寄り道の旅
突発の報復合戦も終わり、ようやくソルシエールを出発する目途が立ったハルトたち一行は荷物をまとめて宿を出た。今日こそソルシエールを発ってエリアルへと向かうのである。
「あ、そうだ。ちょっと寄りたいところがあるわ」
ハルトはふと思い出したようにそう言うとソルシエールの通りをスルスルと抜けていった。彼女がどこに行こうとしているのかループスたちにはさっぱり見当がつかなかったものの、ループスは匂いを足掛かりにハルトの跡を追いかけた。
ループスが追跡すること数分、ハルトが足を止めたのは風変わりな土産物屋であった。ループスは店の中を見回し、ハルトが凝視しているものを見て彼女の目的を理解した。
「見ろループス!油揚げがいっぱいだ!」
ハルトは目を輝かせて尻尾をブンブン振り回しながら大喜びでループスに報告してきた。油揚げはハルトの大好物である。世間にはほとんど浸透していない珍味であるため、こういった土産物屋でしか手に入れることができない。
土産物屋に寄る度に買い占めにも等しい量を漁っていくのが通例であったがここ最近は久しく見かけていなかったのである。
「おばちゃん。これ全部くれ!」
「あいよー」
ハルトは独断で土産物屋の油揚げを買い占めてしまった。元々油揚げの購入者が彼女ぐらいしかいないこともあり、店側も快くそれに応じた。
「懐かしいな。お前と出会ったときのことを思い出す」
「あー、あの頃のお前は俺にべったりだったな」
会計を済ませたハルトはループスと思い出話に花を咲かせていた。再開したばかりの頃のループスはハルトへの依存心が非常に強く、彼女が視界に映っていないと不安を覚えるほどの寂しがりでもあった。今でも依存心は変わらないものの、寂しがりについては旅を続けている内に幾分か改善された。
「ハルトさん。急にどこに行ったかと思ったらこんなところにいたんですね」
ループスに遅れること数分、アリアとカーラもハルトの元に合流してきた。ハルトとループスの二人と違い、身体能力は年齢相応の人間である二人は追いつくのに時間がかかった。
「これは……なんですか?」
アリアはハルトが手に持っているものを見て首を傾げた。彼女は油揚げを見るのは初めてである。
「これか?これは油揚げっていってな」
ハルトは簡潔に説明すると油揚げを一切れ食いつまんだ。アリアはハルトが手にしてたそれが食べられるということが信じられなかった。
カーラは物珍しいものを見たと言わんばかりにまじまじとその様子を覗いている。
「それ……食べられるんですか……?」
「当り前よ。あ、今夜はこれを料理してくれないか?」
初めて見る珍味に疑いの目を向けるアリアにハルトはその場の思い付きで頼み込んだ。これまでハルトにとっての油揚げの食べ方と言えばそのまま食すか何か液体に浸して食すかの二択であった。だが料理スキルを持ったアリアがいればそれ以外の食べ方ができる可能性があったのである。
一方でアリアは初めて見る食材を前に困惑を隠せない様子であった。
「どうだ?できそうか?」
ハルトは目を輝かせながらアリアに尋ねる。これだけ純粋な期待を寄せられるとアリアには断ることができなかった。
「や、やってみます……!」
「やったー!」
ハルトは外見年齢相応のリアクションを見せた。天然か、あるいは計算尽くか、どちらとも取れない彼女の振る舞いにループスたちはただただ困惑するばかりであった。
こうして、エリアルまで戻るハルトたちの最後の旅が始まったのであった。
次回、幕間の話を挟んで第十四章は完結となります。




