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ゆらいでいるそれ

作者: 朝永有
掲載日:2021/05/22

「どうした? そんなに考え込んで」

「いや、これなんだけどな」

 ナオはトオルに一枚の絵を見せた。

「なんだ、この欠けた皿みたいな絵は」

「これは、温泉マークの下の部分だ」

「ああ、言われてみれば。それで、上のにょろにょろの部分は?」

「無い。というか、それを考えている」

「はい?」

 トオルはよく分からないと言うように首を傾げた。

「なんかな、いとこがお店を始めるらしいんだが」

「ふんふん」

「そのロゴみたいなものが欲しいんだと」

「それは欲しいかもな。しかし、なぜ温泉マークを使うんだ?」

「いとこは温泉が好きなんだ」

「なるほど」

「よく納得できるな」

 ナオはトオルの態度にあきれながら話を続けた。

「それで、いとこのお店は何をするんだ」

「料理を出すらしい」

「ほほう」

「採用されたら、1年間ご飯をおごってもらえる」

「よし、俺も協力しよう」

「食い意地、頼もしい」

 トオルは、ふふんと鼻を鳴らした。

「それで、いくつか考えたんだ」

「見せてくれ」

「まず思いついたのは、これだ」

 ナオが見せた絵には、にょろにょろの部分に緑の模様が描かれていた。

「この緑は……」

「ワカメだ」

「ワカメ……」

「ほら、だって、海の中でゆらゆらしてるだろ」

「ああ、そういうことか」

 トオルは右上を見ながら、あごに手を当てて考えた。

「うーん。だけど、ワカメには、あまりにょろにょろ感を感じないな」

「確かに。ちなみに、似たようなものでゼンマイもあるぞ」

「渋すぎる選択じゃないか。俺は嫌いじゃないぞ」

「お前は変わっているな」

「ははは、よく言われるよ」

 高らかに笑うトオルを置いといて、ナオは次の絵を見せた。

「そして、次はこれだ」

「白い細い棒か……」

「これは、チンアナゴ」

「この連想ゲーム、楽しいな」

「そんなつもりはないんだけどな」

「いいんじゃないか? チンアナゴ」

「だがな、チンアナゴって『にょろ』より『にょき』に近くないか?」

「ほほう」

「だから違うかなと」

「お前がそう思うならしょうがないな」

「それで、クラゲも候補に挙げたんだ」

 ナオは、違う絵をトオルに見せた。

「ゆらゆらしていて、足はにょろにょろしてるな!」

「しかしだ」

「それにも納得できないと」

「クラゲって食べないよな」

「それは、チンアナゴのところで思いつきなさいな」

 ここで、トオルはあることに気が付いた。

「しかし、さっきからゼンマイ以外は海の生き物ばっかりだな」

「そりゃあ、いとこの店は海鮮系だからな」

「それ、初耳」

「ああ、そうだったか」

「じゃあ、海限定というわけじゃないんだな」

「何かいいアイデアが浮かんだのか?」

「ああ!」

 トオルはナオから紙とペンを貸してもらい、一気にアイデアを書きなぐった。







 ある日曜日。二人はいとこのお店の入り口前で立っていた。

「おお、本当にのれんになってる!」

「さあ、おいしいご飯をたべよう」

 二人がくぐったのれんには、欠けた皿のような形の上で、ウナギが三匹、にょろにょろと上に泳いでいる様子が描かれていた。

読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 企画よりお邪魔します! うなぎ! にょろにょろしてますよね! 海鮮系なのかはわからないけれど、うなぎは海で過ごしますから広い意味では海鮮系でしょうね。でもうなぎが三びきにょろにょろしてい…
[良い点] 企画より参りました。 会話のテンポが良くて楽しいお話でした。 ボケのつもりはないだろうけれど、どこかズレているのを的確に突っ込む友人。 海鮮でウナギには疑問を持ちましたが、海に居る時期…
[良い点] 海鮮系なのに、ウナギ! しかも採用されてる!! きっと二人の「これが食べたい」という思いが、その絵になったのでしょうね。 面白かったです。
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