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5.軍略を持つ者

《side奇術公》


「閣下。申し訳ありません。私の独断で動いてしまいました」


「構わん。もしあれを放っていたら、爺やがやられていたかもしれん。感謝しているくらいだぞ」


よもや、こちらの情報を抜かれているとは思わなかった。

奇術公と言われるこの我の、本当の頭脳。我が考えたことになっているすべての作戦を考えていた天才的な頭脳を持つ軍師。それが、敵に補足されて狙撃されそうになるなど予想すらしていなかった。

わざわざ本陣から離した位置に置き我との関係などないように見せていたというのに、逆にそれがあだとなり救援が遅くなってしまった。こうして部下が独断で動いてくれていなければ、手遅れになっていたやも知れぬ。

本当に我は、部下に恵まれているな。


「爺やは何か言っていたか?一先ず情報が抜かれていたことから考えて、内通者を先に潰すことにしたが」


「ここでこちら側につくにあたり内通者は腕の良い配下を多く連れてきているでしょうから、仕留めることに熱くなりすぎて被害をいたずらに増やすことがないように、とのことです」


「なるほど。ならば、爺やの考えのためにも被害は極力抑えるようにせねばな。もちろん、仕留めることを諦めるつもりはないが…………この戦いを、敗北で終わらせるつもりはない。確実に戦果を持ち帰るぞ」


「ハッ!閣下のお心のままに」





《sideムク・パール》


だいたい3部隊、つまり貴族らしき相手を3人ほど始末させてもらった。

もちろん私が直接手にかけたわけではないけど、この功績は子爵家のものになるはず。

想定通り全員愚かだったから、倒すのも簡単。ここでその指揮官の首を取ってその後武器を置いて逃げるなら命は助けてあげると武器をちらつかせて脅せば敵の兵士が勝手に終わらせてくれたわ。


兵の数も考えれば男爵家程度だとは思うんだけど、それでも3人首を取れたのなら十分。

子爵家が健在だということを示すために必要な功績は得られたと思うわ。

ただ、これ以上は動きの悪い部隊がいないから功績を立てるのは難しそうね。

と、思ったんだけど、


「パール子爵ばかりに手柄を取らせてたまるかぁぁ!!!」

「続けぇぇ!!!敵を首を取るぞぉぉぉ!!!」


左翼にいる私と同格の子爵、そしてさらに1つ上の伯爵などが私の姿を見て負けていられないと動き出した。私と違って彼らで協力しているからそれなりの数にはなるんだけど、それでもこれ以上の功績を求めるとなると右側に集まった敵に攻撃を仕掛けることになる。

幾らまだ向こうも混乱していそうだとはいえ、敵はひとまとまりになっているうえにその数も多い。さらに言えば、私がチャンスだと感じた時ほどの混乱はもうない。


「さすがにこっちみたいに簡単にはいかないと思うけど、大丈夫かしら?」


「さぁ。生き残れたらいいって程度に思うな」


私たちはこれで大丈夫なのかと思うけど、私たちの成功を見ていしまったためか自信満々な様子で貴族たいちは攻めていく。

そしてまだ混乱の残る敵を圧倒する形で戦いを始められたため余計に調子に乗り、一部の男爵なども加わる形で戦いは激化。

ただそこから時間が経ち敵が落ち着けば落ち着くほど、敵の内側に行けば行くほど敵はその強さを増し、次第に熱はだんだんと下がっていく。


「私たちが参加してもうまみはなさそうね」


「だな。もう完全に向こうは迎え撃つ構えができてる。俺たちがどこかに回り込もうとしても奇襲は成立しないだろうな」


男爵よりは持ってきた兵数は多いけど、それでも言い換えれば男爵よりは多いという程度。加勢しても大して意味はないし、どこかに奇襲なんてことをやろうとするにもすでに向こうが想定しているだろうから不可能。

私たちにできることは、まだ戦いに参加せず何もできないまま残っている貴族たちと合流して何かあった時のために備える事。


ただ、その供えていた何かも特に起こることはなく、1時間もしない間に敵は撤退していった。

防衛成功、と言う風に考えてよさそうね。

ただもちろんそれなりに代償も支払っていて、


「伯爵様がやられたそうだ」


「伯爵様って、あの国境付近に領地を持つ?」


「あの人がやられたら国境の守りはどうなるんだよ!」


噂として伝わってくるのは、私より1つ上の爵位である伯爵を持つ人の死亡。敵が集まってきていたこちらの左翼で指揮を執っていたため、その激しい攻撃に耐えられなかったのだとか。

この戦争に参加している伯爵は5人くらいいるんだけど、その中でも国境沿いに領地を持つ他と比べると重要な役割を果たしている伯爵様がやられてしまったとのこと。


今後の防衛に大きな影響が出るんじゃないかと危惧する声が聞こえてくるわね。

ついでに、敵の狙いがその伯爵だったことも分かる。わざわざ被害が出ること間違いなしな強引な陣形の変更も迅速な撤退も、国境の守りに重要な伯爵を倒すことが戦争の目的だったと考えれば納得がいく。


「奇術公ってこんなに厄介なのね。自分が出てくることで本気で今回こちらを攻略するつもりだと思わせておいて、伯爵をつぶすという堅実な一手を取ってきた。これは、こちらがどう思うかを完全に読んでないとなかなかできないわよ?」


「そうだよなぁ…………ただ、今回伯爵を殺害して国境の守りを弱くしたってことは、本命は次ってことだよな?また戦わなきゃいけないんだぞ」


「うげぇ。勘弁してほしいわ。どうせならこっちから攻めてやった方が被害は少なくて済むんじゃないかしら?」


「上層部は本気でそういうこと言いだしそうだな。不吉だからやめてくれ。奇術公は防衛だってうまいんだぞ」


今回こちら側が受けた人的被害は大きい。

だからこそ、ここで攻撃を仕掛けるなんて言うことは奇術公であっても予想していないはず。奇襲すれば一定以上の効果を得られると考えたりすれば、私たちはこれから攻撃のために動いて行くことになる。

そうなれば今回見たいな楽な戦いをさせてもらえるはずもなく、私たちはかなりの被害を受ける可能性が高い。


ということで変な指示が来ることを危惧していたわけだけど、幸いなことにそれはなし。

さすがにそれをやる権限は公爵にも派遣されてきた軍人にもないらしく、やりたそうな雰囲気は出しつつもここまでで帰ることになった。


そこからしばらくすると論功行賞とかに呼ばれるわけだけど、


「なんで私は王宮に呼ばれたのかしら?」


「本当に思い当たることはないのですか?どう考えても、お嬢様が何かしなければこのようなことにはならないと思うのですが」


他の子爵や男爵、それに伯爵と言った貴族は公爵様に呼ばれて賞賛されたり叱責されたり、そして様々な物を与えられたり取り上げられたりと言うことをしていた。

でも、そんな中私は例外的に王宮まで呼び出されている。

こんなことは公爵様か侯爵様か、もしくはかなりの戦果を挙げた人間にしか怒りえないことだと思う。けど、私はただの子爵でしかも右翼にいた人達みたいに激戦の中にいたわけではないからそれほど功績を上げたというわけでもない。

だからこそ、私は首をかしげているし補佐役のローレンは胃の痛そうな顔をしながら私に追求をしているというわけ。


そうして分からないまま王城まで行くとそこにはやはり国王陛下とか他の偉そうな人とかがうじゃうじゃいて、まず初めに私を含めた戦争の参加者たちの功績が読み上げられて褒美をもらっていく。

私も国王陛下からお褒めの言葉とお金と物資をかなりの量貰えた。あと、勲章も。

この勲章とかけてもらったお褒めの言葉はいらないから物資とかに変更してもらえませんかね(はなほじ)。


なんて、ふざけたことがいけなかったのか。

私は何故かその後呼び出しを受けて個室に詰め込まれ、


「パール子爵は、どこで伯爵の裏切りを知ったのかね?」


尋問らしきものを受けることになった。

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