143、三体その2
「ほら、あそこを見てくださいお嬢様」
「はいはい……ってええええええええ!?」
毎度のことながらアロエに急かされて仕方なくモニターを覗き見るも、なんか肉で出来た座布団みたいに押し潰れた三体の巨大子宮に目を奪われ、すっかり目が冴えた。
「ちょっと誰がやったのよあれ!? なんか私の魔法によく似た技食らったっぽいけど」
「だから先ほども言った通りお嬢様自身が魔法を詠唱して攻撃されたんですよ。いやはや、すごい出力でした」
「……私が!?」
予期せぬ返答に心が顎に不意打ちを受けたボクサーの脳みそのごとく震えていた。
「はい。おかげであいつらはさっきからあそこに昆虫採集の標本箱内のセミみたいなことになっております。さて、どうしますか?」
「……」
毎度の質問に、私は深呼吸して脳み新鮮な酸素を送り込むと爆速で思考をまとめた。どうやら私が寝ぼけて射出した重力魔法はあの激マズなんたらかんたらフラペチーノの効果のおかげか普段よりも切れが良く、溜めも要らないほどの優れものである様子だ。これなら使いようによってはここのクソ子宮どもを全滅することが可能かもしれない。
しかしいくらパワーアップしたとはいえ、これだけの数を相手にすれば再びガス欠になるのは目に見えている。ここはもっと賢い運用方法を考えなければ元の木阿弥だ。以上より導き出された最適解は……。
「アロエ、さっきのペットボトルはまだある!?」
「はい、1本は当然空っぽですが、まだ後2本ございます」
「よーし、じゃあそのうち1本を、もったいないけどドローンにぶら下げて、【ザジテン】のコックピット内までデリバリーしてやって!」
「なるほど、ということは……」
「ええ、あの『カウントダウンTVSEXNTRオホ声お嬢様』に飲ませて復活させるのよ! 可及的速やかに!」
私はビシッと人差し指をモニターに映る広間の右端に突きつける。もはや床が見えないほどピンクのゲス野郎どもが密集したその下に眠る相棒(暫定)に向けて。




