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ソレイユだけが気づいていない~ステータス鑑定で遊んでいたらとんでもないことになりました~  作者: こる
第五章

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8.結婚パーティ

 婚姻届け自体は既に出してあるので、今日は知り合いを呼んでの披露宴パーティだ。



 家の前の丘の上、レドナステーブルの大樹の周りで行われる。

 大きく張り出した枝葉で雨も防いでくれるので、屋外イベントでは重宝される場所だ。


 正午前からはじまり、夕方前には終了する。畜産仲間が多いので、夕方の餌の時間に被らないようにする配慮は大事なのだ。


 隣近所から借り集めたテーブルに、所狭しと料理が並べられる。料理は取引先の飲食店にお願いし、お菓子はティリスが作った新作のものだ。


 町長をはじめ、町の名士、取引先の飲食店、ご近所さんに、馴染みの畜産農家は地元だけでなく北の牧場の人たちも、みんな一張羅を着てお祝いに駆けつけてくれて、木の下では収まりきらない程の人が集まった。


 そして、圧巻なのはアレクシスの冒険者仲間だ。


 レベル四の冒険者であるアレクシスと親しいとなると、必然的にレベルの高い冒険者が多くなるらしい。全員強そうだけど、アレクシスの人柄もあって悪そうな人は居ないから安心だ。




 パーティの幕開けは、ライゼスと相談して二人のお祝いとして呼んだ楽団の、華やかな音楽だ。


 音楽がはじまると、満を持して本日の主役二人が華やかなドレスに凜々しい正装姿でみんなの前に歩いてくる。


 アレクシスがこだわり抜いて仕立てたドレスは、長女の美しさを引き立てる濃い色合いの光沢のある生地を使ったロングドレスだ、小花のモチーフをふんだんに飾り、裾は刺繍で彩られている。長女の赤い髪をドレスと同じモチーフの白い小花で飾り、首元には長女の目と同じ青い石の付いたネックレスが掛かっている。


 贈り物は基本的に断る長女だが、アレクシスの懇願により何とか受け取ってもらったもののひとつだと言っていた。ダンジョンの宝箱から見つけたもので、所有者を守護するものらしい。


 アレクシスが今まで付き合ってきた女性たちは、果てしなく肉食の獣だったので、長女のように贈り物を拒否する人ははじめてだと言っていた。


 うんうん、覚えてるよ。

 はじめて会った女児に恋愛の愚痴を言うくらいには、貢がされた上に二股掛けられてやさぐれてたもんね。本当のいい女である長女に出逢ってしまえば、もう後戻りはできないよね。


 九歳差などなんのその。押して、押して、長女に見合う男になるために、アザリアの遺跡を攻略してその足でプロポーズするなんていう情熱を見せたアレクシスなら、長女を幸せにしてくれると思える。


 二人して笑顔で周りから祝福されている様子を見ると、嬉しくて感無量ですよ。

 あ、父は既に泣いてるや。

 笑いながら母に涙を拭かれているけれど、父も母も幸せそうだ。


「素晴らしい、結婚パーティだね。みんな笑顔だ」


 わたしも、ライゼスが用意してくれていた彼の髪と同じ色のドレスを着て、結い上げた髪を赤い玉の髪飾りで彩っている。ライゼスは落ち着いた品の良いスーツ姿で、襟元に濃い金色……オレンジ色の刺繍が入っている。うん、今日もかっこいい。


「本当だね、みんな笑顔だね」


 楽団の音楽に乗ってダンスを踊る人、お料理に目を細めている人、何が何だかわからないけれど抱っこされてキャッキャと笑う赤ちゃん、とにかくこの場に集まった全員が笑顔だった。


「ソレイユ姉さんとライゼス兄さんも踊ったら?」

 ティリスに促され、ライゼスがわたしの手を取って人の少ない場所を目指す。


「わたしの人生、こんなにダンスする機会があるとは思わなかったな」

「何事も、覚えていて損はないってことだね」

「練習に付き合ってくれたライゼスに感謝だね」

「僕にとっては役得だから、気にしないで」

 向き合って視線を交わし、楽団の軽やかな音楽に合わせてステップを踏む。


 スカートの裾が綺麗に広がり、人々の目を惹く。

 反重力の魔法を使わなくても、ちゃんと踊れるようになっていた自分に驚いた。


「ソレイユは元々運動神経が悪くないんだから、踊れないはずはなかったんだよ。きっと気持ちが付いてこなかったから、体がブレーキを掛けていたんだね」


 ライゼスに言われて、納得するところはあった。

「確かに、踊るのが楽しいと思うようになってから、上手くなったかも。ライゼスと踊ってると、楽しいと思えるようになったからかな」

「これからもたくさん踊ろうね。君のパートナーは僕だけだからね」

「……お父さんが、踊りたそうにチラチラこっちを見てるんだけど……」

 今日楽団を招くことを伝えておいたら、娘たちと一回くらいは踊りたいなぁと母に言っていたらしい。


 そのことをライゼスに言うと、グッと堪える顔をして、わたしをエスコートして父の所まで移動した。

 父は何度もライゼスにお礼を言って、わたしと手を取り合ってダンスをした。

 ライゼスのように息が合うことはないけれど、とても楽しくステップを踏んで「ソレイユも幸せになりなさいね」と涙ぐんだ父に言われた。


 父はその後、長女とも踊り、三女、末っ子と、全員と踊ることができて満足そうだった。もちろん、母とは一番長く踊ってたよ!


「お義父さんは、別枠だから、仕方ない」

 父とのダンスの後にライゼスの所へもどると、そう言われてしまった。

 苦渋の決断だったのかな?

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誤字脱字報告、大変、大変っ助かっております!
ありがとうございます!!

゜・*.✿*書籍化決定しました!*✿.*・゜
一迅社のアイリスNEO様より令和7年12月2日に発売となりました!

読んでくださる皆さまのおかげです!
ありがとうございます。°(°´ω`°)°。ウレシ泣キ
― 新着の感想 ―
ライゼスよ。義父相手にまで葛藤するなよw 良い披露宴ですね。 さすがに親しい関係者のみなので楽しい一時です。 さらっとアレクシスの黒歴史が垣間見えましたが、ソレイユは黙秘するでしょうから平和です。 …
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