始祖の謎
「カーラ、魔法のことでいろいろと聞きたいことがある」
「ほう。なんでも聞いてごらん」
スキンシップを経てすっかりカーラと打ち解けたハルトはカーラに踏み込んだ質問をした。それは彼女が長年に渡って考察し続けていた『魔法使いとは何者なのか』に迫るものであった。
「アンタ、本当に魔法使いの始祖なのか?」
「無論。俺がこの世界で最初の魔法使いだ」
「魔法ってどうやって生まれたんだ?アンタならわかるだろう」
ハルトは自分にわからないことをカーラに尋ねた。この世界において魔法がどのようにして誕生したのか、それはあらゆる古今東西のあらゆる学者たちが何百年がかりで研究を重ねても解明できず、ハルトをもってしてもその手がかりすら掴めない謎である。
しかし原初の魔法使いが目の前にいる今はその謎を解き明かす最大のチャンスであった。その謎に興味津々にループスとアリアも聞き入る。
「そうだな……正直なところ、なぜ俺が魔法を使えるようになったのかは自分にもわからん」
「えっ?」
「俺も昔はそれを知りたくて研究に没頭したこともあったさ。でもな、なぜ自分が力を持ったのかよりも、その力の可能性を探る方が有意義だってことに気づいてから考えるのをやめたね」
カーラは考えてもわからないことは考えないようにする人間であった。自分がなぜ魔法を使えるのか、いくらまともに考えてもわからない故に考えるのをやめ、その力に秘められた可能性を広げて未来につなげる選択をしたのであった。
つまりカーラが魔法使いになったのは彼自身をもってしても突然変異としか説明ができないのである。
「君たちは魔法使いや魔法についてどういう知識を持っている?」
「えーっと……魔法使いの血が入ることで生まれる子が魔法使いになるとか」
「俺が発見したことだな」
「魔法には術式があって、詠唱でそれを組み替えることで様々な力を発揮するとか」
「それも俺が発見したことだ」
カーラは魔法使いたちの常識ともいえる知識の大半をたった一人で発見していた。それはそれとしてハルトには何か引っかかることがあった。
「ってか何。カーラって子供いたの?」
「いるぞ。そりゃあもうたくさん。俺が何人と交わったと思っている」
カーラはとんでもないことをさらりと言ってのけた。突然変異で誕生した人間を超えた力を持った存在ということもあり、その力にあやかろうと子供を授かろうとする女性は引く手数多であった。
要するにこの世界の魔法使いは全員カーラの血を引いているのである。
「子供の顔とか覚えてるの?」
「さあ?そもそも俺は結婚してないからなぁ」
己の子孫に対してカーラはあまりにも無頓着であった。あまりにも関係を持ちすぎていたため、逆に普通の家庭を築くことが困難になっていたほどである。
一夜限りの関係の相手が自分の子を身籠っていることすらろくに知らないということもざらであった。始祖故の壮絶な経験にハルトとループス、そしてアリアはドン引きさせられるばかりであった。
「というわけで俺から語れる魔法使いの謎についてはここまで」
カーラは話を切り上げた。彼的には自身という魔法使いそのものについて知り得る限りのことを話したつもりであった。
「腹が減った。この時代の食というものを口にしてみたい」
カーラはワガママじみた要求をハルトたちに押し付けた。現代の金銭などこれっぽっちも持ち合わせていない故、誰かに頼らなければならないのは必然だったのである。
ハルトとループスは呆れてため息をつきつつもカーラは食事のとれる場所へと連れて行ったのであった。




