164、最後
「メマリーさん、一刻も早く戻ってくださいまし! どう考えても様子が変ですわよ!」
「確かにルーランさんのおっしゃる通りです。すぐにその場から離脱すべきだと思われます」
ルーランとアロエが共にメマリーに呼びかけるも、彼女はそれどころではなさそうな状態だった。
「うぎょおおお擬態を解除したのはいいけどどんどん両壁がせまってくるうううう! このままだと食われちまうぞ!」
「なにか使える魔法は無いの、ルーラン!?」
「んなこと言っても俺の家系魔法は催眠呪文だけなんだよ! んなもん壁相手に唱えてもまったくの無意味だろーが!」
「確かに……」
その場にいる誰もが彼女の説明に納得するも、だからといってどうしてやることも出来なかった。
「んもー! メマリー! あんたのイカロボの触手を束ねて腕を作りなさい! そうすれば多少は持ちこたえるはずよ!」
「なるほど、その手があったか!」
私の咄嗟のひらめきを聞いたメマリーは、言われた通りに二本の即席手を生み出し、左右に展開する。見る見るうちに迫りくる両壁に対し手を当て、寸でのところで何とか圧死を免れた。
「やった! 今のうちに脱出ポッドを射出して逃げなさい!」
「いんや、そいつは無理な話だわ。この機体にはあんなチンケなもんは積んでねえ。負けを認めたようなもんでみっともねえしな」
なんとメマリーがとんでもないことを暴露したため、私はひっくり返りそうになった。
「なんですって!? あんたそれマジ!? 一応操縦者の義務じゃないのよ!」
「フッ、悪役令嬢のくせにまともなこと言うじゃねえか、センナさんよ。俺みたいな番張ってる不良にはそんな正論は通じないんだよ。じゃあな、短い間だったがけっこう楽しかったぜ。あばよ!」
「おいちょっと待てえええええええええ!」
通話の最中にモニター画面に映し出された風景自体がゆがんでいく。どうやらドローンも両壁の間に挟まれたらしい。ミシミシという音が断末魔のように響き渡る。
「メマリイイイイイイイ!」
バラバラに四散する【タイオゼット】の映像が映った直後に爆発音が轟いた。
すみませんがしばらく更新が不規則になります!では、また!




