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第二十六話 勇者パーティー



「どうしてトウヤは、この喫茶店で王様みたいな待遇を受けているのだ」


 それは前にうっかり生徒会長の名前を出してしまったからである。

 やめてくれというほどのVIP待遇で、一番いい席に一人で座らされて、注文したのより二回りくらい豪華なメニューが出てきた。

 そんなサービスは名前を出した最初の一度きりかと勘違いしていたが、次からも普通にVIP待遇になってしまい困っているところだ。


「さあな。客が少ないから店側も暇なんだろ」


「むしろ、この席以外は大変混みあっているように見えるな」


「それより話ってなんだ。俺はこう見えて忙しいんだぜ」


「授業も出ないし、お前に相手してもらえずに荒れてるアンナプルナを私たちに押し付けているのに忙しいことなどあるのか。まあいい。私は今、自主トレとして4階層を一人で回っているのだ」


「それはまさか授業でダンジョンに行った後に、一人きりで4階のスケルトンを倒して回ってるってことか。なんのためにそんなことをするんだ」


 さすがに経験値が悪すぎるだろう。

 そんな場所ではレベル15近いサクヤは、1%以下しか入って来ないはずだ。


「トレーニングのためだ」


「まあ、なにを趣味にするかはその人の自由だよな」


 俺も似たような事はしていたが、ビルドを完成させた後だったし、スキルを使ってくるスケルトン相手に、距離による確定反撃を研究するためだった。

 ほとんど棒立ちの低級スケルトンにやったのでは得るものがない。


「カカシを相手にしていたのでは上手くなれないような気がするのだ」


 回数を繰り返したほうがいいと思うが、そういう理由ならわからなくもない。

 特に攻撃した後の反応によって技を使い分けるなら、実戦で使うしかないからな。

 とはいえ、そんなことを練習する段階の腕前でもない。


「まさか、お守りに付き合えとかそういう話なのか」


「そうではない。私も個人練習に時間を使いたいから、パーティーでの狩りはしばらくしなくてもいいのではないかと相談しに来たのだ。トウヤのおかげで私たちはもう期末考査をクリアできるレベルになった。だから周りの手伝いと個人練習に集中したいのだ」


 俺としてはその提案は渡りに船だ。

 文句などあろうはずもない。


「俺はそれでいいと思うぜ」


 三人ともレベル18になっているし、カリナには希少級の装備が揃っている。

 三人の誰がいても中層で安定した狩りができるだろう。

 少し手伝っただけで、クラスの平均レベルはかなり上がるに違いない。

 俺もフィールドワープを手に入れたから、やらなければならないことは沢山ある。


 五次職を開放させるのとどちらを優先すべきか迷うが、すでに学園ダンジョンでは格下狩りになってしまった。

 レベルは32、ジョブレベルは忍者が7、将軍が6である。

 五次職解放にこだわりすぎても、余計な時間を使うだけだ。




 自由になる時間が増えると思ってサクヤの提案に乗ったのに、それは俺の勘違いだったようである。

 いや、今日だけは仕方ないが、明日からはこんなボランティア活動は断る。


「マジかよ。レベル上げを手伝ってくれるってのはお前なのかよ。道化に手伝ってもらうなんて自信を喪失しちまうぜ」


 俺が今日の担当を任されたのは、一人だけレベルが高いシモンを抜いたセリオスパーティーである。

 しばらく見ない間に、セリオスはかなり立派に成長していた。

 モンスターとの戦いにも慣れて、ちゃんと攻撃が当たるようになっている。


 それにぶっぱするだけの立ち回りからも卒業して、相手を怯ませてからスキルを発動するようになっていた。

 しかしそれでも、自分で相手を怯ませているわけではない。

 かなりシノブのバクスタに頼ったような戦い方だった。


 それでも何か問題があるというわけではない。

 システム的にはそれでも十分にパーティーとして機能するし、特別効率が悪くなるという事もない。

 それでいつも来ている階層だという12階にやってきた。


「12階ね。もっと下まで行けるんじゃないのか」


「MP切れが怖くてね」


 なるほど。

 13階のキラーウルフとゼニススパイダーは足が速いからな。


「それなら13階を飛ばして14階のオークに行けばいい。そこなら、シノブがいたら逃げるのも難しくないはずだ」


「それはいい情報を聞いたな。助かるよ」


「おいおいおいおい、どうして道化が勇者と同じスキルを使ってんだよ」


「あっ、これは似てるけど違う技だよ。ま、紛らわしいよな」


 つい癖で将軍の持つ全聖剣技マスタリのスキルを放っていた。

 カリナたちは何も知らないから、いいやいいやでなんでも見せてしまっている悪い癖が出た。

 そしてナイフを無意識に回していたことを、シノブの視線で気付いてすぐにやめた。

 どうにもやりにくいな。


「まあそうだよな。そんじゃ今から14階に行ってみようぜ。もうこの階層は飽き飽きだ」


 ダンの方も目の前の敵しか見えていなかったころに比べたら、格段に成長しているのが見て取れる。

 いっぱしにタンクとしてヘイトを安定させるようになっていた。

 それだけで周りにとっては攻撃しやすさが段違いになる。


 俺たちは階段を二つ下って14階層に出た。

 ここまでくると周りの生徒はかなり減って、狩場はガラガラだ。

 途中で男子を前線に立たせて、あくびなんかしているアンナプルナとすれ違っただけだ。


「それにしても道化は成長したな。レンジャーはもうやめたのか」


「そうだよ。今は剣士だ」


 金属鎧を身につけて、両手剣を片手持ちにするスタイルに変わっている。

 左手にナイフを持っているのは変わらないが、メインはやや大ぶりなハヤブサの剣だ。


「それもいい装備ね」


「ああ、ここならオーク肉が落ちるから稼げるんだよ」


 シノブに言われて、くるしい言い訳をする。

 もちろんこんな階層に通ったところで、遺物級や伝説級の武器など買えるはずがない。

 武器はレアリティが一つ変わっただけで、かなり攻撃力に差が出る。


「たしかに、やれないこともないけどよ。やたら敵がタフだぜ」


「ガードされてるだけだ」


「トウヤはちゃんと倒してる」


「相変わらず道化は当てるのだけはうめーな」


 俺はキャンセルも使わずに、ひたすら強攻撃だけを入れ続ける。

 シノブがそれを見て真似しようとしていた。

 目押しと呼ばれるテクニックで、キャンセルなんかよりよっぽど難易度が高いが、後ろを取れるシノブが使えるようになれば、かなり火力が強化されるだろう。


 セリオスだって最終的にはボスに挑んでくれるだろうから、このパーティーが強くなって困ることはない。

 キャンセルも後期になれば授業でも教わったはずだが、シノブはすでに使っている。

 敵と向き合いになる必要がないから、それだけ余裕があるのだろう。



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