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近衛の出生

遅くなりました。

近衛両親の話はさらりと流しました。

だって詳しく書いていくとあきらかに別ジャンルになる……。

 まあ両親のことはボクも詳しくは知らないんだけど、と言う前置きから近衛は自身の出生について語り出した。



 もともと近衛の母親は早くに両親を亡くした女性だった。


 近衛の父・幸広の祖父も妻を早くに亡くしていた。


 そんな二人が出会ったのは、幸広の父が結婚して間もなくのころだったという。


 親子ほど年の離れた二人。


 近衛の母親は身よりのないまだ年若い女。


 幸広の祖父は巨額の資産を持つ初老の男。


 財産目当てだろうと、幸広の親族側からおこる、当然のごとき反対の声。


 一時は別れる選択肢をした二人。


 だが、その時近衛の母のお腹には新しい生命が宿っていた。



「まあ、つまりはそれがボク、というわけなんだけど」



 それにより、二人は婚姻を結ぶことを決意する。


 だが不幸はここで起こる。


 幸広の祖父が病で急逝したのだ。


 近衛の母は酷く嘆き悲しんだ。


 身重の近衛の母に幸広家から援助の話は上がったが、その一切合切を断り、近衛の母は一人で近衛を育てることを選んだ。


 ささやかではあるが、母子二人、しばらく食べていけるくらいの蓄えはあった。


 しかし、ここでまた不幸が起きる。


 今度は近衛の母が事故で突然帰らぬ人となった。

 

 この時、近衛はまだ二歳。


 一時は施設に行く話も出たが、結論として幸広の祖父の息子、つまりは近衛の義理の兄が近衛を引き取ることになった。



「この辺のことはまだ年も年なんでボクもよく覚えてないんだけどね」 



 引き取られたころは、まだ近衛も母屋の方にいたとのこと。


 もちろん幸広もすでに生まれていて同じ屋根の下で寝起きをしていたわけだが、世話人が異なることと、家が広すぎて顔をあわすことはなかったのだという。


 そして、新たなる事実が判明する。


 近衛の、尋常ならぬ知能指数の高さが判明したのだ。


 最初に気がついたのは、近衛の世話人だった。


 子供らしからぬその言動仕種に、幸広の父へ報告がなされる。


 紆余曲折を経て調べた結果、その事実が判明した。


 ここで、近衛の取り扱いについて協議がなされた。


 普通の子供と同等の扱いでは浮いてしまうだろう。


 ではそのレベルにあった施設にいかせるのか。


 ただそれにはまだ近衛の年齢は就学前という現実がある。


 なにが、この子にとって一番いいものなのか。



「雪路はおそらくボクへのネグレクトを疑ったんじゃないかと思うんだけどね。今日のあの感じからすると。当然そんなことはなくて、良い人なんだよ。義兄さんは、実際。義姉さんも、もちろん。ただちょっとあの人たち、圧倒的に言葉と説明と態度とスキンシップが足りないだけで」



 選択された結論は、このままここに住み生活を送る。


 学業は通信で進められるところまで進んでいく。


 そして、いずれは留学なりを検討していく。


 別宅に居を移すことを望んだのは近衛自身だ。


 その方が気楽だし、普通の子供らしく普通に就学する幸広とは一線を画した方がいいと思ったからだ。



「その時はそれが一番いいと思ったんだよねえ。いやあ、ボクもまだまだ青かったってことだよ」

 

「おまえ、その時いくつ?」


「ん? 五歳かな」


「…………………」






「そんなこんなで時は経ち、ボクは運命の出会いをすることになるんだ」


こうしてさらりと流してみると近衛母が儚げな女性に思えますが、設定はまったく違います。

むしろ、飛んでる女性。

だって、近衛の母だし。

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