魔法学校の中へ
アウトローたちから得た情報を頼りにハルトとループスは鉱山のすぐ近く、時計塔の見える場所までやって来た。
「ここって魔法学校だったんだな」
「俺たちが通っていた場所とは風情が違うな」
ハルトたちは初めて見る他所の魔法学校の外観に興味津々だった。彼女たちが在籍していた魔法学校は他校との交流が希薄だったため、他校の存在すら知らないというような生徒も多々あった。ハルトもその内の一人であった。
「ちょっと視察していこうぜ」
ハルトは興味本位で魔法学校の敷地に足を踏み入れようと試みた。するとあっという間に警備の人たちからの包囲を受けたのであった。
あまりにも軽率な行為にループスは思わず頭を抱えた。
「なんだね君は」
「この学校を見学したいんだが……どうすればいい?」
「ああ、入学希望者かな」
「違う!」
警備員はハルトのことを入学希望者だと勘違いしていた。彼女の容姿からすればそう見られても仕方はなかった。見かねたループスは間に割って入ることにした。
「連れが変なことして申し訳ない。この学校では部外者の見学は可能か?」
「ええ、それでしたら裏の窓口で申請してくだされば自由に見学することができますよ」
ループスが割り込んで事情を説明すると警備員たちは丁寧な案内対応を見せた。ハルトは自分とループスとの対応の差に言葉では表現できない感情を抱いた。
「ところで……」
「なんだ?」
「その耳と尻尾は飾りでつけていて?」
「飾りじゃなくて本物だ。ほら」
ループスは耳を動かし、髪をかきわけてそこに人間の耳が存在しないことを警備員たちに見せつけた。それが本物であることを理解した警備員たちが驚いて言葉をなくすのを尻目にハルトとループスはさらに校内へと歩みを進めた。
「窓口とかいうのが裏にあるらしいぞ」
「んじゃまずはそこに行くか」
ハルトたちは警備員たちの言っていた『窓口』を探した。学生時代に見たことがあったため、学校に部外者が立ち入りするためには一度窓口を経由することは彼女たちも知っていた。そういったシステムはこちらにも存在するようであった。
裏手に回ったハルトたちは来客用の玄関を発見した。ここから入ればよいのだろう。そう信じて二人は玄関をくぐった。
「こんにちは。ご用件をお伺いします」
窓口には穏やかな雰囲気を漂わせる老爺がいた。老爺はハルトたちが入ってくるのを確認するなり察して声をかけた。
「校内の風景を見学したい」
窓口を挟んでループスは老爺に要件を伝えた。窓口がやや高いせいでハルトは近くに立つと様子をよく見ることができなかった。
「かしこまりました。では許可証を出しますのでこちらにお名前を」
老爺は許可証の発行のために書類に署名を求めた。思わぬ場所から名前を尋ねられてループスは手を止めてしまった。
「貸せ。俺が先に書く」
ハルトは窓口にしがみついてよじ登るとペンを走らせた。彼女が署名を終えた後もループスはまだ迷っているようであった。そんな様子を見たハルトは痺れを切らしてループスの名前も記入することにした。
「俺が代理で書いとくからな」
「あぁ、すまない」
『ハルト・ルナールブラン』『ループス・ノワールロア』
二人の名前が署名された書類を受け取った老爺は二人に見学の許可証を渡した。
「校内にいる間はその許可証を首に提げておいてください。あとは授業風景の見学は自由ですが授業中の生徒や先生たちとの接触は避けてくださいね」
老爺はハルトたちに見学のルールを説明した。特にこれといって変な内容もないルールを二人はすんなりと聞き入れた。
「そういえば俺の名前……」
「いいだろ別に。この後どういう名前使おうがお前の自由だ」
ループスが許可証発行の時に使用した名前について尋ねると、ハルトは雑な反応を返した。
見学許可証を首に提げ、二人は学校の廊下を渡ってより奥へと進んでいくのであった。




