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トワイライト・クライシス  作者: 幸田 績
Phase:04 動き出した歯車
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Side B - Part 4 ヒューマノイド副会長

Phase:04 - Side B "Kimitaka"

 あの人……確か、入学式にいたヒューマノイドの先輩だよな。生徒会副会長で、新入生代表の水原に祝辞を贈って――さっきは血まみれのかさを差してた。

 足音どころか気配ひとつしなかったけど、いつからここに?



『うわぁ、びっくりした!』


「俺はおまえの大声にびっくりだよ。マドモアゼル、帰りはどこ通ればいい?」


「今、わたしが下りてきた階段から音楽棟の二階に上がれます。一番上に着いたら右折し、進路指導室の前を通過するとB棟の廊下につながりますので、そのまま道なりに進んでください」


「ふんふん、それから?」


「突き当たりの少し手前まで行けば、昇降口から外へ出られます。皆さん、どうぞお気をつけて」



 手代木てしろぎマネの叫びにも動じず、一ノ瀬先輩は穏やかな笑みを浮かべている。もしかして、この人も徳永さんの仲間なのか?

 一度疑いを持ってしまうと、親切に道案内をしてくれてるはずの先輩が急に怖く見えてきた。人間離れした美しさ……人間そっくりだけどヒトじゃないって事実が、この人を見る目をゆがめてしまう。



「失礼。その道は通れるのか? 私の認識が正しければ、そのルートは先ほど大規模な()()()()が行われたエリアのはずだが」


「大丈夫ですよ、水原さん。わたしの開発元であるアステラシア社が、すでに特殊清掃を終えて通れるようになっています。先ほど実際に目で見て確認しましたので、間違いありません」


「俺たちがピロティでってる間に片したのか。にしても仕事速いな」


「ふふっ、ありがとうございます。一般家庭向けのハウスクリーニングも承っていますので、よろしければぜひご検討くださいね。こちら、パンフレットのPDFです」



 オレの不安をよそに、先輩は水原の鋭いツッコミへ適切な答えを返し、りょーちんへ商魂たくましく自社のサービスを売り込んでいる。

 先輩に搭載されてるのも、完全自律型AIか? だとしたら、この人の言ってることってホントに信用できんのかな。

 や、でも、それって一ノ瀬先輩が人間だったとしても同じじゃね? 疑い始めたらよく知ってる川岸と水原、りょーちんぐらいしか信じられないぞオレ。



「や~ん、マキにゃんパイセンやっさし~い! 大好きちゅっちゅ!」


「きゃっ! あの、ななみんさん……くすぐったい、です」



 つい考え込んでしまったその時、工藤の甘ったるい声がホールに響いた。見ると、金髪ギャルが警戒心のかけらもなく先輩に抱きついて頬ずりしている。

 げえっ、何してんだお前!? 血まみれの傘持ってニコニコしてるヒューマノイドにノーガードで抱きつくとか無防備すぎだろ!

 あと、その人一応(年齢設定が)先輩! 年上! 上級生――!



「案内ありがとう、一ノ瀬君。ほかに我々が注意すべきことはあるかな」


「か……勝手ながら、避難時に取り残された皆さんのお荷物は、生徒会執行部が回収しました。昇降口前にまとめて置いてありますので、ご確認ください」



 徳永さんの問いかけに応じる一ノ瀬先輩は、息も絶え絶えだ。見かねたりょーちんが「おら、先輩に迷惑かけんな」と言って、工藤を羽交い締めにし先輩から引っぺがした。

 おまっ――「きゃー、りょうちゃんのエッチー!」じゃねーよ、最初から不可抗力を装ったボディタッチが目的だったのか!? 代われ、オレとそのポジション代わってくれぇぇぇぇぇ!



『では、俺たちはこれで失礼する。世話になった』


「はい。今度はぜひ、日没前にお越しください」



 どうにかカオス化する事態を収め、オレたちは一ノ瀬先輩に見送られながら連れ立って階段の上を目指した。徳永さんを先頭に、川岸と親父さん、水原、工藤と続いて、最後尾にオレとりょーちん、手代木マネが並ぶ。

 おいおい、これ絶好の単独インタビューチャンスじゃん! どうしよう? どうしよう! 何からこう? えっと、まずは……



「あのっ、百戦錬磨で経験豊富なりょーちんに、ぜひお伺いしたいんですが」


「お、ずいぶん俺のこと買ってくれますねテツさん。どうぞどうぞ」


「その……ズバリ、気が強い女性に謝る時はどうすればいいでしょうか!」


「サッカーの話じゃないんか――い!」



 どう切り出そうか迷っているうちに、川岸の親父さんから質問が飛んだ。いや、よりにもよってりょーちんにそれ訊く? というかNGネタじゃないのそれ!?

 ほら、マネージャーも『困りますねえ川岸次長』って言ってる。フロントの社員が選手にギリギリの質問しちゃダメっしょ。立派なハラスメントですよそういうの!



「だって、おたくのマスターこういう話題に強そうだから……」


「さっきの話を奥さんにもするってことでしょ? お気の毒ですが、俺にも〝道〟は見えません。こういうのは奇をてらわず、真っ向からぶつかったほうがいいですよ」


「そんなぁ!」



 階段を上り切って廊下を右に曲がると、社会科と音楽科の準備室に続いて、一ノ瀬先輩が言ったとおり【進路指導室】の看板が見えた。

 そこをなんとか! と粘る川岸の親父さんに対し、りょーちんは「あくまで俺の持論ですけど」と前置きして、廊下を歩きながら話し始めた。

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