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160、適任者

 というわけで、しょっちゅう叫び出す情緒不安定な、というか猛獣のごときメマリーになんとかかんとか今までの流れと現状を説明し、偵察役が必要なことをわからせた。僕はもう疲れたよ、パト○ッシュ……。


「なるほど、そういうことかい。確かにこの辺りはいやに静かな割に壁もずっと薄いしなんか妙だとは思っていたところだ。ひょっとしたらこの先罠か待ち伏せかなんかあるかもしれねえな」


「やーっと理解してくれたわね。まあそんなわけで、もしよかったら……」


「ケッ、だーれがてめえの頼みなんか聞いてやるかよボケェ! 昨日の恨みは忘れちゃいねえぞ!」


 こいつ、人が下出に出てやればすぐ攻撃的になるな……チッ。


「そもそもあれってあんたが私の半熟卵レタスサバサンドをあの子からカツアゲしたのが事の始まりだし……」


「別にてめえのサンドイッチじゃねぇだろうが! うがあああああああああああ!」


 早くも奴は話の通じないバーサーカーモードになってしまい、今までの苦労が元の木阿弥と化した。


「お嬢様、悪いですがここは引っ込んでおられた方が話が進むかと思われます」


「ううっ、悔しいけど今回ばかりは確かにそうかもしれないわね……グスン」


 残念ながらネゴシエーター失格の烙印を自他ともに押されて、私はすごすごと引き下がった。まあ、ここはもっと適任者にバトンタッチした方がスムーズに事が運びそうだし。


「ではメマリーさん、センナさんからの依頼ではなくて私からの依頼ではどうですか?」


「えっ、サ、サラジェンちゃんからのだって!?」


 魔動力通話の話し相手が変わった途端、明らかにその場の空気が一変した。


「ええ、この場はあなたの力を見込んで、是非偵察をお願いしたいのです。擬態が得意な【タイオゼット】であれば、かなり先までいけるはずです。現に今まで幾多の危機を乗り越えてこられたわけですから。これはあなたにしか出来ない仕事なんです」


 すげえ、殺し文句のオンパレードで攻めているぞ、このメスガキ。


「うう……」


 メマリーの牙城は早くも陥落寸前だった。

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