第22話 決闘から死合いへ……
そしていよいよ魔王との四度目の戦いに挑む。
速攻で片付ける!
このゲームで最大の即効性と破壊力を持つ、電撃の魔法でまずは攻め立てる。電撃の魔法は的までの到達時間がとても早く、かつ行動阻害の補助効果を発揮する。こんなものがほいほい撃てるはずはないので、オフェンス・キャパシティは単発発動が基本だ。とてもではないが、他の魔法と組み合わせるキャパシティに余裕はない。
おれの現在の戦闘力はこんな感じだ。
【ルーリエメッセージ、ルーリエメッセージ】
◆レベル36です◆
・アクションキャパシティ値は324です
・新魔法の習得可能(省略、自己参照のこと)
・新アビリティ習得可能(省略、自己参照のこと)
おれは、第一形態の魔王に対して電撃の上級魔法<ビリンビ>(150)を放つ。
グリフォンは必死に避けようとしたが足先に被弾し、膝をついた。
ブレイクか? と思いきやいままでとは反応が違った。
「ふふふ……おまえは俺の機動力を奪い、徹底的に攻撃しようとしているようだが、甘い」
「!」
不吉な物を感じ取って、おれは距離を取った。
途端、黒い稲妻が地面をほとばしった。
「くっ、聞いてねえぞ!」
そんな攻撃があるなんて、おれは知らない。いや、魔王側の侵略チャートをやらなかったせいで窮地に立たされているんだ。
これは魔王侵略側のチャート知識がなければ、苦戦は必至か。ひとつのチャートだけを追いかけて、他のチャートの持つ面白さや可能性を無視していたおれのミスだ。
「真魔王さまは俺におっしゃったよ……無知は罪。知らぬほうが一方的に蹂躙されるのは世の常なり、とな」
真魔王は残酷そのもののようだ。
いや、魔物を蹂躙しているという意味では人間側も同じかもしれないが。
ただし、共感は出来ない。
四獣将の親分のように人間との共存を望んでいる魔物だっているんだ。
なにが正解かはわからない。
倒す。まずは魔王を倒す。おれは思考を切り替える。
「斬り崩す!」
「望むところよ!」
おれは、両手に岩石の魔法で作った長剣と、氷結の魔法で作った短剣に、疾風の魔法ピュウと、電撃の魔法ビリリを付加した。岩石の剣は衝突の度に細かい粒子を飛ばし、氷の短剣は、電撃の通過を補助して阻害効果を高める。
魔王の近接攻撃もすこしパターンが変わっていた。
爪による乱舞攻撃と、二の腕を突き出して突進してくる暴れスタイル。システムで保護されているとはいえ、攻撃にも割きたいアクションキャパシティには惜しい。防御に失敗すれば、即死もあり得る勢いだ。
さてどうするか、と考えるまでもない。
すべてを捌きすべてをたたき込むのみだ!
「ぬう!」
「小剣を甘く見ていただろう?」
均衡が崩れたのは、小剣が突き刺さってからだった。
グリフォンの動きが時折びくん、と跳ねたように止まる。
電撃による麻痺効果だ。
戦闘はなにも派手な攻撃をぶち込むだけではないのだ。
「ぐぬっ、こんな貧相な小剣など!」
「甘い、甘い。どこまでもあめえよ。なんのために氷結の魔法を使ったと思ってんだ」
「なんだと?」
「氷は砕ける。砕ければ小さな刃となる。その刃が傷を作り続け電撃を流し続けるんだよ」
「ぐおおおお!」
グリフォンは第二形態に変化した。
飛行形態だ。
シャドウウォーカー……影法師をクラスとしていれば余裕の相手だが、魔王部屋を縦横無尽に駆け回り、縦横斜めから天蓋まで破壊して移動の範囲を広めたグリフォンは、まさに魔王の風格だ。
初見では絶対に倒せないと謳われていたのも頷ける性能。
ここからは総合力の勝負だ。
グリフォンが助走距離を取り、突進攻撃のモーションに入る。盾で押さえ込みたいのだが、素早すぎてディフェンス・アクションの追撃が通らないことが多々ある。そこで対抗策となるのが。
「<ヘヴィー・クロスブロック>(92)だ!」
左右の腕から伸びる剣を交差させ、十字の防御態勢を作る。グランドブレイカーをはじめ、数々の上級剣技クラスが習得する基本にして重要な技。
がりがりがり!
絨毯などすでにぼろきれになった石造りの廊下に轍が刻まれる。
さらに、中級の防御魔法を多重展開。
「<アスタリスクシールド>(60)の重ねがけ!」
眼前に岩石と氷塊の大きな盾が出現し、攻撃をはね除ける。
がりがりがり!
ばきん! ばきん ばきんっ!
「耐えろ、耐えてくれ!」
「これを食らって耐える者など、真魔王さまを除いて他におらぬわ!」
重ねがけをしたものの、シールド系の魔法は応用力が試されるのであって、純粋なぶつかり合いでは分が悪い。どんどん削られていき、突進の勢いを止めたところで粉々に砕け散った。
手から伸びる十字剣が望みの綱だ。突進を止めたとはいえ、そこからさらなる攻撃が連続して繰り出される。
爪による苛烈な振り下ろし攻撃が繰り出され、敵の連続技が検知される。十字剣との衝突で激しい衝撃が発生し、もともとボロボロになっていた広間がさらに荒れた。調度品の残骸や、石畳の残骸。砕かれた岩石や氷塊が散らばっている。
果たして。
ぶしゅうううう……。
あまりの衝撃と熱量に、蒸気が発生している。
「耐えたぜ?」
「……」
「なんとか言ったらどうだ?」
「……ふっ、俺の負け、だ」
周回してきたなかで最強の魔王はこうして膝をついた。
しかし生きている。
彼もまた現実世界と記憶を繋げている者だと思った。
できれば殺したくない……思いは聞き届けられたが、しかし正直に言えば手加減などできるような余裕はなかった。
真魔王とやらの強さを想像すると、恐怖で身震いしてしまった。
* * *
回復薬で手早く体力を回復し、真魔王に挑もうとした時、なんと魔王から忠告が入った。
「悪いことは言わない。撤退したほうがいい……」
「なぜ?」
「あの方はすべてを見通す能力を持っている。そんな相手に勝てる道理はない」
「……もしかして、先ほどの戦闘も真魔王からの助言か?」
「そうだ、もし勇者がこのような行動をしてきたらこう対処せよ、などと聞かされたわ」
「…………」
なんとも迷惑な話だ。
ゲーム内の知識に精通するリアルタイムアタッカーをほんとの意味で敵に回すと、これほど厄介なこともないのか……。
「おそらくおまえの戦術もすべて読まれるだろう」
「それでも……行くのさ」
「なぜ?」
「きっとおれにしか倒せないからだろうさ」
「ふっ、おまえはどこまでも勇者なのだな」
「かもしれねえ」
死闘を終えた宿敵同士は、ふふふと笑いあった。
「最後にひとつだけ教えてほしい?」
「なんだ?」
「なぜそこまで苦しい思いをしてまで人間に尽くせるのだ?」
「あんたの部下に四獣将の親玉がいただろう?」
「ああ死んだと聞いたが」
生きているんだが、まあいいか。
「それがどうかしたのか?」
「そいつな、……人間との共存を望んでいたらしいぞ」
「なんとも……大それたことを考えるやつよ」
「でもありだろ?」
「ああ、悪くはないかもしれない」
何周も繰り返しているうちに魔王の性格がすこし変わったような気がした。
とその時だった。
「! 避けろ!」
「!」
一瞬、なにが起ったのかわからなかった。
グリフォンの腹に大穴が空いている。
どぷり、と嫌な音を立てて、黒ずんだ赤が噴き出した。
「真魔王さま……」
真魔王と呼ばれたのは華美な装飾の服装をまとった人間だった。人間の男に見えた。
「いけない……いけないよ、グリフォンくん……」
「い、いったい、なぜ……」
「勇者なんかと仲良くするなんて、僕は絶対に認めないよ。断罪させてもらう」
グリフォンが最後の力を振り絞るように、近くまで寄っていた勇者に語りかける。
「真魔王さまを頼みます」
そう言うと、合成獣の王は動かぬ屍となった……。
「…………」
言葉が出ない。
ふつふつと怒りが湧いてくる。
「さ、やろうか。勇者くん?」
「てめえだけは許さねえ」
どっ!
石造りの床が削れるほどの勢いで、おれは床を蹴ってやつに向かって突進したのだった。
【おしらせ】
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