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最高のエスコートしてくれる人がいいって話してたら幼馴染の公爵令息が豹変!そんなアプローチなんてアンタには求めてないんだからね!  作者: 伊賀海栗


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⑧もしかしてとは思っていたんだけど


 応用魔導剣術はその名の通り魔法を用いた剣術の実技授業で、最も実戦に近いと言われている。そのためクラス内のトーナメント戦などが高頻度で開催される。


「今日はダブルスをやる。ペアは今期の模擬戦総合成績を基に決めたし、対戦表はマジカルダイスによって決定したのでクレームは受け付けない。第1、第2コート両面使ってさっさと始めるように」


 いつものこととばかりに教師が簡単な説明を終えると、照り付ける夏の太陽の下で空中に対戦表が浮かび上がった。一部の生徒の修練用の剣が光り、試合の順番が来たことを知らせる。この剣もまたマジックアイテムで、持ち主が攻撃を受けるなど戦闘不能の状態になると光が消えるのだ。


 ライルは自分の剣が赤く光ったのを確認して、第1コートへ向かった。ペアとなるのは今期の模擬戦で全戦最下位だった女子生徒。相手ペアは常に中間くらいの成績を維持するふたりだ。


「いきなり手強い相手だな」


 手首を回しながら呟く。この手の組み分けは、どちらも平均的な能力のペアのほうが有利だ。実力に差がある場合、能力の劣るほうがパートナーに頼り切るか、または足手まといにならないようにと必要以上に動かなくなってしまう。


「別の強敵は……と」


 ライルは準備運動を続けながら修練場をぐるりと見まわした。今期、常にライルに次ぐ二位の成績をおさめるシェリーンも、やはり強敵と言えるだろう。


 その好敵手の姿は、対戦相手の背後にあった。動きを研究するつもりなのか、パートナーと話しながらライルを指差しているように見える。


 コート内へ入り、両者左胸に右手をあてて敬礼。コートの真ん中には魔法障壁が設置されているが、そこに浮かぶ数字がカウントダウンを終えたとき、障壁は消えて試合が始まるのだ。


 3、2、1。障壁が消えると同時にライルは床を蹴った。相手が自分の剣の間合いに入るまで3歩。1歩目の着地で剣に炎を付与し、2歩目で自らの周囲に氷盾(アイスシールド)を複数浮かべる。3歩目にはマークしていないほうの敵を落雷魔法で牽制しつつ、振りかぶった。


「ナヒッド? いま授業中なのに」


 ライルが剣を振り下ろすと同時に、シェリーンが左手を耳にあてて喋り始める。ライルにはなぜか彼女の声がはっきりと聞こえた、というより彼女の声にしか意識がいかなくなった。


「ああ、さっきのね。急に席を外したって……別に気にしてないから大丈夫なのに。うん。ライルがいつも喧嘩腰でごめんなさい」


 どうやらシェリーンはナヒッドと通話しているらしい。

 意識が削がれて勢いを失ったライルの一刀は、すんでのところで(かわ)されてしまった。左腕にはヒットしたはずだが、致命傷ではないと判断されたらしく試合は続行となる。


 だが。ライルはもう試合などどうでもよくなっていた。

 シェリーンが通信機器を用いてナヒッドと話をしている。これは由々しき事態だ。


 いつもならペアの相手も活躍できるよう立ち回るところだが、ライルは次の3歩で対戦相手をふたりとものしてしまった。

 あまりの速さに修練場内は大いに沸いたが、ライルは礼もそこそこにシェリーンの方へと向かう。


「私の番だわ。うん、また」


 通話を終えて顔を上げたシェリーンと目が合う。


「授業中だろ」


「知らなかったみたい。ずいぶん早かったね」


 そう言ってシェリーンはパートナーと共に第1コートへと向かった。

 まるで早く終わらせたから通話時間が減ったとでも言われたような気がして、ライルは腹立ち紛れに勢い良く腰を降ろす。


「いって……。あぁくそ!」


 尻の下にあった小石もナヒッドのせいに違いない。一体いつから彼女たちは通話するようになったのか。通信用の魔水晶は高額で、ライルが今持っているものもベーダス公爵家が保持する緊急用のそれだというのに。


 いつもならライルのファインプレイに憎まれ口のひとつも叩くくせに、今日のシェリーンはそれを見てすらいなかった。

 いつもなら最初になぜ炎を選んだのかなど質問してくるくせに、まるで興味がないかのようだ。


 ライルの尻を攻撃した小石を放り投げたとき、右耳のイヤーカフが着信を知らせた。応答すると「いま大丈夫かい?」とターヒルの声。


「ん、授業中ではあるけど、少しなら。どうした?」


『さっきナヒッドにシェリーンと勘違いして声をかけられたんだ。もしかしてとは思っていたんだけどね、やはり彼は僕とシェリーンの見分けはついていないようだよ』


「え、まじか」


 ちらりと第1コートへ目を向けると、戦闘中のシェリーンと視線がぶつかる。


『僕らは科が違うから、講義のタイミングで兄妹を見分ける人物は過去にもいたし、その場合には見分けているか不明だとシェリーンに伝えていたんだ。でもナヒッドが手紙をよこしたのは昼休みだったし堂々としていたからね、ちゃんと見分けがついているものと思っていたのだけど』


 ターヒルにしては珍しく、弱々しい声だった。ライルは左手で頭をかきつつ、苦笑を浮かべる。


「ま、しゃーねぇわな。お前が責任感じることじゃないし気にすんなよ」


 イヤーカフからの「ありがとう」の声は、修練場に響くギャラリーの歓声で掻き消えた。どうやらシェリーンが本気を出したらしく、第1コートの試合が終わったのだ。


 通話を終えて顔をあげると、シェリーンはそっぽを向いて第2コートのほうへと行ってしまった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 見分けがついて……ない……?
[良い点] ええー、なにー? ライルかわいい かっこかわいい
[良い点] シェリーンの通話が気になって気になって仕方ないライル……。 かわよ。
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