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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
5章 プル・ソルシエール
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街角のアウトロー

 聞き込みを切り上げたループスは自分の周囲の守りを固めることを考えた。仮にクラインが事件の首謀者だとすれば、それを嗅ぎつけてきた自分たちに攻撃を加えてくる可能性は十分にある。万一に備えて自己防衛以外の手段を持つ必要があった。


 表の人間たちはクラインの権威に竦んで腰を上げてくれそうにない。そこでループスはちょうど昨日出会ったアウトローたちのことを思い出した。表に出てこない彼らなら金さえ積めば要求に応じてくれるだろうと考えたループスは再び接触を試みることにした。

 彼らと出会った場所に行けば再び会えるだろうとループスは少し寂れた路地裏へと足を運んだ。


 アウトローたちと出会ったそこでループスが邂逅したのは思いもよらない人物であった。


 「あーっ!」

 「お前たちこんなところで何やってるんだ!?」


 ループスが出会ったのはかつて彼女の前で二度に渡って悪行を働こうとした男たち三人組であった。互いに顔を見知った関係であり、互いに驚きで声を上げずにはいられなかった。


 「まさかまた人さらいを?」

 「違う!俺たちはもうそんなことからは足を洗った!」


 剣を抜こうとしたループスを制止するように男たちは己の潔白を主張した。中でも脇腹を焼かれた経験のある男は脳裏に当時の恐怖が克明に蘇ったのか必死さが際立っていた。

 だがループスは足を洗った人間がこんな路地裏にいることについて懐疑的であった。


 「足を洗った人間がこんなところにいるものか?」

 「しょうがないだろう。俺たちには学がなければ能もないんだから……」


 男たちは自嘲めいた言い回しでアウトローになったことを自白した。足を洗っても犯した罪が消えることはなく、表社会に戻れるわけではない。彼らはその身をもってそれを証明していた。


 「それはそうと、お前たちにこの前の一件について聞きたいことがある」

 「聞きたいこと?」

 「ああ、お前たちは誰かに依頼されてあれを実行したのか」


 ループスに問われた男たちは顔を見合わせた。どうやら知ってはいるが何か事情があって言えないようである。


 「もし知っていて黙っているようなら無理やりにでも」


 ループスは脅迫するように剣を抜いてその刃をほんのわずかに光らせた。彼女にはあまり悠長に付き合っていられる余裕はなく、早々に答えを求めていた。


 「わかった!話すからその剣を納めろ!」

 

 真のアウトローじみた強引な立ち回りを見せるループスに屈し、男たちは白状することにした。言質を引き出したループスは刃を光らせるのをやめて鞘に納めた。


 「俺たちはクラインという男に雇われて女を攫ったんだ」

 「コイツの言う通りだ。金は出す、だから若くてそこそこ顔のいい女を連れてこいって」


 ループスの予想は的中していた。彼らは金で雇われて誘拐を実行していたのだ。そしてその首謀者は睨んだ通りクラインであった。事情を知ったループスは顔も知らないクラインへの不快感を募らせる。

 

 「お前たちの今のボスに合わせてくれ。いるんだろう?」


 ループスは男たちにボスに会わせることを要求した。彼女はアウトローは基本的に数名程度の小規模な組織で活動していることを知っている。よってアウトローになりたての男たちの上にボスがいることは簡単に確信できた。

 男たちは彼らのボスと引き合わせるためにループスを路地裏の奥へと案内していった。

  

 「ボス。ボスに会いたいという女を連れてきました」


 男たちはボスと呼ぶ人物のところへとループスを連れてくると片膝をついて頭を垂れた。どうやら彼らはこの組織の中でも最底辺の下っ端のようである。

 ループスの方へと歩みを寄せたアウトローのボスは先日のそれと同一人物であった。


 「昨日の狼の姐さんじゃねえか。今日は狐の嬢ちゃんはいないのか」

 「今日は俺一人だ。今回はお前たちに頼みたいことがあってここに来た」


 ループスとボスは互いに見知った関係だったこともあってラフにやり取りを交わした。そんな二人の関係を知らない男たち三人組は絶句しながらその様子を眺めた。


 「話を聞こうか」

 「俺たちの護衛を一日頼みたい。報酬は先払いで五千マナでどうだ」


 ループスは依頼内容と報酬を単刀直入に提示した。金さえ積めば依頼人を問わずそれに応えるアウトローたちはループスにとってある意味ではもっとも扱いやすい人種であった。

 ボスは少しの間言葉を止め、採算がとれるかどうかを考えた。


 「いいだろう。こっちからそこの下っ端三人と他二人、計五人をそっちの護衛につけてやる」


 ボスは報酬金と帳尻の合うプランをループスへと提示した。ループスは内容に不足はないと判断し、利害の一致した両者の間に一つの契約が成立した。


 「もし裏切るようなことがあればお前を斬る」

 「心配するな。俺たちは依頼人を裏切るような真似はしない」


 ループスは報酬金を前払いしながらボスに釘を刺した。裏切りはすなわち契約の不履行であり、彼女の剣による粛清の対象となることを意味していた。

 そんな彼女に対してボスは契約者としての忠義を見せたが、護衛役に抜擢された下っ端たちは気が気ではなかった。


 「また明日の昼前にここに来る。護衛はその時に貸してくれ」

 

 ループスは話を終えると踵を返して路地裏から再び表通りへと戻っていった。そんな彼女の背後を襲おうとするものは誰もいなかった。そんなことをしようものなら即座に返り討ちに会うのが明白だったからである。


  

 この日、ループスはアウトローの一角を従える『女王』となっていたのであった。

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