最高のパートナー
ループスがフィリアの元に復帰した翌日、彼女はハルトを連れて喫茶店へと訪れていた。ハルトはループスにいきなり連れ出されてよくわからないまま喫茶店に足を踏み入れる。
「いらっしゃーい。ハルトちゃん久しぶりー!」
フィリアはハルトの顔を見るなり嬉しそうに近寄り、抱擁を交わした。その様子を他の常連客たちは微笑ましく見守る。
「お、おばさん……息が苦しい……」
ハルトは顔にフィリアの豊満な胸を押し付けられて窒息しかけていた。フィリアの腕の中でバタバタともがき、尻尾が上下に激しく揺れる。時たまループスの胸を押し付けられることがあったものの、フィリアのはループスのそれをさらに上回っていたのである。
喫茶店の来客の男たちはそんなハルトを息を飲みながら羨ましそうに眺め、その視線に気づいたループスは軽蔑せずにはいられなかった。
「あーごめんね。ハルトちゃんに会えたのがうれしくてつい」
フィリアはハルトを解放すると慌てて謝罪した。彼女はどうも自分のスタイルに関する自覚が薄いかもしくはないようであった。
「で、なんで俺は呼ばれたんだ?」
「そうだった。おばさんハルトちゃんを応援してあげたくて」
フィリアがハルトを呼んだ理由、それは入学試験を直前に控えたハルトに応援の言葉を送るためであった。
「おばさんは魔法使いじゃないからエリアル魔法学院のことは詳しくないけど、でもハルトちゃんが頑張るならおばさんも応援するからね」
フィリアが激励の言葉を送ると、喫茶店の来客たちはこぞってハルトの元へとやって来た。
「エリアルを受験するのかい?」
「小さいのにすごい魔法使いなんだねぇ。おじさんも応援するよ」
フィリアに続いて常連客たちもこぞってハルトを応援する。彼らは皆魔法使いではないものの、エリアル魔法学院が名門校であることは知っている。自分たちにでは到底及ぶことができない領域、そこに挑戦するハルトを応援せずにはいられなかった。
「えへへっ。応援されるとやる気出てくるなぁ。みんなありがとう!」
ハルトは素直に喜びと感謝を伝えた。彼女は周囲から褒められたり煽てられるとより一層力を発揮するタイプである。以前のループスとのやり取りの中でハルトの性格にそういった面があると予想をつけたフィリアはそれでハルトをより意気込ませようとしていたのである。そしてその目論見は見事に的中した。
ハルトの尻尾が喜びを表現するようにパタパタと音を立てて揺れているのが何よりの証拠であった。
その日の午前中、ハルトはフィリア、ループス、代わる代わる訪れる喫茶店の常連客たちから次々と激励を受けた。これまでにない多くの人々が理解者となり、後ろに着いてくれているという事実にハルトはすっかり気分を良くしていた。
「ありがとう。俺、明日は今までで一番いい成績出してくるぞ」
ハルトはニコニコしながらフィリアたちに意気込みを語った。ここまでに彼女はものすごい追い込みをかけており、準備は万端であった。
「ループス……お前がおばさんに俺のこと話したから、きっとみんなこうしてくれたんだよな」
帰り際、ハルトはループスに確認するように尋ねた。ループスはそれに対して黙って首を縦に振る。
「ありがとな、ループス。お前は俺にとって最高のパートナーだ」
ハルトはループスに最上級の賛辞の言葉を送った。これまでハルトがループスに対して決して口にしてこなかった言葉、それがパートナーとして彼女を認める内容のものであった。
「また今度ここに来るときは、絶対みんなにいい知らせを届けるからな」
ハルトはフィリアたちにそう言い残して喫茶店を後にした。ハルトからの最上級の褒め言葉を受け取ったループスはこれまで彼女と歩んできた日々を思い出し、歓喜のあまりに肩を震わせ涙を流したのであった。
あと五話でこの作品は完結となります。
ハルトたちがそれぞれどんな道を行くのか、最後までお楽しみください。




