするが、状況が状況だ。躊躇っている暇はない。
気配を更に殺す。
そのまま静かに距離を詰め、今一度ラフィラス達の方にも視線を走らせた。
まだ構えているだけで、動く気配はない。
ぐっと身を屈めて地面を蹴る。
一気に飛び掛かり、覆面男が剣を持つ手を捻り上げた。
「ぐあ!!」
ガランと大きな音が鳴って、持っていた剣が落ちる。
覆面男が不意打ちによろめいている間に、子供を抱えた方の腕を外させた。
そのまま落ちた子供の手を引き、剣も拾って覆面男とラフィラス達との間に割って入った。
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