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10.ほんの少しだけの見直し

私が領地から追い立てたなんて事実は一切ないのだけど、なぜか伯爵家の避難民と物資が盗賊の襲撃を受けてしまった。恐ろしいから早めに処理したいし私も協力しようと思っていたんだけど、


「代官様と公爵閣下のお力ですでに解決のめどは立っているとのことです」


「あら。そうなの。それならよかったわ~。伯爵様となると家の格も高くなってくるし、味方にしたいのでしょうね」


「おそらくそれもあるでしょう。お嬢様は、それも踏まえたうえであのようなご指示を出されたのでは?」


「あのようなと言われても分からないけど、きっとお二方はどこかで協力してくださるだろうとは思っていたわよ。戦争の気配が消えていないのに、盗賊なんて放っておけないんだから」


正直、ここに関しては予想していたけど少し不安もあった。

もしかしたら恩を大きくするため、しばらく放っておくんじゃないかと言う風にも予想できたのよね。お互い取り合う立場ではあるから速度が肝心なのも分かるけど、それで恩が小さくて派閥に引き入れきれない可能性だってあるし。


もしそうなっていたなら、私は今回作っていた貸しを活用して周囲の貴族家にも声をかけたうえで伯爵様の救援に向かう予定だった。

だから、ホッとしていることも確かよ。


「ただ、伯爵様の領地で解決しても他でまた影響が出ると困るわね。伯爵様のところに行ってもらおうと思っていた兵士もいるし、近隣の男爵家とか子爵家に人員が必要ないか呼びかけてみようかしら。出せて数十人だけど、きっと男爵家からすれば少なくはないでしょ」


「なるほど。そこで恩を売るというのは悪くないかと」


ホッとしたついでに、近隣に恩も売れるなら売っておきましょう。

きっと公爵様や代官は伯爵家だけに目が言っているでしょうから、男爵家や子爵家に影響が出ても気にしないはず。

そこに我が家が手を差し出せば、更に近隣に恩を売れるというわけよ。

さらに言えば、伯爵家の領地に居た盗賊の残党が流れてくるだろうからそこで物資なども奪えるはず。

伯爵様が私に恩を売るために送るはずだった物資を盗賊は持っているはずだし、そうしたものを持って逃げてくるなんて良いカモでしかないわ。我が家も、領地に盗賊が逃げ込んできた家の貴族も少し潤うんじゃないかしら?


こんなに利益が見えてくると、気分が良くなってくるわね。

今日も幸せに眠れそうだわ~。

…………なんて思っていたら、


「お嬢~。最近働かせすぎだろ。もっと給料増やせよ~」


「げっ。エルグ。あんたは他の場所の救援とかにはいかなかったのね?」


「当たり前だろ。戦争ならともかく、平常時は本拠地にいるのが普通だって。俺、騎士団長だぞ」


私の気分を下げてくる(・忠誠 88)が来やがった!この私の持つ力が鑑定じゃないと突きつけてきた落胆の元凶がぁ!!

せっかくの気分を台無しにするなんて、どんな仕返しをしてやろうかしら。


とは言っても、今すぐ何かをするのはマズいわね。

他の貴族家に人員を送ることも避難民の集まる街の治安を守ることも必要だし、ここで軍部を混乱させるわけにはいかないのよね。

しかも今回はそのトップが軽くではあるけ直々に給料アップを求めてきたし。

確かに仕事量は増えているから給料アップを求める声が大きくなるのも理解はできるだけに断りづらいわ。ただ、今後の見通しが立たない以上下手に引き上げることも良くないし、


「給料は上げないけど、ボーナスを出すわ。短期で外部への協力は終わらせる予定だから、それが終わった後に配布するわね」


「うぃ~。了解。それならあいつらも満足すると思う。つっても、そんなもの出せるくらい金に余裕があんのか?財政破綻とかしないよな?」


「求めてきたアンタが何を言ってるのよ!ぶん殴るわよ?」


「いや~。悪い悪い。最近騎士団の奴らがちょっと疲れた顔してることが多いから、言わないわけにもいかなくてな。あと、お嬢は機嫌良さそうな顔してたから余計に」


「機嫌良くするくらいさせなさいよ。ある程度綺麗に回せるからと言って、まだ全部の仕事に慣れたわけじゃないからお父様みたいなペースじゃ終わらなくて大変なのよ」


「えぇ?なんか変なこと色々やってるし、慣れとか関係ないんじゃないか?」


「うっさいわね。私がそうだと言ったらそうなのよ」


イラっとしたけど、もしエルグが言うことが本当なら少しマズいわね。

騎士が疲れた顔をしているとなると、かなりの披露が経っていてどこかで支障をきたす可能性もある。

この後に戦争も控えているわけだし、早々に終わらせて休める時間を作ってあげないといけないわ。


今のところ私が兵士から好かれることをあまりできていないから戦争前に挽回しないと、と思っていたんだけど、


「そういえば、避難民の作った街の警備担当してるやつらから結構お嬢を褒めたたえる手紙とか来てるぞ。避難民の住むところなのに、かなり治安がいいって話だ。お嬢、見かけによらずそういうところは優秀なんだな」


「見かけによらずってどういう意味よ!?あと、そこは、って何?そこも、でしょ!」


「えぇ?お嬢、結構できないこともあるじゃねぇか。馬に1人で乗れなかったりとか。この間はインクの瓶ひっくり返して書類をいくつかダメにしたとかも聞いたぞ?」


「あうあうあう~聞こえませ~ん。完璧で天才な私ができないこととかミスすることとかありませ~ん」


「ガキか」


エルグに残念なモノを見る目を向けられている気がするけど、知ったことではない。

それより気になるのは、避難民がいる街の治安がいいというところ。


私が気になるのは、なんでそんな嘘をついているのかってところよ!

避難民は上下関係を作って外部の人間を入れ込んで、対立が起きるように仕向けてるのよ!?治安がいいわけがないじゃない。

特に1番下の区分の人達なんて血みどろの争いを繰り広げているはずでしょ?

そんなふざけたことを抜かす担当者は変えた方が良いかしら、なんて思いながら補佐役のローレンに街の治安のことを聞いてみたところ、


「まさに計画通りと言ったところですね。1番荒れるはずの箇所を同程度の人間しか集まらないようにすることで、他人から奪ってもあまりうまみがないようにした。そして、もし何か問題を起こせば街の外の危険な動物がいる森に容赦なく放り出されるということでさらに他人に手出しをするということが難しくなっているようです。加えて、働いたものには十分すぎるほどの食料を与えているところも不満がたまりにくい原因になっているのではないかと推測できます。まさにお嬢様のお考えだった通りに進んでいるのでは?」


「あっ、うん。そうね」


最近何度目か分からない冤罪(悪いことをしたわけではない)をかけられて私は目の前が真っ白になった。

なんとなく聴いていると確かに治安は悪くなる要素が少ないかもしれないとは思ったけど、それを考えた人って頭が良くてすごいななんて思った自分が怖いわ。計画を考えたのは私だっていうのに。


「特に十分な食料を得られると理解しているからこそそれが無くならないように仕事に励む者が多いため、数か月先の農産物の収穫量はかなりのものになりそうです。もちろん上の方の区分の者達は農作業とは違った仕事をしておりますので、もうすこし時間が経つと様々な商業分野の発達が起きるという予定です。今年度の収益は、途中からの収益増加であるにもかかわらず前年度比1.5倍、うまくいけば2倍になるかと」


「あら。そうなの。国に収める税金が増えるわね」


うふふっ。

よく分からないけどたぶんいい感じってことよね。意外と避難民も役に立つじゃない。方針転換しましょう。

利益を出すっていうなら、今後も馬車馬のようにこき使って反乱を起こす気力がなくなるくらい労働させてやるわ!

そして、我が領の収益を10倍くらいにしてやるんだから!!


「さて、そこは良いとして伯爵様からお手紙の方が届いておりました」


「あら、そうなの?何だって?盗賊退治が終わったという報告かしら?」


「それも内容としては含まれているのですが、それとは別に今後の治安維持のために周辺一帯を警備する騎士団の新設を提案されております。そのうえで我々にも創設のための資金提供を求められているのですが、その金額が正直かなり厳しい物でして…………」


あっ、我が家の利益とか無くなりそうね。

これ、絶対増えるより減る量の方が多いやつだわ。

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