無事進級できてよかったぜ、4月はまず新入生歓迎会から始まる
さて、無事に卒業制作展示の製作も出来て進級できた俺は2年生になった。
「いや、ちゃんと進級できてよかったぜ」
桜田さんや笠羽さんも無事進級したが、俺は菓子・製パン学科、桜田さんは経営学科、笠羽さんは西洋料理学科と皆ばらばらになってしまった。
「バラバラなのはちょっと寂しいけど、まあ、元々そういう感じだったしな」
桜田さんは笑っていう。
「でも同じ学校だし高校とか大学でも、同じ学校ならクタスが違っても十分だった気がするよ」
笠羽さんもウンウンとうなずいてる。
「どちらにしてもバイトでは一緒なわけですしね」
「そりゃ違いない」
そして新学期になってまずは入学式とクラス分けの発表がある。
「ああ、俺達も去年はあんな感じだったな」
「そうよね、私が貴方を初めてみたのもこのときだったわ」
「へ、そうだったんだ?」
「そうなんです、もう相変わらず鈍いわね」
「しょうがないですよ」
桜田さんと笠羽さんは笑ってそういう。
俺そんな鈍いかな?
まあそれはともかく友達と一緒の入学の場合は特に一緒のクラスにになりたいんだろう。
掲示板のクラス分けで自分たちの名前を探す新入生たちの姿は初々しくて微笑ましい。
嬉しそうな顔もがっかりした顔もある。
それから2年生は1年生の歓迎会を行う。
調理学校らしくグループに分かれて、新入生の眼の前で調理を行って調理したものを交えての雑談などを行うのだな。
もちろん必要な下ごしらえはしておいて後はちょっと手を加えればいいという状態にはしてある。
俺は菓子・製パン学科ということで一年生でも菓子・製パン学科希望の子たちの相手をしている。
女の子で調理師専門学校に来るのは調理師免許を取って学校給食や病院・介護施設などの食事関係で働きたい子か菓子・製パン学科を目指している子が多いから必然的に女の子が相手になる。
日本料理や中華料理、西洋料理学科に経営学科は男ばかりなんで、桜田さんや笠羽さんは男性を相手してるのでナンパとかされないかちょっと心配だ。
俺が作ったのはパンナコッタ。
パンナコッタはイタリア語で生クリーム(パンナ)を煮た(コッタ)と言う意味の名前のイタリア料理のドルチェ。
牛乳や生クリームと砂糖を火にかけて、ゼラチンなどで固めたもので、プリンとは違い卵を使わないのが特徴、ミルクプリンやババロアとほぼ同じもので結構昔に大流行した。
その作り方は割とかんたん。
牛乳と生クリームを同量くらい、それに砂糖・粉ゼラチンにいちごを用意。
粉ゼラチンをふやかしたあと、鍋に牛乳、生クリーム、砂糖を入れて中火にかけ、砂糖が完全に溶け、沸騰したら火からおろし、そこにふやかしたゼラチンを加えて混ぜながら溶かし、ボールに移し、ボールの底を氷水に当てて、ゴムべらで全体を均一にゆっくりと混ぜ、とろみがついたらココット型に等分に流し入れ、表面をならしてラップをかけ後は冷蔵庫に入れ、2~3時間冷やし固める。
これで下準備はOK。
「はい、皆さん、よくみておいてくださいね」
パンナコッタが固まったら、1個ずつココット型から抜いて平皿に盛り付け、冷やしたいちごをきれいに切り、パンナコッタに乗せて、ストロベローソースをパンナコッタにきれいに等分にかけ、ハート型や星型のストロベリーシャーベットと、ミントの葉を添えて出す。
「ではどうぞ食べてください、ストロベリーパンナコッタです」
新入生たちが嬉しそうにスプーンで食べ始める。
「うわー。おいしー」
「こんな美味しいものが作れるなんて、素敵よねー」
その中のひとりが俺に聞いてきた。
「私も作れるようになるのかな?」
俺は笑って答える。
「もちろん、大丈夫ですよ、そんなに難しいものではないですから」
「じゃあ頑張って覚えます!」
皆未来のパティシエだし頑張ってほしい。
そんな感じで和やかに新人歓迎会は終わった。
それから自分専用の名前の入った製菓器具類や名前入りの庖丁が新入生に配られ新人歓迎会は終わるのだ。
「おつかれー、年下の可愛い子に手出しとかしなかった?」
いたずらっぽくそういう桜田さん。
「もちろんするわけないよ」
「まあ、そんな事はできないわよねー、じゃあ一緒に帰りましょう」
「そうだね、バイトも頑張らないと」
「あ、ちょっとそこの二人待ってくださいよー」
こうやって俺たち三人は一緒にパラディーゾに向かうのだった。




