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ケモミミTS魔法少女は何を見る~俺は天才だ!~  作者: 火蛍
14章 魔法使いの始祖
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逃げ出した猛獣

 旅に出発する日の早朝のこと。ハルトは変な音を聞きつけて目を覚ました。何かの足音、漏れ出る吐息、どれも人間のものではない。人の住むところにはまずいないであろう獣のそれであった。

 ハルトは日差しを遮るカーテンをわずかに明け、隙間からまだ薄暗い外の様子を見るとそこには衝撃的な光景が広がっていた。


 「な、なんだあれ……」


 ハルトは外を歩いているそれを見てただただ絶句するばかりであった。ソルシエールの通りを巨大な動物が闊歩していたのである。しかしその姿はハルトがこれまで見てきたどんな動物にも当てはまらなかった。

 獅子の頭と身体に鳥のような巨大な翼、さらに頭には婉曲して正面を向いた二本の角が左右対になって生えている。様々な動物の特徴を併せ持ったまさしく『異形』と呼ぶにふさわしい風貌をしていた。それが危険な存在であることはハルトの目には明らかであった。

 ハルトは自衛の可能性を警戒し、すぐに手元の銃に弾をこめて予備のスピードローダーを懐に忍ばせ、さらに大型銃に弾を一発込めた。


 「おはようございます……こんな時間から何をしてるんですか?」


 ハルトがごそごそと作業をしている音でアリアがつられて目を覚ました。ハルトは何も言わずに窓の外を指さし、アリアに窓の外の様子を確認させる。


 「な、なんですかアレ……」

 「わかんねえ。でもなんだかヤバそうだ」


 窓の外にいる『それ』を見て絶句したアリアにハルトは警告を促した。得体の知れない生物を前にアリアの契約精霊であるビシャスを呼び出して自衛させることを推奨するほどであった。


 「ど、どうしましょう……」

 「アイツを排除する」


 ハルトは街を闊歩する怪物を排除するつもりであった。さもなくば安全にこの街を出発することは不可能だったからである。

 ゴーグルを装着して臨戦態勢に入ったハルトは窓をわずかに開けてその隙間から大型銃の銃口を向け、アリアは万一に事態に備えてループスとカーラを起こす。カーラを起こすことには成功したがループスはアリアがどれだけ揺さぶっても一向に目を覚ます気配がない。


 「コイツはこういう時に限ってこれか……」


 ハルトは眠っているループスに悪態づきながらも照準を怪物へと合わせた。幸いなことにソルシエールの人々は皆建物の中に隠れることができていたため、周囲に障害となるものは何もない。存分に狙撃に集中することができる環境が出来上がっていた。


 「ッ!」


 怪物が足を止めた瞬間を狙い、ハルトは大型銃の引き金を引いた。銃は炸裂音と共に銃口から弾丸を射出し、その弾道上に紫電を走らせる。

 放たれた弾丸は怪物の肩に直撃し、その身体を貫いて反対側の地面に突き抜ける。ハルトはゴーグル越しにその後の様子を観察していると、驚くべき結果を見ることとなった。


 「アイツまだ生きてやがるぞ」


 なんど怪物は大型銃の魔弾の直撃を受けてなお生きていたのである。ダメージは確実に与えられているにも関わらず、一撃で仕留めるには至らなかったのである。


 「やめとくれ!コイツを殺さんでくれ!」


 痩せこけた老爺がそう叫びながら怪物を庇うように通りに現れた。どうやら彼はあの怪物と関係があるようであった。

 ハルトたちはループスを置いて外へと出た。


 「どういうつもりだ」

 「コイツは私の傑作だ」

 「傑作?」

 「そうだ。コイツは私が作り上げた新たな命、最強の動物なのだ」


 老爺は怪物を『最強の動物』と形容した。怪物は老爺によって人工的に作られた動物だったのである。


 「ふざけんな。じゃあ逃げないように管理しとけよ」

 「違う!私はコイツを遊ばせてやろうと思っただけだ!」


 真っ当な怒りをぶつけるハルトに対し、老爺は屁理屈ともいえる御託を並べた。怪物が老爺の制御の聞かない存在であることはハルト、アリア、そしてカーラの三人から見て明白であった。

 ハルトから自分を攻撃した魔力の存在を感知したのか、怪物は唸り声をあげてハルトを睨みつける。そして傷ついた身体で飛びかかろうとした矢先、アリアが咄嗟に呼び出した精霊ビシャスによって抑え込まれる。


 「これでも君は自分の手でどうにかできると思うかね」


 カーラは目の前に広がる惨状を老爺に見せつけながら尋ねた。創造主の制御を外れた創作物などもはや人の手に余る怪物でしかなかった。そしてあらゆる自然の動物の力をかき集めたとて自然を超越した存在である魔法や精霊には及ばなかったのである。


 「気の毒かもしれないがここで始末する。フォーゼ。マジカリア」


 カーラは慈悲も容赦もない宣告と共に変異魔法を唱えた。怪物は四肢の末端から魔法石に変化していき、たちまち全身が魔法石へオブジェクトへとなり果てた。

 怪物を抑えていたビシャスは手ごたえがなくなったと同時に手を離してアリアの背中へと戻っていく。


 「ハルト、そいつを粉々にしてくれ」

 

 怪物を魔法石に変えたカーラはハルトに粉砕を催促した。最初から怪物を射殺するつもりであったハルトは懐から小型銃を取り出すとその銃口を魔法石のオブジェクトと化した怪物の顔へと向ける。


 「やめろ!殺さないでくれ!」

 

 怪物を見逃すように懇願する老爺の言葉を無視し、ハルトは銃の引き金を引いて弾を放ち、オブジェクトを粉々に砕いた。オブジェクトは無数の魔法石の破片となって周囲に飛散する。これでカーラの手をもってしても修復は不可能となり、怪物は二度と戻ってこない存在と化したのである。


 「そ、そんな……」


 ようやく作り上げた新しい命を一瞬にして失った老爺は力なくその場に崩れ落ちた。彼なりの情はあったものの、やっていたことは倫理に反する行いであったためハルトたちからすれば当然の報いであった。


 

 「その魔法石の破片はすべて君にくれてやる。売ってお金にするも、かき集めて感傷に浸るも君の自由だ」


 カーラは崩れ落ちた老爺に魔法石の所有権を譲るとハルトたちと共にその場を去っていくのであった。

 

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