表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
最終章 これまで見てきたもの
339/383

エミリーの願望

 「そう。もう行っちゃうの」

 

 翌朝、村を離れることを聞いたエミリーは心底残念そうにそう言った。ハルトと再会し、彼女たちと共に過ごした数日間は矢のように一瞬で過ぎ去っていったようであった。

 彼女はただ別れを惜しんでいるだけではなく、どうしても彼女たちにやってもらいたいことがあった。


 「ハルト……あと、ループス」


 エミリーはハルトとループスを呼び止めた。アリアとカーラはこの場にはいない。この条件がそろったことでハルトはエミリーが何を言おうとしているのかがなんとなく理解できてしまった。

 

 「エミリー。まさかとは思うが俺たちに『耳と尻尾を触らせろ』って言うつもりじゃないだろうな」

 「ご明察。私がそれ以外に頼みごとをすると思う?」


 ハルトが先回りして尋ねるとエミリーは堂々と開き直って答えた。あまりにも己の欲望に素直なその姿にループスは一周回って感心させられる。


 「別に俺はいいけどさ。ループスは何というやら……」


 ハルトは自分の尻尾をいじりながらループスの方に視線を送った。ハルトはすでにエミリーに耳と尻尾を触らせた関係であるため今更断ることもなかったがループスの方が問題であった。

 ループスは自分から耳と尻尾を触らせることは絶対にないため、意地でも触ろうとするエミリーとどちらが折れるかの押し問答になるのが目に見えていたのである。


 エミリーはグイっとループスに迫ると彼女の両肩に手を置いた。自分よりも身長が高いループスが相手だろうと臆せず近づいていくその執念はもはや無敵であった。

 

 「一度だけでいいの。触らせてくれる?」

 「嫌だ。俺のは触らせたくはない」

 「そこをなんとかお願い」

 

 ループスはエミリーの要求に応じようとしなかった。するとエミリーはすかさずそれに食い下がる。

 ここまではハルトの要素通りの展開であった。ハルトは二人の押し問答の様子を脇で座りながら眺めた。


 「わかった……一度だけだぞ」


 数分に及ぶ駆け引きの末、ループス側がエミリーの熱意に折れた。どうも彼女は熱意の伴うワガママをはっきり咎めるkとおができないようであった。


 「二人とも、そこに座って」


 ループスからの言質を得たエミリーはハルトとループスを自分の正面に背を向けるように座らせた。慣れっこであるハルトはともかく、ループスはどうにもそわそわして落ち着かない様子であった。


 「おぉ……これはこれで……」


 エミリーは初めて触れるループスの尻尾の感触を堪能していた。ふわふわさらさらのハルトとは違う硬めの手触りが癖になりそうであった。

 ループスは背筋にゾワゾワした感覚を覚えつつもじっとそれに耐え続けることとなった。


 「くすぐったい?」

 「あぁ。だから触らせたくなかったんだ」

 

 ループスは正直に自分が考えていたことを伝えた。エミリーはループスがハルトと比べてスキンシップが苦手であることを理解はしたものの、それに対して特に悪びれる様子は見せない。


 「貴方。耳を動かすの苦手?」

 「苦手も何も、今まで他の誰かに触らせたことないから当然だろう」


 ループスはエミリーに指摘を受けると怒り気味に返した。小柄で柔軟な性格をしているハルトとは対照的に大人びた容姿と堅い性格をしているループスは他の誰かとスキンシップを取ることが極端に少なく、それに備えることには不得手であった。特に頭を撫でられる経験が非常に少ないため、耳を伏せたりして手を受け入れる仕草がかなり不格好になっていた。


 「せっかく見た目がいいのにもったいない……」

 「そう思うだろ?もっと言ってやってくれよ」


 ループスが自分の外見的武器を持て余している事実を残念がるエミリーにハルトは同調した。ハルトとループスは体格こそ真逆と言えるほどに異なるが獣の耳と尻尾が付いた少女という属性は同じである。それを活かせていないのはハルトとエミリーからすればもったいなく感じられたのである。


 「……ッ!?」


 ループスは初めて覚える感覚に驚いて背筋を伸び上がらせた。エミリーはループスの後頭部に鼻を近づけ、おもむろに耳の近くで息を吸い始めたのである。ハルトもかつてエミリーにやられたことであり、彼女の場合は尻尾であった。


 「何するんだ!?」


 エミリーの奇行に動揺したループスは反射的に飛び跳ねると顔を真っ赤にしながらエミリーを睨みつけた。この姿になってからというもの、こんな扱いを受けたのは初めてであった。


 「獣臭さと、忠誠心と、あとは努力の匂いがしたわ。貴方って頑張り屋さんなのね」


 エミリーはループスに睨まれてなお臆することなくループスをそう評した。常に誰かに対して忠誠を尽くし、己の、そして主の求めた理想を体現するためなら努力を惜しまない。ループス・マグナレイド、ひいてはループス・ノワールロアという人物像をエミリーは匂いだけで正確に評してみせたのである。

 それに対してハルトもループスも何も言うことはなかった。


 

 「ありがとう。私からはもうこれ以上は何も求めないわ。アリアたちにもよろしく言っておいて」


 エミリーはハルトたちに別れを告げるとどこかへと去って行ってしまった。風変わりな少女とのイベントを終え、二人はアリアたちのところへ戻って次の目的地への旅を始めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ