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石の兎
とある学校の庭に小さな兎小屋がありました。
なぜ小さいのかというと、そこには一匹しか兎がいなかったからです。
その兎は目が真っ赤で、藁の中でいつも震えていました。
学校に通う一人の生徒が、その兎が寂しくないように、兎の石像を造りました。
生徒は兎の隣に、その石像を置いてあげました。
石像はその兎とそっくり同じ大きさ、同じ重さでした。
石像の重みで藁が沈み、兎は石像に寄り添うように傾きました。
その姿を見て生徒はとても喜びました。
「これで友達が出来たね」
兎は目を閉じて眠りました。
ある冬の日。
生徒が兎小屋を覗くと、そこには動かなくなった兎がいました。
その体は石像のように固まり、冷え切っていました。
寒い冬の季節、石像は氷のように冷たくなります。
兎はその石像にずっと寄り添っていた為に、命を落としたのでした。
生徒はその兎を丁重に埋葬し、その墓の隣に兎の石像を置いてあげました。




