ループスとハルトの未来
「二人もせっかくなら占っていって」
「それなら俺から一ついいか」
エミリー一家、アリア、カーラの五人はハルトとループスに期待の視線を向けた。五人に迫られ、焦るハルトとは対照的にループスは自ら名乗り出た。彼女は占ってもらいたいことが一つあった。
「占ってほしいことを教えてください」
「俺が知りたいのは一つ。いつまでハルトと一緒にいられるか見てほしい」
ループスが占ってほしいこと、それは彼女がこれから先いつまでハルトと一緒にいられるかであった。ループスにとってハルトは大切なパートナーであり、忠義を尽くす相手である。そんなパートナーと自分がどれだけの時間いられるのかが知りたかったのである。
「では、カードを三枚選んで……」
エミリーの父に促されるがまま、ループスは無雑作に並べられたカードの中から三枚を表替えした。彼女が手に取ったのは『猫』『身体を丸めた蛇』『騎士』が描かれていた。
「この蛇の絵柄、さっきも見たな」
「そうですね。猫は『ワガママ』、蛇は『永遠に尽くすもの』、騎士は『忠誠』を意味します。これから先もずっとハルトさんのワガママに振り回されるかもしれませんが、貴方が忠誠でいる限りずっと傍にいられることでしょう」
エミリーの父が占いで導き出したのはハルトのワガママに振り回されつつも彼女に付き合うループスの姿であった。つまり、いつも通りでいる限り二人はずっと一緒にいられるということであった。
それを聞いたループスは喜びの感情を抑えられずに耳をピンと跳ね上げた。
「うへぇ……これからずっと一緒かぁ」
ハルトはわざとらしくぼやいた。しかしループスと一緒にいることに対してはまんざらでもなかった。それもそのはず、ハルトにとっては性転換したうえで人外化したという外見事情を共有できる唯一の存在であり、傍にいて最も自然体でいられる相手でもあったのである。
二人はすでに一蓮托生ともいえるような間柄であった。
「そう言ってもなんだかんだ言って嬉しいだろ」
「うるせぇなぁ」
嬉しそうに絡んでくるループスをハルトは雑にあしらった。だが声色や仕草は決して怪訝なものではなく、エミリーたちには二人がじゃれ合っているように見えた。
「さて、残るはハルトちゃんだけですが、何か占いたいことはありますか?」
エミリーの母が最後に残ったハルトに尋ねた。ここまで仲間たち三人がそれぞれ気になっていることを占ってもらっていたが彼女には特にこれといって占ってもらいたいような事象が思いつかなかった。
しかしせっかくの善意を無碍にしてしまうのも失礼かと考えたハルトは何かないかと考えた。
「うーん……」
考えている内にハルトは唸り声をあげていた。占いを前にして悩むハルトの姿に一同は驚かされた。
「あ、そうだ!」
数分悩んだ末、ハルトは占ってほしいことを一つ思いついた。エミリー一家は彼女の口からどんな言葉が出てくるのかを心して待つ。
「一年後の俺はどこにいるんだ?」
ハルトが占いたい内容は一年後の自分の所在地であった。決まった拠点を持たない彼女は基本的に根無し草であるため、所在地を知ればすなわち自分が何をしているのかを推測することができるのである。
彼女の思惑を理解せぬままエミリーの父は占いを開始した。ハルトは自分の直感を信じるままに三枚のカードを選んで表返す。そこには他の誰とも違う絵柄である『天使』『指輪』『古びた時計』が描かれていた。
絵柄を見たエミリー一家はそれを見て驚いたように顔を見合わせ、とあるカードを凝視した。
「ほう。これは……」
「何かあったのか?」
「天使の絵柄を引く人って滅多にいないから珍しくて……」
エミリーは感慨深そうにそう呟いた。この占いにおいて『天使』の絵柄のカードはどういうわけか滅多に引かれることはない。エミリーが占い外で狙って引こうとしても一度も引くことができないほどに珍しいカードであった。
「天使は『愛情』、指輪は『約束』、時計は『昔』を意味します。つまりのところは『昔約束をしたことのある愛情を持った人』のところにいるものかと」
エミリーの父はカードの持つ意味とそこから導き出される答えをハルトに提示した。この占いが正しければハルトは昔約束をしたことのある人物のところにいることになるがそれが誰なのか彼女自身もさっぱり思い出せなかった。
「あれって結局誰なんだろうか」
その夜は予言の存在がどんな人物なのかを模索するのであった。




