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第82話 【本当の家族】

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 



 コンコン。


「……(きやぎ)は開いておる。入るがよい」


「おじゃましまーす。わわッ! なに、この部屋! めっちゃ広いんですけどぉ!」


「……妹御か。なんの用じゃ?」


「うん。はいこれ、ケーキだよ。すっごく美味しいから、イライアさんにも食べてもらいたくって」


「ケーキ? ああ、こず枝とセレスが作った菓子じゃな」


「そうそう、そんで、なんか知らないけど、いつの間にか女の勝負になっちゃってる感じなの。イライアさんにもどっちのケーキが美味しいかジャッジして欲しいな。今のところこず枝さんのイチゴケーキが優勢なんだよね。わたしもこず枝さんに一票いれちゃった。だってセレスさんのチョコケーキ、ちょっと苦いんだもん」


「そ、そうか。うむ、引き受けよう。ところで……あやつはどうしておる?」


「礼兄ぃは部屋にこもってるよ。当然おやつ抜き」


「……落ち込んでおったか?」


「うん、イライアさんに合わせる顔がないって凹んでた」


「……そうか」


「ま、自業自得かな。ねえ、イライアさん」


「なんじゃ?」


「イライアさんとロリちゃんって、ふたりとも礼兄ぃが好きなんだよね?」


「……そう、じゃな」


「あは! うちの兄をご贔屓くださり、ありがとうございます! 礼兄ぃもバカだよね。イライアさんみたいに綺麗な人がいるのに、フラフラしちゃってさ」


「む、それは否定できんな。確かにあやつはバカじゃ。じゃが……」


「じゃが、悪気はない ――だよね? そうなの。礼兄ぃってば、いつも誠意が空回りしちゃうって言うか、そもそも、誠意って意味をはき違えてるって言うか。今回の件も、絶対になにか空回っちゃったんだよ。間違いない!」


「言いたいことをすべて言われてしまったな。まったく、あやつときたら……」


「あんな、とんでもなくふつつかな兄ですが、どうか見捨てないであげてね。いたらないところは多いけど……もんの凄く多いけどね」


「安心するがよい。ワシから見捨てたりなどせんよ」


「あは! ありがとイライアさん。それともうひとつ、ここだけの話にしてほしいんだけど」


「ん?」


「わたし、実はロリちゃんと同じくらい、イライアさんを応援してるの」


「ワシを?」


「うん。だってイライアさんが礼兄ぃと結婚したら、わたし達は姉妹になるじゃない」


「結婚したら、か。そうじゃな。もしすれば、そうなるな」


「わたしにお姉さんと妹ができるんだよ。ロリちゃんとイライアさんが本当の家族になるの。それって最高じゃない!」


「……こず枝やシャリー、それにセレスはどうなるのじゃ?」


「あ、そっか! んーどうなるんだろ? あはは、よくわかんないや。でも、そんな先のこと考えてもしょうがないし、なるようになるんじゃないかな? 礼兄ぃがみんなに酷いコトするわけ無いし」


「そうか……なるようになる、か」 

 イライアは、なにかを考えるような表情で言うと 

「うん、そうじゃな。確かにそうじゃ」

 と、得心した顔になった。


「あはは、そうそう、なるようになる! ケーキ食べたら、こず枝さんとセレスさんに感想聞かせてあげてね! お邪魔しましたー!」


「おい、いもう……加代や」


「へ? なに?」


「その、すまぬ」


「ケーキのこと? あはは、それ最初に聞いたよ? じゃあね、おやすみなさい!」


 大萩加代が嵐のように去っていった。

 イライアは、テーブルに置かれたトレイに乗った皿を手に取った。

 少し大きめの皿には2種類のケーキが乗っていた。


 ひとつは〝いちご〟と呼ばれる、酸味のある赤い果物を載せたケーキ。

 ひとつは〝ちょこれーと〟と呼ばれる、黒く甘い菓子をベースに作ったケーキだ。

 備え付けのフォークを使い、それぞれを口に運ぶ。


「どちらもうまいな」


 その言葉に反して、イライアの表情には少し影が差しているように見える。

 そしてドアを見つめた。


「本当の家族、か」


 礼儀知らずで、でも憎めない元気な女の子。

 イライアは、その子がついさっき出て行ったドアをジッと見つめ続けた。

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