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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
最終章 これまで見てきたもの
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ループスの初仕事

 「俺はこれから学院に住み込む形になる。暇なときにまた様子を見に来るよ」

 「おう、次は学院で会おうな」


 翌日の朝、カーラはハルトたちと一端の別れを告げるとエリアル魔法学院へと足を進めていった。ハルトは去り行くカーラに次は旅の仲間ではなく、生徒と教師としてエリアル魔法学院で再会する約束を立てるのであった。


 「じゃあ俺も行ってくる。お前たちもちゃんと自分たちのやることをやるんだぞ」


 カーラを見送ったループスも早々に外出の準備を整えていた。彼女も今日からしばらくの間フィリアの喫茶店で働くことになっているのである。


 「そっちも頑張れよ。間違っても客に剣を向けたりしたらダメだからな」

 「わかっている」


 ハルトがわざとらしく忠告するとループスはそれに対して理解済みと言わんばかりの反応を見せた。なにしろループスにとっては初めての接客である。フィリアが教えてくれる可能性は大いにあるとはいえ、先に行っておくに越したことはなかった。

 ループスはハルトからの忠告を冗談半分に聞き流してフィリアの喫茶店へと向かっていった。


 朝七時三十分、フィリアの喫茶店に到着したループスは早速フィリアから仕事内容の説明を受けていた。

 

 「ループスちゃんにはこれからお客さんの注文を聞いて回るっていうお仕事をしてもらいます。お客さんに呼ばれたらテーブルまで行って、注文を聞いて、それを私に届けるの」

  

 フィリアはホールの仕事の説明をしながらループスに紙とペンを手渡した。ループスは手渡されたものの意図が掴めず不思議そうに眺める。


 「これはどうするんだ?」

 「注文を受けたらその内容をそこに書き残すの。間違えないようにね」

 「なるほど。そういうことか」


 ループスは説明を受けてようやくその用途を理解した。


 「あともう一つ。お客さんが入ってきたら入り口のお客さんの方を見ながら『いらっしゃいませ』って言ってね。一回練習してみようか。いらっしゃいませ」

 「い、いらっしゃいませ」

 「うーん……もう一回やってみよっか」


 ループスの初めての『いらっしゃいませ』に不安を感じたフィリアはもう一度練習させた。ループスは初めての接客仕事を前に自ずと緊張し始めていた。

 そうしている間に始業時刻の午前八時が迫ろうとしていた。


 「初めてで大変だと思うけど困ったことがあったらおばさんも助けに入るから安心してね。あと……」

 「あと?」

 「その剣は向こうに置いてきてね。ここはそういうところじゃないから……」


 フィリアはループスが腰に帯びている剣を外すように指摘した。この喫茶店はあくまで憩いの場であり、自衛を求められるような物騒な場所ではない。客に変な緊張感を与えないためにもそういったものを連想させる武器は見せないでおくべきというのがフィリアの考えであった。

 店の主がそう言うのなら従うべきであると判断したループスは剣を外すと厨房の奥に安置した。


 そして来る朝八時。フィリアが店の入り口に営業中の掛札をかけると同時にループスの初仕事が始まった。すると喫茶店の常連客が数名いつものようにやってくる。彼らは皆数年来の利用者たちであった。


 「いらっしゃいませ」


 聞きなれない声が出迎えてきたことで常連客はループスの存在に気が付いた。言われたとおりに行動を実行するループスの姿をフィリアはカウンターの奥でニコニコと見守る。


 「フィリアさん。この子は?」

 「昔ちょっとだけここにいたハルトちゃんの妹さんよ。今日からここでお仕事してもらうことになったの」

 「初めまして。ループス・ノワールロアです」


 フィリアから事情の説明を受けた常連客にループスは改めて挨拶をした。常連客たちはループスの容姿に驚かされつつもフィリアが雇ったのなら大丈夫だろうという信頼から彼女を温かく歓迎する。


 「フィリアさん。いつものを頼むよ」

 「私にもいつものを」

 「待って。せっかくだからループスちゃんに注文の受け方の練習をさせてあげて」


 常連客に対してフィリアがそう言うとループスが注文を伺いにやって来た。常連客たちは品名を言わずとも『いつもの』で通じてしまうほどに通い詰めた人々だがそれではループスの仕事にならないのである。

 

 「注文をお伺いします」

 「えっとね。玉子のサンドイッチと温かいコーヒーを一つ。コーヒーは砂糖入りでね」


 常連客の一人がループスに注文をつける。ループスは聴き取った内容をメモに書き記した。一人分の注文を聞き終えると今度は別の常連客のところへ注文を聞きに行く。

 拙いながらも真面目に仕事に取り組むループスの姿をその場にいた誰もが微笑ましく見守る。フィリアも常連客もそれなりに歳を重ねているため、ループスを年頃の娘のように見えたのである。


 

 「注文が入りました。お願いします」


 ループスは注文をメモした紙をフィリアに手渡した。それを受け取ったフィリアはニコニコしながら厨房へと姿を消す。

 こうしてループスは順調に初仕事を滑り出したのであった。

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