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トワイライト・クライシス  作者: 幸田 績
Phase:04 動き出した歯車
80/106

Side B - Part 5 教養系チャラ男

Phase:04 - Side B "Kimitaka"

「まず、こういう時に贈り物をするのは一発レッドカード。モノでもコトでも絶・対・ダメ! ご機嫌取りなのが見え見えですからね」


「わかる。ウチ、そんな安い女じゃないんですけど! って感じ」


「次に、相手の話をさえぎらない。認識が違ってたり、一方的に責められたりするとつい反論したくなりますが、ここはグッとこらえて。言い返すのはイエローカードです。まずは聞き手に徹してください」


「女は共感を求める、とはよく言ったものだ。流華おばさんは特にその傾向が強い。話を聞かない相手には一言が三言になって返ってくる」


「だったら、なおさら反論NGだな。最後はやっぱり、正直であること。隠し事をした時点ですでに相手を裏切ってんですから、せめて説明ぐらいはホントのこと言いましょ」


「そう、そういうこと! あたしもまだ納得してないんだからね!」



 水原を含めた女子三人がみんなうなずき、りょーちんに同意を示す。それもそのはず、この人の本性はサッカー以外もレベル高い教養系チャラ男だからな。

 オレが思うに、りょーちんには人の気持ちを推しはかる天才的なセンスがある。それが刺さった女の人たちから理想のイケメンと見なされるようになってった結果、生まれと見た目の相乗効果でアレな印象が独り歩きしてるんだ。


 だからオレ、りょーちんに対する「下心ありまくりのクズ野郎」って評価には否定的なんだよね。やましいことあったら日本代表に呼ばれないし、さっきのミラクルシュート二連発――遊びまくってるヤツの蹴りじゃない。



「あと、相手の気持ちを知ると、自分の意見にも少なからず変化があるはず。その時生じた想いを伝えることができれば、理解されなくとも決断を尊重してくれる日はきっと来ますよ」


「おお……! すごく勉強になりました、ありがとうございます!」


「現実に即した、大変実用的な講義だった。だが、世の中にはそれでも『あかんことはあきまへん』と突っぱねるしたたかな女性もいる」


「そうなったらもうあきらめの一手でしょ。どんなコなんです? そのラスボス級女子」


「笑顔でぶぶ漬けを勧めてくる私の妻だよ」



 うわ、マジか! 徳永さん、はんなり系奥さんと結婚してんだ……やっぱすごい人だわ、いろんな意味で。

 そんな感想を思い浮かべてたら、最推しもまったく同じことを考えてたらしくて、オレはこのあと必死で笑いをこらえなきゃいけなくなった。



「京都美人か……攻略難易度ヤバそうなのにすごいなハヤさん」


「キミに紹介してもいいが、初手で『粗茶ですが』と言って宇治抹茶出してくるぞ。しかしまあ、こんなガサツでケチな九州男児のどこを気に入ってくれたのやら」


「粗野だなんてとんでもない! 僕はそう思いませんよ。着物も上品でよくお似合いじゃないですか。それ、奥様セレクトなんです?」


「分かるか一徹君、これは呉服屋の娘だった彼女がくれたものだ。洋装も嫌いではないんだが、毎朝スーツで出勤しようとすると『うちの知っとる隼人はんやあらへん』と嘆くレベルの和装オタクで――」


『マスターも混ざらなくていいのか?』


「どのコの話かわかんなくなりそうだからやめとく」



 オレたちは談笑しながら廊下を抜け、生徒用の昇降口が見える位置までやってきた。だいぶ手前から誰かの話し声が聞こえてはいたけど、近づくにつれてそれが激しい口論だったことに気づく。

 男が女の人を責めてるんじゃない。相手のほうが高圧的で、男は何か無理強いされてて、そこにちょっと声の変な誰かが止めに入りめ事になっている。



「ヤメロ! 触ルナ、近ヅクナ!」


「おとなしくしなさい! 彼に会えなくてもいいのですか!」


「嫌、だ……! 来るなっ、来るなぁあああ!」



 何かにおびえているような絶叫に、りょーちんがいち早く飛び出した。手代木てしろぎマネも一気にみんなを抜き去り、校舎外に出る。

 前を行く大人たちが駆け出したのに続いて、オレたちもその背中を追った。

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