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【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします  作者:


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6



「だいたいわかってます?

 そういうのを際限なく受けてたら、領地の事は後回しになっちゃうんですよ?

 そんな茶番に時間を割いてる暇なんてないのです!」

「で、でも……」

「でもも案山子もありません!

 絶対に嫌です!

 嫌ったら嫌です!!」

「うぅ……」


 とうとうティルナスは、情けなく指先をつんつんと突き合わせて凹んでしまった。

 膠着した室内に、沈黙だけが落ちていく。

 それを小さなノックの音が破った。

 その音に、ティルナスがパッと顔を上げる。


「ど、どど、どうぞ!」


 重く圧し掛かる静寂から逃れられるとでも思ったのだろう。

 表情には明らかに安堵の色が広がっている。


 開かれた扉から入ってきたのは、先程泣き崩れたまま退室していった母エリミアだ。

 結構な音量で張り上げたエリルシアの声に、気が気でなくなったに違いない。


「エリィ…貴方が怒るのも当然だわ。

 親である私達が不甲斐無いばかりに……ごめんなさい。

 まだ小さなエリィにばかり苦労を掛けて……許して頂戴」


 悲し気な瞳を潤ませるエリミアに、今度はエリルシアの方が言葉に詰まる。

 貧乏籤なんて絶対に真っ平御免なのだが、母にそんな顔をさせたい訳ではない。


「本当なら私達が食い止めないといけない事…。

 それが叶わないなら、せめてエリィではなくティルが見合いをすべきなのだけど……あの子では到底……」


 エリミアは項垂れるようにして肩を落とした。

 そのエリミアを慰める様に、ティルナスが肩を抱き寄せる。


 娘の前で恥ずかしげもなくいちゃつく両親に、思わず溜息が零れそうになる。

 なるが……エリミアの言葉を反芻するように、エリルシアは一人思考の海に沈んだ。


(そう…ね。

 お姉様じゃ確かに、思った事を直ぐ言葉にしてしまうし、その場凌(ばしの)ぎで適当な事を言ってしまうだろうし……百戦錬磨の貴族達相手では、簡単に丸め込まれてしまうだろうし!……………あぁ、御祖母様じゃないけど、ほんっと頭が痛いわ…)


 最早逃げ場がない事はわかっている。

 だが、心底嫌なのだから仕方ない。せめて抵抗くらいはさせて欲しい。

 何より骨折り損の草臥れ儲けはしたくない。


 だったら交渉するしかないだろう。


「……はぁ、わかりました」


 がっくりと肩を落とし、嫌悪も露わな態度を隠しもしないエリルシアに、それでも両親はパァッと顔を輝かせた。


「ですが…」


 両親が揃って『うっ…』と(うめ)く。

 

「お父様お母様に無茶を押し付けた事を、公爵様達もわかっていらっしゃるんですよね?

 それだけでなく御自分達が逃げたと言う自覚も」

「…それは………まぁ…」

「………え、えぇ…多分……だけど…」


 エリルシアは冷ややかな視線のまま、座り直した。


「王陛下、王太子殿下御夫妻も……?」


 ティルナスが大きく頷く。


「王陛下は申し訳ないとおっしゃって下さったと聞いている。

 だからわかっていらっしゃると…思う……伝聞だし、自信はないけど…」


 『てへ♪』とばかりに引き攣った笑いを追加する父親を睨み付ければ、『ヒッ』と声を漏らして震え上がった。


「では条件を……。

 こんな王都くんだりまで出向かされたのです。

 何のメリットもないままと言うのは、流石に困ります。

 私が領を離れている間は、ポーラとゾラックが老体に鞭打って頑張ってくれているのです。

 直ぐに戻るとしても、何らかのお土産は欲しいです。

 ですので、王子殿下と会えと言うなら本気で嫌ですが、条件次第で妥協します」


 ゴクリと喉を鳴らす両親に、淡々と続ける。


「では…追加の支援が欲しいです……出来れば無利子で…」






ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。


リアル時間が少々慌ただしく、隙を見計らっての創作、投稿となる為、不定期且つ、まったりになる可能性があります。また、何の予告もなく更新が止まったりする事もあるかと思いますが、御暇潰しにでも読んで頂けましたら嬉しいです。


もし宜しければ、ブックマークや評価、リアクションに感想等々、とても励みになりますので、何卒宜しくお願い致します。

ブックマークや評価等々くださった皆様には、本当に本当に感謝です。


誤字脱字他諸々のミス、設定掌ぐる~等々が酷い作者で、本当に申し訳ございません。見つけ次第ちまちま修正したり、こそっと加筆したりしてますが、その辺りは生暖かく許してやって頂ければ幸いです<(_ _)>

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