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第77話 【魔女の告白、賢者の煩悩】

★地の文は、ほぼほぼ礼二郎君のピンクな妄想です。

ストーリーを追うだけなら、会話文のみ読めばオールオッケー!

「なぜワシが存在できていると思う? 人知を超えた力を持ち、不死の身体を持つワシがじゃ」


 世の男性が妄想する理想のハイパーエロチックなOLを具現化した姿で、最恐かつ最強で最凶のこじらせ魔女は言った。


「女神(笑)は、力を持ちすぎた魔王や僕のことを『世界の腫瘍』だと抜かしやがりました。だから世界から排除されるなどとも供述しくさりました。でも僕以上の力を持つ師匠は、世界と共存しているように見えます。つまり、そのことについての話でしょうか?」


 個人資産20億以上、全身コーディネート総額1万円の男が、くだらない天罰が下らないギリギリをアグレッシブに攻めつつ言った。

(※女神の陰口を叩くと、天罰と称した防御力無視ダメージ&防御不可能な恐ろしくも腹が立つタライが頭を叩いてくる)

 話題が挙がったことで、礼二郎の頭に緑髪のインチキ女神が顕現した。

 かなり露出の高い服装で、イライアに負けず劣らずな胸の谷間がお目見えしている。

 

(あの御方も巨乳だよな……あれ?)

 

 不思議なことに、女神の谷間を想像しても、まったく興奮しなかった。

 そう言えば、今まで一度も興奮したことがない。

 なにゆえか? 

 ルックス、サイズ共に申し分ないはずなのだが。

 師匠のように恥じらいが感じられないからだろうか?

 

 そこまで考えて、礼二郎はふと我にかえった。

 激 し く ど う で も い い 。

 すぐに女神に対する興味を失うと、現実に意識を戻した。

 さて、時間を無駄にしてしまったな。

 引き続き、至高の谷間を存分に堪能するとしよう。


「あやつに聞いたのか。ならば話は早い。ワシが世界と共存しているわけではない。言うならば、世界から見逃してもらっておるのじゃよ」


「見逃して?」


 うひゃーッ! やっぱり師匠の谷間は最高だ!

 女神なんかどうでもいいや! 

 世界が見逃しても、僕は師匠(の谷間)を見逃さないぞ!


「そうじゃ。ワシは世界の(ことわり)から外れておる。『輪廻の輪』と言ってもいいのかもしれんな」


「もしかして、魔王討伐に手出ししなかったのも……」


 修行をつけてもらう前に(理由は伏せていたが)師匠が魔王に手出ししない旨の話は聞いていた。

 なので礼二郎は不満になど思っていない。

 とは言え、いざとなったら助けてくれるかな、と少し期待していたのも事実である。


 それはさておき、師匠の胸のサイズはどれほどなのだろうか?

 Eカップ? はたまたF? もしかしたらGカップはあるかも?

 じ、じーかっぷ!? ふぉぉぉっ! あり得るんでない!?

 師匠は世界の理から外れているそうですが、僕は理性のタガが外れそうです。

 

「……手出しできなかったのじゃ。そうじゃ。ワシは世界の行く末を左右する出来事に干渉できん。そう言うルールでワシは存在しているのじゃ。我が友、龍神アルシェと同じようにな」


「だから師匠は、魔術印を討伐後に……」


 手出しできない……。

 くっ! まさに今の僕と同じではないか。

 礼二郎は異次元の思考回路で、アクロバティックにイライアとシンパシーを感じた。


「魔王と戦う前にワシの加護を与えたかった。ワシもお主と共に戦いたかった。なのにワシは手助けすらできなんだ。許せ……許せ、我が弟子よ……」


 礼二郎の左手を両の手でギュッと握りしめた。

 赤縁メガネの奥からポロポロと雫がこぼれ落ち、絶対領域を濡らしていく。

 エッロォォッ! これエッロォォッ!


 尊敬する師匠が真面目に話しているのに、しかも自分の為に涙を流してくれているというのに、よくもこれだけ煩悩を垂れ流せるものだと、我ながら呆れてしまう。

 だがちょっと待って欲しい。

 僕は師匠の話を真面目に聞いていないわけではない。(二重否定)

 その証拠に、師匠との会話はキチンと成立している。

 

 僕は、少しだけ真面目に話を聞きつつ、エロい目で……。

 違う、逆だ。

 少しだけエロい目で見つつも、真面目に話を聞いているのだ。


 いわば情報の並列処理である。

 エロス方面には2割、それ以外のリソースは、すべて真面目な思考に割り当てている。

 さっきから、ここで垂れ流れているのは、その2割のエロスな情報だ。


 エロスの声が目立つのは、いわゆるノイジー・マイノリティ、声の大きな少数派だからだ。

 残り8割はキチンと、真面目に、そして静かに師匠のことを考えているので安心して欲しい。

 ただその声が小さいだけなのだ。

 

 それでも谷間だの、絶対領域だのと不謹慎ではないか、だって?

 では逆に聞こう。

 雑念のない人間がいるのかと。

 そう、いるはずがない。

 わざわざ雑念を声にしていないだけだ。

 記述していないだけなのだ。

 

 女神はどうなのかって?

 そもそも奴は人ではないので、反論する必要を感じないが、一応言っておこう。

 その女神とは、〝占い師の格好でピザを食べて〟、〝料金を僕に支払わせた〟、あの雑念女神のことかな?

 フ、笑止!


 話を戻そう。

 10年だ。

 10年間、僕はこの超セクシーな女性と、寝食を共にしてきたのだ。

 異世界にいる間は、欲望にリミッターがかかっていたので、特に問題はなかった。

 だが、ほんの一週間前、僕は本来の欲望を取り戻し、なおかつ16才の肉体に戻った。

 今の僕は16才男子高校生だ。

 もう一度言う。

 16才の男子高校生なのだ。

 

 チャンスと方法があれば、16才男子の頭の中を覘いてみるといい。

 8割、いや、9割がエロいことで占められているはずだ。

 

 さらに、もう一度言おう。

 

 その16才の男子高校生に僕は戻ったのだ。

 この状況で冷静な対応ができているだけでも、すごいことだと僕は思う。

 さらに……さらにだ!

 それに加え、僕は超人的な肉体を持つ、超健康優良児なのだ。

 当然、生殖機能も強化されているだろう。

  

 そんな僕の前に、煩悩的な意味で理想の女性が腰を下ろしている。

 エロ本から飛び出した様な格好でだ。

 比喩ではない。

 実際に、エロ本を参照にして作った服を着ているのだ。


 そんな女性を前にして、エロいことを考えるなだって?

 無理に決まってるだろう! ちくしょーめ!

 

 ちなみに、異世界で10年の間に起こったセクシーイベントの記憶は残っている。

 詳細には省くが、師匠と風呂に入ったことだってある。

 そんなたまらない想い出が、ふとしたきっかけで脳裏に浮かんでくるのだ。

 きっかけ? たとえば、相手女性の匂いを嗅いだり、肌が見えたり、声を聞いたり、エトセトラ。つまり……


 今 の 状 況 だ よ !


 今現在、師匠との間に起こったエロスなイベントの想い出が、妹が悪戯で渡してきたラムネの栓を開けたときのように噴き出している。

 


 重ねて言おう。

 エロいことを考えないなんて無理だよ、こんチクショー!

 

 と、礼二郎は脳内で、誰ともなしに弁明を繰り広げたのであった。(この間数秒)

 ちなみにエロスと真面目のリソース割合は、もしかしたら逆かも知れない。あしからず。


「いえ、師匠は十分僕を助けてくださいました。龍神様のダンジョンを攻略できたのも、魔王を倒せたのも師匠が修行してくれたおかげです。でも、それは間接的ながら世界に干渉したとみなされるのでは……」


 しかし、どうしてだろうか。

 礼二郎(真面目担当)はイライアに対し、少し違和感を感じた。

 経過はどうあれ、無事魔王を倒せたというのに、なぜこんなに泣くのだろう?

 

 それに師匠を許すもなにもない。師匠には世話になり通しだ。

 感謝こそすれ、不満に思うことなどあろうものか。

 今この瞬間も、目の保養をさせていただいている。

 ありがたやありがたや。

 むしろ真面目な話の最中にもかかわらず、師匠のオッパイに釘付けな僕を許してください。


 礼二郎(エロス担当)は神妙な顔でそう思いつつ、ふとイライアの足を見た。

 ガーターからスカートの中に伸びる黒いライン。

 線路の先には駅があるように、ガーターから伸びるラインの先には、当然のごとく、ガーターベルトが御鎮座ましましておられるのだろう。

 

 そう、ガーターベルトだ。

 装備するとエロスが倍になるという禁断の装備『ガーターベルト』

 けしからん雑誌ではよくお目見えするものの、実際に目にした男子高校生は皆無と噂の『ガーターベルト』

 

 断定しよう。それが今、目の前の細いウェストに巻かれているのだ。

 礼二郎(エロス担当)は白い肌に黒い下着、そして黒いガーターベルト姿のイライアを想像した。

 うひょーッ! た、たまらん! ん! い、いかん! 鼻血がぁ!

 礼二郎はすかさず無詠唱治癒魔法を使った。《ヒール》! かろうじて流血は免れる。

 実に危ないところであった。


「ん? 今、魔法を使ったか? まあよい。ワシは鍛える方法を教えたに過ぎん。その後、魔王になろうと、魔王を倒そうと、ワシが世界に干渉したことにはならん。お主が得た力は、ワシが与えたものではない。厳しい修行という代償を払って、自分で勝ち得たものじゃ」


「そう言うものですか。しかし、その話が今の状況と……」


 いかんいかん! 

 師匠に今の魔法について突っ込まれたら、言い訳のしようがなかった。

 もっと注意をして 覗 か ね ば。

 

 だが、礼二郎(エロス担当)は気になっていた。

 ガーターベルトにガーターストッキングを装着したままで、どうやってパンティーを脱がせるのだろうか、と。

 それにしても……はぁ、師匠の手は、温かくて柔らかいなりぃ!


「今までの話は前置きじゃ。ワシはお主を好いておる。じゃがワシには、お主に選ばれる資格がないのじゃ。これから話すのは、そういう話じゃよ」


 イライアが顔を上げ、礼二郎(エロス担当)は慌てて谷間から視線を外した。

 

「資格なんて、そんな……」


 そう言い淀んだ礼二郎の目を、イライアがジッと見つめる。

 マズい。

 もしや谷間を見ていたのがバレたのか。

 はたまた、会話とまったく関係の無い、エロスにまみれた思考を読まれたのだろうか?

 礼二郎(エロス担当)は、怒られる前に謝るべきかどうか悩んだ。

 

 それに、イライアは、また礼二郎のことを好きだと言ってくれた。

 イライアの気持ちを聞くたびに、礼二郎(真面目担当)はうれしく思いながらも、自分にその資格があるのかと悩んでしまう。

 

「聞いてくれ。世界の理、そして輪廻の輪から外れると言うことは、つまり……」


 そこまで言うとイライアは片手だけ離して下を向いた。

 どうやら、礼二郎の邪念は気付かれていないようだ。

 ホッと胸をなで下ろす。

 

 沈黙が再び訪れ、谷間チャンスも再び到来した。

 あのイライアがここまで深刻になるとは、余程のことであろう。

 礼二郎は、魅惑の谷間を凝視しつつ、静かに待った。

 いつまででも、どこまでも待つ所存である。

 

 やがてイライアは、真っ白な絶対領域の上に置かれた拳と礼二郎に繋がれた手を、ギュッと握った。

 そして、顔を上げ、セクシーな赤縁メガネの奥から、キッと礼二郎を見つめ、言った。

 言わずもがな、礼二郎は谷間から、サッと目をそらした。


「ワシは……お主の子を産めぬのじゃ」


「へ?」


 礼二郎(エロス担当)と礼二郎(真面目担当)は、間の抜けた声を同時に上げた。

 煩悩と理性。この日初めての共同作業であった。

※後書き


★第57話 【チェリーの下心】でホムンクルスメイド、ベータの下着姿を見た際、残念ながらガーターベルトは装着していなかった。


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