日常に戻っていく
一連の騒動が一応の終息を迎えたことでハルトたちはそれぞれの日常へと戻りつつあった。先の一件の結果でエリアル魔法学院への特別推薦を受けることができたアリアは学生寮への移動に向けて着々と支度を進めていた。
「ハルトさん、今日は一緒に制服を買いに行きましょう」
アリアはハルトを連れて制服の仕立てにエリアル魔法学院を訪れていた。
「どうですか?似合ってますか?」
校内に備え付けられた仕立て屋で自分の制服を拵えてもらったアリアは浮かれ気味に上機嫌になっていた。これからこの制服に袖を通してここに通えるようになるのがまるで夢のようであった。
「よく似合ってるぞ」
「本当ですか!?ハルトさんも一緒に……」
「いいよ別に。俺はまだ入学が決まったわけじゃないからな」
ハルトが自分の制服を拵えるのを遠慮しようとするとアリアは寂しそうな表情を見せた。
「ダメ……ですか?」
「あー、もうわかったわかった!」
アリアの表情を見て断り切れなくなったハルトは自分の制服も仕立ててもらうことにした。数十分後、ハルトのために仕立てられた新しい制服に彼女は袖を通した。
「ほら、これでいいか?」
「はい。とても可愛いらしいですよ」
仕方なく制服姿を見せたハルトに対してアリアは称賛の言葉を送った。ハルトがエリアルの制服を着るのは彼女がかつてこの姿になったときに一度だけ袖を通して以来であった。
制服を用意したアリアは帰り道でハルトに声をかけた。
「ハルトさん。私、ハルトさんに拾ってもらえてよかったです」
アリアはハルトやループスとの出会いに感謝していた。もし森に捨てられていた自分がハルトたちに発見されなかったら今頃こんなことにはなっていなかったのは確実である。それどころか今頃もう生きていない可能性の方が高かった。
アリアにとって命の恩人であり、彼女の人生を変えた運命の人物、それがハルトとループスであった。彼女たちのおかげで失っていた記憶を取り戻すことができ、引っ込み思案だった性格も改善され、自ら何かに立ち向かう勇気まで身に着けることができた。アリアにとってはすべてにおいて良い影響をもたらしていたのである。
「そうか?そりゃあどうも」
ハルトはよくわかっていないような表情を浮かべながらそっけなく返事した。ハルトにとっては何かを察知するとそこに首を突っ込みに行くのが当たり前であり、人情で誰かを助けるのも当たり前のことである。アリアを助けたのも例外ではなく、ただ自分の能力を活用して助けた相手がたまたま彼女であったというだけのことであった。
「帰ったら入学に向けて予習だ。ちゃんと基礎能力を磨いておかないとな」
ハルトは毎日欠かさずアリアに勉強を教え続けていた。入学までに他の生徒たちと少しでも足並みを揃えられるようにするためである。
「いいかアリア、これまでは入学のために勉強をしていたがこれからは成績のために勉強を続けるんだぞ」
「はい!」
アリアはハルトの言葉を前向きに受け取り、勉学に励むのであった。




