解かれた封印
「まさかこんな状態で生きているとは……」
ハルトたちは保護した男の様子を観察していた。眠ったままだが呼吸は安定しており、近いうちに目を覚ますことは容易に推測できた。
「にしてもどうしてこの人は魔法石の中に?」
「誰かに封印されてた……とか?」
ハルトたちは男の正体を推察した。が、確証たるものが何一つとして存在しないため、どれも憶測の域を出ない。そもそも魔法石の採掘が活発に行われているソルシエールの鉱山においてなぜ今まで発見されていなかったのかもわからなかった。
「はっ……!ここは一体……」
ハルトたちが推察を続ける中、保護した男は不意に目を覚まして声を発した。いきなりの出来事にハルトは驚き飛び跳ねて男と距離を取る。
男はどうやら体調も万全らしく、普通の人間の寝覚めと何ら違いのない挙動で上半身を起こして周囲の様子を見まわす。彼の目には早速三人の少女の姿が映り込んだ。
「君たちが俺の封印を解いたのか?」
男からの唐突な問いにハルトたちは返答に困ってしまった。男が封印されていた存在であることは真であるらしいものの、それを解いたのは意図したことではなかったのである。
「あの……アンタ誰?」
「なんと。俺を知らないのか」
ハルトは質問を無視して男に質問を返すと男は逆に驚いたような表情を見せた。それはまるで自分の存在を知らない人間が存在しているのが信じられないと言わんばかりであった。
「俺はカーラ。この世界の魔法使いの始祖だ」
男は自らをカーラと名乗り、その身分を明かした。彼はこの世界における最初の魔法使いだというのである。
「魔法使いの……始祖?」
「本当か?」
ハルトたちはカーラに対して疑いの目を向けた。何もかもが胡散臭い目の前の男をいきなり信じるなど到底不可能であった。
「信じられないのか」
「いや、だって……なぁ?」
「何もかもが胡散臭くて……」
「簡単には信じられないかも……です」
カーラはハルトたちの言い分を聞いてショックを受けた。封印されていた間に自分のことを知る人間がいなくなってしまったことに気づかされたのである。
「俺たちからいろいろ聞きたいことがある」
「いいだろう。知り得る限りで答えよう」
「まずどうして魔法石の中にいたんだ」
まずはハルトがカーラに対して質問を切り込んだ。彼女はいろいろと謎だらけのカーラに対して一つずつ聞きこむことで彼の正体を知ろうとしていた。
「魔法をこの世界に広めたのは自分だが、それが発展した世界の姿をどうしても自分の目で見てみたくてな。で、魔法石に自分を封印して眠ってたってワケ」
カーラは自分が魔法石に封印されていた理由を語った。彼は未来の世界を見るために自らの手で封印を施していたのである。それを聞いたハルトに更なる疑問が浮かび上がる。
「じゃあ、魔法石って……」
「俺が作ったものだ」
魔法石は自身によって作られたものだとカーラは主張した。もしそれが真であるならば今までの世界の常識が覆るほどの衝撃の事実である。
「どうして赤い魔法石は俺とアンタに反応したんだ」
続けてループスがカーラに質問する。魔法石の創造主であるのが真であればその謎に答えることができるはずであった。
「赤い魔法石は俺の封印を解くための鍵として作った。だから俺の封印に反応するのは当然のことだな」
「ならどうして俺にも反応するんだ」
赤い魔法石がカーラに反応した理由はともかく、ループスの魔力にも反応を示す理由は依然としてわからないままであった。それについて問われてもカーラはそれに動じるような様子を見せない。
「きっと俺の魔力を色濃く受け継いだんだろう。それを見つけたときに何かに導かれるような感覚を覚えなかったか?」
「なぜそれを……」
「そういうことだ」
カーラは赤い魔法石がループスに反応を示した理由を語った。彼曰くループスは血縁のどこかでカーラの血を引いており、その魔力の経路を色濃く受け継いだ結果だという。
やはり不可解ではあったものの、謎に一つ一つ答えていくカーラは本当に魔法使いの始祖なのではないかとハルトたちには思えるようになってきていた。
「ところで……」
大きな疑問に一つ一つ答えたところでカーラは逆にハルトたちに質問を仕掛けた。
「どうしてそこの二人には動物の耳と尻尾が生えているんだ?俺が眠っている間にそういう種族でも生まれたのか?」




