115、蜘蛛
「お嬢様、お気づきになられましたか? そうです、あれは明らかに先に行ったはずのOBSです」
どうやら子宮たちの下敷きになっているのは、今朝スタート地点のホールで見かけた蜘蛛型の機体のようだった。ピクリとも動かず倒れており、操縦者の生死すら不明だ。結構大型のOBSだが、子宮の海で覆い隠されていたため、今までわからなかったのだ。
「なんであんなところでのんきにお昼寝なんかしてるのよ!? 昼飯でも食べ過ぎたってわけ? 私だって寝不足で今にも寝てしまいたいのに!」
「ですから今それをやると皆ゴートゥーヘルしかねず、わざわざアノーロさんとやらを探さなくても直接ホーリンさんと再会することになりますので我慢してください。ただ、一つだけはっきり言えることは、無策であの桃色空間に突っ込むと、あのスパイダーマンの二の舞となりかねないということです」
アロエはそれこそテイレシアスのように厳粛に予言の神託を行った。
「そ、そのようね……でも、一体何であんなむごい状態になってんのよ!? あのぷにぷにたちってそんなに強いわけ?」
「あの蜘蛛型OBSの操縦者は確かサラジェンという方でしたが、糸を操る魔法を使う猛者で、下馬評でも結構人気でしたわよ。先ほどの妾の火球の嵐も見事にかわしておられましたし、そう簡単にやられるとは思いませんが……」
ルーランも不安そうにつぶやく。怒り心頭の時も意外と冷静に観察していたんだな、こいつ。
『タダ、全テノOBSガヤラレタワケデハナイトコロカラ考エルニ、何ラカノ方法デ通リヌケルノハ可能ダト思ワレマス』
ゲロやら何やらにまみれながらも、久々に脳みそくんが貴重な進言をする。確かにあのイカ飯もどきたちが無敵ならば、今頃ここら辺の床は全てOBSで出来た絨毯になっていてもおかしくないはずだ。
「うーむ……何か抜け道でもあるのかしらね? ここってどう見ても一本道だけど……」
「マップ上ではそんなものは確認できませんね、お嬢様……って、あれは?」
地図を確認していたアロエが、顔を上げてふいに大声を出した。




