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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
5章 プル・ソルシエール
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クラインの眼

 人影を感じ取ったハルトたちはループスをその場に置いて雑踏の中に身を隠した。ループスは咄嗟に剣をハルトに投げ渡し、武器を持たずに敵意を見せない姿勢で応じる構えを取る。


 「探しました……狼のお姉さん……えっと、名前は……」

 「ループス。ループス・ノワールロアです」


 影の正体はクライン本人であった。手駒を嗾けて間接的な接触をすると踏んでいたハルトたちは意表を突かれるもそのまま観察を続ける。


 「またお会いできてうれしいです。探しましたよ」

 「はぁ、俺……じゃなかった。私をですか」

 

 ループスは低い物腰でクラインとの会話に臨んだ。今の彼女は剣を持たない丸腰で口調も穏やかに装っている。外見以外は普通の女性であった。

 そんな彼女の様子にクラインの警戒心も薄いようであった。


 「ええ。ぜひこちらからまたお話を伺いたいと思いまして」


 クラインはそう言うと覗き込むようにループスと目を合わせた。その刹那、ループスは突如として糸の切れた人形のように首を下げ、だらりと腕を伸ばした。

 それを見たアウトローたちはループスに異変が起きたことを一目で理解し狼狽するがハルトは冷静に観察を続けた。


 「ここでは話しづらいでしょう。場所を変えましょう」

 「えぇ……喜んで」


 クラインの提案にループスは二つ返事でそれを了承した。これまでの彼女とはまるでちがう物静かな振る舞いを見たハルトはある事象を確信した。

 

 「お嬢!行ってしまいますよ!」

 「わかってる。しっかし厄介なもの持ってるな……」


 気持ちを逸らせ追いかけようとする護衛たちを宥めながらハルトはクラインの持つ能力に対する警戒心を強めた。


 「姐さんはいったいどうしちゃったんですか……?」

 「たぶんテンプテーションを受けたんだろう。今のループスに自我はない」


 ループスはクラインによって『テンプテーション』を受けたのだろうとハルトは推察していた。それは対象の自我を奪い、使用者の意のままに動かせるというものである。これまでのクラインの悪行が被害者に拒否されず、なかなか明るみにならなかったのも恐らくこの能力が原因であった。


 「二人はあいつらを追え。残り三人はテンプテーションの対策の準備に協力してくれ」


 ハルトはすぐに護衛のアウトロー二人を追跡に向かわせ、自身はクラインのテンプテーションへの対策を講じた。

 二手に分かれたところでハルトはその策を残った護衛に伝えた。


 「見たところクラインのテンプテーションは目と目を合わせることで発動する。だから目を合わせなければ操られることはない」

 「なるほど。操られた姐さんは元に戻せるんですか?」

 「わからん。戻す方法があるとすればクラインに直接解除させるのがもっとも確実だろう」


 アウトローたちはループスを元に戻す方法を懸念するもハルトは答えあぐねた。テンプテーションに関する知識を持ってはいたものの、その解除方法までは知り得なかったのである。


 「いいか。現場を押さえ次第突撃する。ループスは俺がなんとかするからお前たちはクラインの視界を布なりなんなりで塞いでテンプテーションを封じるんだ」


 ハルトは作戦内容を大まかに伝えると先に追跡に向かわせていたアウトローたちの後追いをする形で現場へと向かっていった。

 

 「お嬢、ここに姐さんたちがいます」

 「中はどうなってる」


 先に追跡していたアウトローたちに合流したハルトは建物の壁に片耳を押し当て、中の様子を探った。壁を伝い、物音がハルトの耳へと届く。どうやら今は中にループスとクライン以外の人物はいないようであった。

 ハルトはさらに集中して物音を探った。


 「君は私のことを誘拐事件の犯人だと疑っていたみたいだが、どうなんだね」

 「実のところは疑って……」

 「疑って?」

 「……ないです」


 どうやらループスはクラインから誘導尋問を受けてるようであった。自我を奪われているのだからクラインの望む答えを出すのも当然である。

 ハルトは次の展開に警戒を強めた。ハンドサインを送りってアウトローたちを建物の入り口前に待機させ、銃に弾を込めて戦闘態勢を整える。


 「君、なかなかいい身体をしているねぇ……これまで男と付き合ったことは?」

 「……ない」


 ハルトはクラインがループスにセクハラを働く声を確認した。


 「じゃあそういう営みをしたこともないってことだね」

 

 すでにクラインはループスに肉体関係を迫るまで秒読み状態であった。ループスを囮にしたとはいえ、そういったことからは何としてでも防がなければならなかった。

 ハルトはアウトロー五人にハンドサインで突入を命じた。



 「そこまでだクライン・ソーマ!」


 威勢のよい啖呵を切りながらハルトたちは乗り込んだのであった。

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