次なる旅路は
セシルとレオナの二人と共にプリモの町で過ごすこと十数日。ハルトはふと思い出したようにループスに声をかけた。
「なあ、いつここを出る?」
「えっ?」
ハルトに尋ねられたループスはすっとぼけたような声で返事をした。プリモの町の居心地がよすぎて彼女の中からすっかり旅に関することが抜け落ちてしまっていた。
「えっ、じゃねえよ。いつまでもここにいるつもりはないぞ」
「そ、そうだよな」
自分たちが旅人であることを思い出したループスは気まずそうにハルトに同調した。すっかり絆されてアイム家に定住を決めかけていたことを悟られたくはなかった。
「で、次の行き先は?」
「まだ決めてない」
「冗談だろ。せめてどこに行くかぐらいは考えてくれ」
ループスは目的地を決めるようにハルトに促した。旅を再開しようにも行き先を決めなければただ放浪するだけである。目的がなくとも行き先がないのは避けたかった。
「よし、それなら」
そう言うとハルトはセシルとレオナに話をつけることにした。
「……というわけだ。どこかいい場所はないか?」
ハルトから話を聞いたセシルとレオナはなんとも難しい表情を浮かべた。我が子たちと再び別れるのが惜しかったためである。
「どうしても、旅をするの?」
レオナは寂しげにハルトに尋ねた。できることなら別れることなく、我が子たちとずっとこんな日々を過ごし続けていたいのが本音であった。しかしそれなりに成長した子供を持った親という立場上、子供の意思を尊重しないわけにもいかなかった。
「ああ、俺たちはアイム家の子だけど旅人でもあるからな」
「そう……」
ハルトの意思は固かった。彼女もまた、両親と再び分かれることには少なからず名残惜しさを感じていた。
「それなら、グラーシャに行くといい」
「グラーシャ?ああ、父さんたちが新婚旅行で行ったっていう場所か」
セシルが提案するとハルトはそれに対して反応を示した。グラーシャは幼き日にセシルとレオナが昔話の題材として何度も聞かせていた街の名である。ハルトはそれを覚えていた。
「そう。もしそこに行くのであれば、あの壮大な大雪原を君たちの目で見てもらいたい」
グラーシャは周辺一帯の大地を分厚い氷に覆われた地域にある街である。一年中雪が降り、景色は白銀に染められている。両親が語るその街にハルトは足を運びたくなった。
「行ってみるか。昔父さんと母さんが行ったっていうその街に」
ハルトはグラーシャへ行くことを決めた。ループスもそれに同行することを決定する。
「で、いつ出発するの?」
「あと数日経ったらかな。まだそういう準備は進めてないし」
「俺も少しだけ時間が欲しい。いきなりいなくなったら子供たちに申し訳ない」
旅を再開することを決め、レオナが日程を尋ねるとハルトとループスはそれぞれ異なる答えを出した。ハルトは旅の準備が整い次第、ループスは子供たちにつけている剣術の稽古に一定の区切りをつけたらであった。
いずれにせよ、二人ともあまり長く滞在するつもりはなかった。
こうして、二人の少女は温かく穏やかな時間に終わりを告げる決心をしたのであった。




