176、腸
そこは、つい今までいた緑色の通路の数十倍はあると思われる大空洞だった。空洞の壁は遥か彼方で、何やら古くて黒っぽい外壁に配管やらなんやらがむき出しになっている様子だったが、問題はそこに何十本ものとても太い緑色の筒状の構造物が、巨大な魔物の腸のようにウネウネとうねりながら空間を埋め尽くしていたのだった。つまり、私たちがいた通路は、その規格外の大きさの列車のような緑色の管の内側だったわけである。
「なななななんなんですの、ここは!? こんな気色悪い場所一秒たりともいたくありませんわ!」
「とっても動画映えしそうで素敵……配信出来ないの勿体ない……」
後続二機のパイロットどもは口々に勝手なことをのたまってくれる。感想は真逆だが。
「こいつはさすがにすごいわね……まあ、ある程度予想はしていたけど」
私は奴ら塵芥と格の違いを見せつけるため、わざと頭の良さそうな台詞を述べた。
「ほほう、さすがお嬢様ですね。では、その予想とは?」
やはりアロエは主人の立て方をよく知っている。私は満足げに微笑みつつ、両手を広げてまるで翼のようにひらひらさせた。
「これよ、これ。わかるでしょ?」
「……夜道を歩く千鳥足の酔っ払いですか?」
「何でじゃああああああああああああーっ!?」
緊急時にもかかわらず、ついズッコケてしまう。やっぱ前言撤回。駄目だわこいつ。
『デモ千鳥足ノ部分ハ合ッテイルンジャナイデスカ? 要スルニ鳥ッテ言イタインデショウ?』
チッ、脳みそごときに正解を言い当てられてしまったか……。
「チッ、脳みそごときに正解を言い当てられてしまったか……」
『ダカラソノ思ッタコトスグ口ニスルノヤメマショウヨ!』
臓物風情が何やらほざいているが奴には現在人権がないのでどうでもよかった。
「鳥……そんなものどこかにいたでしょうか……?」
ルーランのボケカスが相変わらずボケたことを喋っている。そもそもこいつが「鳥」とか言ったから閃いたんだが……まあいいや。




