シルシルカムカム
「やあやあねっぷくん、今日は私とデートしないかい?」
月曜日の部活終了後、いつも麗ちゃんと一緒に帰る見知さんが、何故か俺にデートのお誘い。見知さんの場合、ラブラブ展開じゃなくて何か意図があるから気を付けろ。
「麗ちゃんと帰らないんすか?」
「その麗姫についてお話があるのさ」
そんなこんなで二人きりでファミレスのテーブル越しに向かい合っている。見知さんが制服姿じゃなかったら妹連れかアブナイお兄さんに見られそうな状況だ。
「ムムッ! ねっぷくん、キミはいま、とても失礼なことを考えていたね?」
「なんで判ったんすか!?」
「私を見る目だよ。全体を舐め回すように見ていたけれど、それはまるで昆虫観察をするような目で、ねっぷくん独特のエロスなオーラを感じなかったのだよ」
「さすが見知さん! ジャーナリスト!」
「誉めると何か出るぞ~」
「出るんすか! 何が出るんすか!?」
俺が問うと、見知さんは自分のスクールバッグの中を物色して、写真屋で貰えるタイプの簡易なアルバムを取り出した。
「これ、なんだと思う?」
ごくありふれたアルバムの表紙をを見せながらヒッヒッヒッ、と不敵な笑みを浮かべる見知さん。
「女子更衣室の写真集?」
見知さん、オヤジ趣味なトコあるから、そんくらい持ってても不思議じゃないよな。
「あぁ! 惜しい! 惜しいぞねっぷくん! 確かに更衣室内での写真もあるけれど、これはもっと視野が広いのだよ!」
「なにーいっ!? まさかまさか、全裸写真か!?」
「いや~、さすがにそこまでは他の人に見せられないよ」
ってことは持ってんだな、この人。
「じゃあ何が写ってんすか!?」
「麗姫の写真集だよ。中でもプレミアムなのはキミも存じているであろうこの一枚さ!」
見知さんは言いながら、アルバムの最後のページを開いた。
「あっ…」
この写真は…。
「ズバリ! 麗姫がキミのハートをバッキューン! した瞬間さ!」
写真は、雪まつりでこれまで麗ちゃんが俺に見せた初めての、とびきりの笑顔。麗ちゃんは動物園の生き物たちを型どった雪像に魅せられたのだ。この写真は前にも見せてもらったけど、やっぱ最高だぜ!
「最高っすよね、麗ちゃんの笑顔。この写真欲しいっす!」
「それは100兆円貰ってもあげられないな~」
「焼き増ししても?」
「あぁ」
「なんだよケチだな~。そんくらいしてくれたっていいだろ?」
「何がケチなものか。麗姫はテレビやグラビアのアイドルじゃない。笑顔を見たければキミが笑わせれば良いではないか」
「うおおっ! そうだな! 見知さんの言う通りだぜ!」
「だろ?」
「んだ!」
よーし! 明日からさっそく麗ちゃんを笑わせるぞ! 気合いだ! 笑顔だ! スマイルッ、だあああ!!
ご覧いただき本当にありがとうございます!
次回、ねっぷが動き出す!




