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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
4章 崇拝競争
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村の危機とは?

 村人の女性に連れられ、ハルトは村長と顔を合わせることとなった。


 「おぉ……その耳と尻尾は間違いなくお狐様の化身……」


 村長と呼ばれる老年の男はハルトを見るなり他の村人と同じように彼女に向かって手を合わせた。


 「いや、俺はただ通りすがった旅人で……」

 「ご謙遜なさらず。どうか我らの話を聞いてはくださらぬか」


 『くださらぬか』も何も最初からそれが目的でここに連れて来られたのである。ハルトとしては早急に話の内容を聞きたくて仕方がなかった。


 「あー、何か困ってるんだって?」

 「その通り。実はこの頃若者たちが次々と隣村へと移り住んでしまっていましてな。このままでは村には年寄りだけが残されて滅んでしまうのです」


 村長曰くこの村は若者がいなくなっていくことに悩んでいるようであった。確かに存亡にかかわる重要な問題だがそれは自分がどうにかできるようなことではないとすぐにハルトは察しがついた。


 「あのー……俺のことを神様の化身か何かだと思ってるみたいだけどさ、俺はただの通りすがりの旅人だぜ?そんな俺に何をしろって言うんだよ」

 

 ハルトは率直な意見を忌憚なく村長にぶつけた。彼女は断じて神の化身や使いなどではない。あくまで狐の耳と尻尾が付いている人間である。村の人々に期待されているようなことはできなかった。


 「またまたそんなご冗談を」

  

 なぜか村長はハルトの主張を受け入れられないようであった。偶然とはいえ、村に現れた信仰対象の化身ともいえるような容姿の少女がただの旅人だと思いたくなかったのである。

 たとえ本人に否定されたとしてもそこを曲げることはできなかった。

 

 「そもそも村から若い人が離れるっていうのは何か理由があるからなんだろ?」


 ハルトはもっともな事象を指摘した。村から人が離れるのには理由があるはずである。魔法は使えるとはいえ、超常的な力での解決などできない彼女にはまずそれを知る必要があった。


 「実はこの頃、隣村には猫のような姿をした娘が現れましてな」

 「猫?」

 「ええ。我らが村はお狐様を信仰しておりますが隣村では猫を信仰しておりまして」


 村長の語りによってハルトは事のあらましをだいたい理解した。どうやら隣村の娘に誘われてこの村の若者たちは離れてしまっているようであった。


 「ははぁ。それで村から人が離れていると」

 「その通りでございます。村に人を呼び戻す知恵はございませぬか?」

 「いきなりそんなこと言われてもなぁ……」


 ハルトは困ってしまった。彼女が推測するに村から人が離れる原因は『村に残るメリットがない』『隣村の娘に勝るような魅力がない』などという元も子もないようなものであった。


 「なんというかさ、その……作ればいいんじゃないの?その隣村の娘に負けないようなものをさ」


 その提案を聞いた瞬間、その場にいた村人たちは皆一斉にハルトへと視線を向けた。

 何か気まずいことを言ってしまっただろうかとハルトが内心焦っていると、村長が提案を切り出した。


 「お狐様はなかなかめんこい姿をしておられますな」

 「……は?」


 ハルトは村長の言葉に首を傾げた。その村独特の言い回しがどういう意味なのかはよくわからないが猛烈に嫌な予感がしている。


 「皆様どうですかな?お狐様にこの村の看板娘になってもらうというのは」

 「素晴らしい!これなら村にも人が戻ってきますな!」

  

 嫌な予感が現実になろうとしていた。村長はハルトのことを村の看板娘にしようと画策したのだ。それに対して村人たちも当事者であるハルトを蚊帳の外にして手放しで同調している。

 

 「おい待てよ!俺はまだやるなんて一言も」

 「やってくださらないのですか?」


 ハルトが話に割り込んで拒否しようとすると村長を始めとした村人たちは悲し気な表情を浮かべた。いきなり巻き込まれたのは自分のはずなのにハルトはなぜか謎の罪悪感を覚えてしまう。


 「もちろん無償でとは言いません。ここにいる間の衣食住のすべてを保障しますぞ」


 村人たちもハルトを引き留めようと食い下がる。『衣食住のすべてを保障』という言葉はハルトにとっては至上の甘言にも等しかった。たったそれだけのことがハルトを大いに悩ませた。


 「う、うぅ……」


 ハルトは悩むあまりに頭を抱えて耳を伏せた。そんな彼女の様子を村人たちは固唾をのんで見守る。どちらにとっても今後のかかった決断であった。


 「お狐様。ここは引き受けてはくださりませぬか」

 「どうか!この通りです!」


 村人たちはハルトの前に並び立つと地に膝をつき、頭を垂れて懇願した。ここまでされてはハルトもいよいよ断れなくなってしまった。


 「わ、わかったよ。アンタらがそこまで必死になって頼むっていうなら……」


 ハルトはついに折れた。口では建前でそういうものの、本心では衣食住の誘惑に負けていた。


 

 この日から始まる一連の出来事が、ハルトの中の何かを壊していくことになるのを彼女はまだ知る由もないのであった……

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