ＪＫは舞踏会で全てを魅了する

　アタシは神風(みかぜ)鈴(りん)。

　あの木枯らしの日、年賀状を買いに行った帰り、雨宿りした商店の軒下に突っこんできた自転車にぶつかって、異世界に飛ばされた可哀想な女子高生。

　神様からもらったギフトスキル『隠密行動』でサバイバル生活してたけど、この国の王子を助けたことで、今は王宮の離れに住まわせてもらってる。

　こっちで助けた子供達も一緒。ココでの生活はとっても快適♪　みんな良い人だし、アタシ特製ホットケーキもメッチャ人気ある。エヘヘ♪

　…って、実は理由がある。

　アタシが異世界に飛ばされたとき、アタシのステータスにとんでもないバグが発生したんだって。

　力とか知性は普通なんだけど、『魅力』のステータスだけが異常に高くなっちゃったらしいの。

　だから神様が、自分の魅力や存在感を消せるようにって『隠密行動』のスキルをくれたのよね。

　貧民街ではアタシの魅力を０%にしてたんだけど、王宮に来てからは10%を保ってる。

　それでも相手への好感度は相当上がる。元々アタシはそこそこカワイイんだけど、今は魅力を自在に操れる。アタシ、スゴくない？　100%にしたらどーなるんだろ。ちょっとコワイ。

　助けた王子はアタシ好みの超イケメン♡

　さすがに会う機会はあんまりないけど、会えた時は魅力を30%くらいにしてる。

　だからかな。王子のアタシを見る目がすっごく優しい。ちょっとズルいけど、イケメンからの好感度はやっぱり上げたいよね？

　別に王子とどうこうなりたい訳じゃないけど、アタシだって異世界で頑張ってるんだもん。少しくらい良いよね。

　　　◇

　そんなアタシにある日王子が、

　「そなたは異世界より召喚された巫女、と学者達が言っている。なので仕事を辞めてもらい、国賓としたいのだが」

　えええ…。せっかくの合言葉がムダになっちゃう…。

　…けど、まぁいっか！

　アタシをお披露目する舞踏会を開くんだって。

　わー、ステキなドレス！

　アタシ、バリバリのダンス部だったし、ちっちゃい頃はバレエもやってたからね。しっかり踊っちゃうよ！

　　　◇

　「さあ、リン。手を…」

　王子と踊るなんて、役得♪　…あ、この曲、あのオルゴールの曲と同じ。

　よぉし、いい機会♪　アタシの魅力を100%に…。

　「「!?」」

　………あ、ヤバイ。

　コレは会場の全員魅了しちゃったね。20%くらいに落とさなきゃ。

　…あーあ、みんなアタシを見てる。

　ダンスの相手が王子じゃなかったら、今頃ここにいる男全員にもみくちゃにされてたかも。

　これからはもっと気をつけよっと。