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6.裏切者に気づくには

突然始まった尋問。

それは私にとって予想外の言葉とともに始まった。


「伯爵が裏切った?それは、どの伯爵でしょう?」


「今回、敵国によって殺害された伯爵だ。国境を守る大事な役目を担っていたため一度国の方でも補助するべきだと考え手のものを入れたが、予想外なことに敵国とつながっていたことが発覚した」


「つながっていたのに殺されてしまったんですか?二重スパイのようなことをしていてそれがバレたというわけでもないんですよね?」


「ああ。そもそも裏切り行為は国も含めて誰も知らなかった。だからこそ聞きたい。子爵は、どのようにして伯爵の裏切りに気がついた?」


今回敵軍の集中攻撃を受けて帰らぬ人となってしまった、国境の守りを任せられていた伯爵。

それが裏切っていたなんて、そうやすやすと信じられる話ではない。

そもそも相当な信認を置かれていたからこそ国境の守りを任せられることになったわけだし、ずっと国境の守りをしていたからこそ敵国からの被害も大きく受けていてその恨みはかなり積もっているはず。

それでもなお裏切るなんて、相当この国との間に軋轢を生んでいたか、もしくはそれまでの恨みなど気にならない程のうまみを提示されたか。そのどちらかくらいしか考えられない。


そのうえで、私は伯爵の裏切りを知っていたと疑われる形で尋問を受けることになった。

これには当然ない頭の理由があるんだろうけど、私には分からない。もしかしたらクソ父親が関わって何かをしていたのかもしれないけど、それだったら本人がいないから確かめようもない。

ということで、


「いえ。知りませんでした」


私にはこうして素直に答えることしかできない。

例え向こうが納得してくれないにしても、私にはこれ以外の答えようがないんだから。


とは言っても、協力はしたい。

同じ様な裏切り者が他にもいる可能性はあるし、少しでも助けになるなら情報も私の頭も出し惜しみはしない。


「そういえば伯爵は、此度の戦で精鋭を連れていたという話がありましたね」


「ん?ああ、それがどうかしたか?」


「今回裏切るつもりだったから、その精鋭を連れてきたのでしょうか?」


「…………なるほど?」


裏切っていたのであれば、どこか決定的なタイミングでこちらに刃を向けることによって向こうに自分が有用だと示すような形で決定的な裏切りをするはず。

となると、今回伯爵が精鋭を連れてきていたらしいという話があったことは納得ができるもの。

だから、


「なるほどな。つまり今回奇術公と言う大物を呼び出しそれと対等、もしくはそこまではいかないにしても守り切るだけの力があると見せかけることによってこちらの信頼をより確保しようとしていたのか。さらには、頭脳によるものとすると不自然に思われる可能性があるから、連れてきていた精鋭たちの力だということにすれば疑われにくい。もしかしたらその精鋭を称賛するために王宮に呼び出しをさせ、その連れてきた精鋭たちで陛下の首を狙うという動きを考えていた可能性もあるな。もしそうだとすれば、かなり向こうとの連携をしていたことになるか」


…………ん?なんて?

私は今回の戦いで裏切ろうとしていたという話をしたつもりだったんだけど、何か別の方向に勘違いされてない?

確信した、みたいな顔をされてるし完全に誤解しちゃってるよ。


でも、否定しきれない。

尋問してきた人をわざわざ不快にさせる必要もないしね。疑われている以上向こうの方が立場は上だし、不快な思いをさせたら私の立場が不利になり変えない。

だから私は、それに全力で乗っかる!


「もし陛下がお褒めの言葉をかけようと考えて伯爵やその配下の精鋭を王宮に呼び出すということまで計算に入れていたのであれば、それは伯爵だけで計画したものではない可能性が高いですね」


「ふむ。そうか。つまり、そこにも奇術公の息がかかっていた可能性が高いと言うことだな?となると、あの戦場で奇術公が伯爵に牙をむくまでは完全に伯爵は奇術公の掌の上だったというわけか」


どんどん私の予想外の方向に進んで言ってるけど、尋問官がそれで気を良くしてくれるなら良し!

たぶんこの人は、本当に鑑定とかの力を持ってる人なら(・妄想 77)とか見えるんじゃないかな?

残念ながら私が持ってるものは適当なことしか書かないまがい物だから、



・考察 68



だけど。

ただ、妄想好きな人ならある程度乗せて気分良くさせる方法は知ってる。こういう人の場合、あえて話を広げていった方が、自分がいろんな分野に及ぶ完璧な考察ができたとか考えるから、他の要素を出していけばいい。

ただ、私としてはそうしたいところなんだけど気になるところはさすがに指摘せざるを得ず、


「奇術公が伯爵を攻撃し始めた時からは計画通りではないと言う風にお考えなのですか?」


「ハハハッ!さすがにそうでないことは分かる。こちらにはそれくらい分かっているとも」


どう考えても、伯爵を奇術公が仕留めるところまで計画通りだった気がしてしまう。伯爵なんて邪魔なだけだし、内通できていると思わせていた方が油断するはず。

精鋭まで持ってこさせたところはおかしい気もするけど、それらもまとめて今回で片づけられるというのは将来の事を考えると悪い事じゃない。

だから私には、今回の伯爵が仕留められたというところまで奇術公の作戦通り。つまり、伯爵に陛下を攻撃させるとかこっちの軍に大きな被害を出させるとかそういう伯爵に大きな功績を持たせるような動きは最初からさせるつもりがなかったんじゃないかと思えてしまう。


ただ、私のそんな意見は今はどうでもいい事。

とりあえず尋問官が満足してくれればこれで尋問は終わりと言うことになって、


「うむ。良い話ができた。もう言って良いぞ。色々報奨も後で持たせよう」


「は、はぁ。ありがとうございます?」


そのまま解放された。

これで良いのか尋問官!?尋問って、普通は調書を作成して上に提出して、その報告書で問題ないと上が判断してから終わる物じゃないの!?なんで尋問官の独断で終わってしまうわけ!?

予想より早く解放してもらえたんだから私に文句はないけど、我が国の尋問がこれで良いのか不安だわ…………。




《side尋問官》


「どうして奇術公がああして伯爵の始末に動いたか」


それは、子爵が攻撃した何かしらが奇術公にとって大事な物であったからに決まっている。

奇術公はそれが攻撃されたから、全てこちらに筒抜けなのではないかと恐れて内通者だった伯爵の始末に動いたんだ。わざわざ奇術公の指揮していた本部隊の1つが動いて子爵の前に現れ、しかも子爵には何もせずに撤退したのだからそれは明白。我々もそのくらいは分かるのだよ、子爵。侮らないでもらいたいな。


…………いや、それも無理のない話か。子爵は伯爵の裏切りの予兆を感じ取って、それを奇術公に始末させるためにあのような手を取ったのだからな。

国の人間が1人として気付かなかったのに子爵は気づいて見せたのだから、その力の差でこちらを侮るなと言うのも無理な話か。


「ただの情報分析によって理解したわけではないだろう。おそらく手の者に相当情報収集が得意な暗部がいるな?」





《sideムク・パール》


「結局色々と貰えてウハウハだったわね。しばらく我が家の領地は安泰と言ったところかしら?」


「いえ、それがですね…………少々問題が起きるのではないかと近隣の領主様などの間で噂になっておりまして」


「へ?なんで?」


「どこから出てきたのかは分かりませんが、最近急激に他領からの避難民が増えているようなのです。子爵家の領地もその例にもれず、厳しい状況となっております。子爵領内でもすでに数百名規模でそうした人間が確認されており、お嬢様には戻り次第すぐに対応策を検討していただく必要がございます」


まさかの内政ターンが来た。

私、戦争で活躍して褒美まで貰ったばっかりなのよ!?なんでまた頭を悩ませる問題に対応しないといけないのかしら。

やってられないわ…………

いっそのこと、避難民全員監獄にでもぶち込んでやろうかしら。伯爵が裏切ってたわけだし、他国の息がかかった人間がそういう中に潜んでるかもしれないとか言っておけば国も許してくれるんじゃないかしら?

68という数字の力!

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正直に「見た目が見窄らしい割に妙に指揮権が強そうな人物が旗の側にいたので、一点集中で撃破を狙ったらこうなりました」と言っても、見る目があったから故かと感心されて結局同じ結末ですものねえ……() こうい…
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