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第19話 夢であろうとリアルタイムアタック対決はとまらない

「なにか収穫はあったの?」

「…………」


 茶の間らしき場所でせんべいをぼりぼり食っている女神が、退屈そうに言ってきた。

 どうせなんにもなかったんでしょ、と告げているようにも思える。

 実際に事実だからなにも答えられない。


「だから諦めなさいって。ほらさっさと現実世界に戻してあげるから」

「まだ、まだだ。まだ終わってねえよ」

「諦めが悪いわねえ、こんなのだと知ってたら拾わなきゃよかったわ」

「お手数をかけちまって悪いな」


 女神も不機嫌であるし、おれもめっちゃ不機嫌である。

 ヒントはつかんだつもりだ。


 おれが、失った記憶をゲーム内の世界で収集して取り戻しているように、ゲーム内のキャラクターたちの記憶もどこかに散らばっている、あるいは保存されているはずなのだ。

 でなければ起っている現象に説明がつかない。

 おれは首の後ろをぽりぽりと引っ掻いた。


 どうにも繋がりそうで繋がらない。

 なにか決定的なものが欠けている感覚。

 ふと、おれは現実世界にとっての夢と、ゲーム内世界にとっての夢について考えた。

 2つとも互いの世界を行き来し、記憶も往来しているのではないだろうか。



 だとすれば……ゲーム内世界のキャラクターたちは、現実世界で夢を見ている?



 ふと、稲妻に撃たれたような衝撃に襲われた感覚があった。

 そうだ、なにをおれは一方通行のように考えていたのだろうか。

 いや、忘れていた?


 二周目に入る前、ルーリエがなにか言っていたではないか。

 それこそが答えだったんだ。


「なあ、ルーリエさんよお」

「なにかしら?」

「あんたほんとに性格わるいな」

「そんなことありませーん!」


 茶番はこのくらいにする。さて……。

 ゲーム内世界での記憶は、現実世界で目覚めればおぼろになってゆく。

 現実世界での記憶は、ゲーム内世界で目覚めればおぼろになってゆく。

 つじつまは通る気がする。うん、きっとそうだ。


「なあ、ルーリエ」

「なによ、ぶつぶつうじうじ気持ち悪いんですけど?」

「おまえは夢を見るか?」

「はあ? 女神よ女神! 眠りなんて無駄な行為とは無縁! 夢なんて見たこともないわ」

「それを聞いて安心した」

「どういう意味よ」

「夢を見るには資格がいるってことだ」

「わたしだって見ようと思えば夢くらい見られるわよ?」


 なにやら顔を背け、おれを見ようとしない女神。

 わかりやすすぎるほどに嘘をついていた。


「じゃあ聞くが」

「なんでも聞くがいいわ!」


 ふんぞり返って、やけっぱちになっているように見えるが放っておこう。


「目が覚めるまで見ていた夢は、どこにいっちまうんだ?」

「き、消えるのよ」

「嘘だね。ゲーム内の都市長が夢の内容の一部を覚えていた。どこかに保存されてんだろ?」

「う、ううう……」


 女神は恥ずかしさからか、その場で縮こまってしまった。


「そうよ、記憶は本来ならすべて保存されるはずになっているのよ」

「なにがあった」


 おれは真に迫って聞いた。

 ずずいっと。


「魔王よ」

「魔王なら手強くなってきているが、何度か倒しているぞ」

「ゲーム内の魔王じゃないわ! 現実世界に魔王がやってきているのよ!」

「それがどうかしたのか?」

「なにを平然としているのよ! 魔王の目的はすべての記憶の掌握なのよ!」

「なん……だと……。もうすこし詳しく」

「もうっ! 現実世界だろうがゲーム内世界だろうが、ぜーんぶの記憶を自分のものにしようとしてるの!」

「止めろよ!」

「わたし、このゲーム専門の女神だし!」


 ちっ、つっかえねえなあ……。

 思わず右手と左手を拳と平手で叩き鳴らしてしまった。


「ほかの神さまとかいねえのか?」

「放っておこうってのが多数派なのよ……」

「なんてこった……」


 だとしたら、非常にまずい。

 記憶とはその人物を構成する要素そのものだと推察している。

 それが奪われてしまっては、人類は魂の抜かれた人形としてうごめきはじめるだろう。


 止めなければならない。

 しかし、謎は残る。


「その、真魔王とでも呼ぼう。そいつを倒すのはなぜおれになったんだ?」


 聞いておかねばならない。

 なぜ真魔王とおれの間に因縁ができてしまったのかを。


「真魔王は……現実世界のリアルタイムアタッカーよ」

「だから?」

「肝心なところで察しが悪いわね。同じように記憶をなくして取り戻していくうちに、自分が真の魔王だと気づいてしまったのよ。とても慎重なやつのようね、あんたが派手に暴れ回っていても表に出ず、ずっと戦力の監視をしていたみたいよ……」

「いままでの魔王は?」

「あなたたちで言うところのチャートのひとつ。前座にすぎないわ」

「限界ぎりぎりまでタイムを削って倒していた魔王が、前座だっただと?」


 と、記憶の一部がちくりと刺激されたような気がしたが、いまはそれどころじゃない。


「そうよ。さいわいにもあんたと同じく記憶をすべて取り戻しているわけじゃないからゲーム内の世界で戦えるけれど、間違いなく世界存亡の危機よ」

「…………」


 たったひとりの女の子を救いたいだけだったのに、いつの間にか世界の命運を賭けた勝負と相成った。

 記憶をめぐるリアルタイムアタッカーたちの戦いは、ゲーム内だけに留まらず、現実世界をも巻き込む大混戦になっていく。


 ただし、そのことを知る者はあまりに少ない。

 それぞれはそれぞれの日常を謳歌するだけだ。

 おれたちの血みどろの戦いなんて知られなくていいのだ。

 きっと仮初めでも平和が維持できているからこそ、現実世界の人間はさまざまな夢を見るのだと思うし、ゲーム内のキャラクターも現実世界の夢を見ているのではないだろうか。勝手な想像だが、おれはそうあってほしい。



【世界のだれよりも早く世界を救え!】



 ルーリエの声ではない。

 なんだったのだろう。

 きっと自分の内側から無意識に出てしまった声か。


 やってやるさ。

 真魔王だかもうひとりのリアルタイムアタッカーだか知らねえが、最も早くクリアするのはおれだ!

 現実世界のやつだからって容赦はしねえ……。

 いままで培ってきたチャートを駆使してぼっこぼこにしてやる。


 おれは意気込んだ。


 しかし、おれはこの時、この世界にやってきてから保っていた唯一絶対のアドバンテージが使えないことに気づかなかったのだった。そう、ゲーム内を知り尽くしている存在が、2名に増えているということに。


「サポートはいる?」

「そんなもんいらねえよ」


 見栄を張らずに、女神の助言を受け入れていればよかったと後悔するのは、決戦の時。

 いまはふつふつと闘志を燃やし、顔の全体がこわばった筋肉をほぐすことで手一杯だ。女神もこの時ばかりは手伝ってくれる。


「スマーイル」

「はっ、笑ってらんねえよ」


 ふにふにとおれの頬をつかんでぐにぐに柔らかくしようとするルーリエ。

 リラックスさせてくれようとしているのだろう。

 ふざけてる場合か?


 たっぷりと時間をかけて、チャートの厳選、魔法やスキルやアビリティの習得順。それと、クラスチェンジについて計画を練る。練る。練る。しかし、それは同時になにかを忘れてゆくことでもある。恐ろしいが、やるしかない。

 おれの全リアルタイムアタッカー知識を総動員して……練る!


 すべてを大団円で迎えられることを信じて、おれはひたすらに作戦を練ったのだった。

【おしらせ】


 このお話を気に入っていただけましたら、下記2点をよろしくお願いいたします。


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