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勇者戦隊ブレイブレンジャーの第X話「氷結フェス」

作者: ホムラ

異世界カオスワール。

そこは無数の"世界"が融合した混沌世界。

ファンタジー、SF、戦国時代、サイバーパンク……様々な世界(ジャンル)が融合した世界。

その世界に今、危機が迫っていた。

暗黒機械帝国マシンエンパイア。

全てを機械化してしまおうとする悪の機械帝国である。

恐るべき機械帝国マシンエンパイアの脅威に晒される世界。

世界を護る為、数人の若者が選ばれた。

彼らの名は勇者戦隊ブレイブレンジャー。

機械帝国とたたかう、正義の味方である――!


●●●


ここはファンタジーの国、エイリス王国のとある街・ヴィーズン。森と川に挟まれた、のどかな田舎町だ。

ワイン製造で有名なこの街には、年に一度、世界中のお酒を持ち寄って皆で楽しむ、オクトーバーフェストというお祭りが開催される。

今がちょうどそのお祭りの時期なのだが……


「凍れ凍れー! 人間共の楽しい祭りなど、全て凍ってしまえ!!」


村の大広場。多くのお酒と出店が並んだ祭りの会場に、奇矯な姿の"怪人"がいた。

SF世界の"冷蔵庫"と呼ばれる機械に手足が生えたような怪人だった。

彼は自らの腹にある観音開きのドアを開け、中から猛烈な勢いで冷凍波を周囲にまき散らしている。


「うわああああ! 俺の出店が!」

「肉の串焼きが! って身体がー!!」

「お酒がー!! 身体も凍っていくー!!」


冷凍波は広場の出店や、集まった客たちを氷漬けにしていく。

多くの人々は一斉に逃げようとするも、冷蔵庫怪人の冷凍波はそれを許さない。

逃げ惑う人々は皆氷漬けの氷像になってしまった。


「ヒーエッヒエッヒエッ!! 見たか!機械帝国マシンエンパイア最強のマシン獣・マシンフリーザー様の力を~!!」


広場に集められた各国のお酒も、世界中の料理を振る舞う出店も、それらを楽しもうと集まった客達も……全てを凍らせた怪人・マシンフリーザーが勝ち誇る。


『よくやったナリ、マシンフリーザー』


突然マシンフリーザーの前に映像が現れる。大柄な人型ロボット怪人の姿だ。羽織ったマントに、胸につけられた勲章が怪人の位の高さを示している。

彼の名は機械帝国・陸軍将軍・ダッシュタインである。


『年に一度の楽しみであるオクトーバーフェストとやらを台無しにすることで、人間共の哀しみの感情を集めるというお前の作戦……まずは成功ナリ。本拠地の方でも哀しみの感情が集められているのが確認できているナリ。見事ナリ、マシンフリーザー』


「はは~ありがたき幸せ!」


冷蔵庫怪人が映像に向かって頭を下げる。


「このままこの街だけでなく、この国全体を凍らせ……いずれは世界中をカッチカチに凍らせて見せましょう!

 そうすれば凄まじい哀しみの感情エネルギーが集まるはずです!」

 

『うむ。期待しているナリ。しかし油断はするなよマシンフリーザー。最近我らを脅かす"勇者"という奴が出てきているからな。

 油断せず、このままの調子でドンドン世界を凍らせるナリ!』


「ははっ!」


将軍の忠告と激励に、マシンフリーザーは敬礼で応えた。

そのまま映像は途絶える。


「この街はもう完全に氷漬けだ。ヒーエッヒエッヒエッ次は隣町を……」


「――待て!!」


完全に氷漬けとなったヴィーズンの街の門。次の街へと向かおうとしたマシンフリーザーを、勇ましい声が押しとどめる。

声は、街の外からだった。


「年に一度の楽しいお祭りを台無しにするなんて、許さない! マシン獣、覚悟しろ!!」


凍り付いたヴィーズンの街の冷気に負けないように、熱く大きく叫ぶのは真っ赤なジャケットを着た少年だった。

彼はその腰につけた機械仕掛けのベルトのバックルにスイッチを入れ、叫ぶ。


「ブレイブチェンジ!!」


瞬間、赤い光が少年の身体を包み込み――一瞬後には、彼は赤いパワードスーツに身を包んで立っていた。


「熱き勇者! ブレイブレッド!!」


"変身"を終えた彼は、決めポーズを取りながら自身の名を叫ぶ。


「ブレイブレッド――そうか、貴様が将軍のおっしゃっていた、最近我らマシンエンパイアを脅かす"勇者"だな~?」


「その通り! お前も倒させてもらうぞ、冷蔵庫野郎! ――レッドソード!!」


マシンフリーザーに対し、ブレイブレッドと名乗った赤いパワードスーツの少年は、腰の剣を抜き、怪人に襲い掛かる。


「馬鹿め、俺の前面に立ったことを後悔するがいい! "凍結フリーザー"!!」


 対してマシンフリーザーは身体の前面の扉を開き、冷凍波を放射する。触れたモノを全て凍てつかせ氷漬けにしてしまう恐るべき力だ!

 

「ハァッ!」


 しかしブレイブレッドは冷凍波を跳躍で回避。そのままマシンフリーザーを飛び越し、無防備な背中の前に立つ。

 

「"レッドスラッシュ"!!」


「グワーッ!?」


背中からブレイブレッドの剣戟を受けたマシンフリーザーが、悲鳴を上げながらゴロゴロと倒れ伏す。

怪人は何とか立ち上がり、忌々し気にブレイブレッドを睨みつけた。


「おのれブレイブレッド! 避けるなんて卑怯だぞ!! 俺様の"凍結フリーザー"がそんなに怖いか!!」


「怖くはないさ。なら真正面から破ってやる!」


来いよ、とでも言うようにブレイブレッドが指をクイクイと自分に向ける。


「~~~~!! 舐~~めやがって!! ならば喰らえ最大出力!"凍結フリーザー"!!」


バクリ、と胸の扉を開けたマシンフリーザーが、超極寒の冷凍波をブレイブレッド目掛けて噴射する!

その威力たるや、冷凍波が通った草原の草が一瞬にして凍結して砕けるほど!

恐るべき冷凍波がブレイブレッドに迫る!

危うし、ブレイブレッド!


「――"炎よ、竜の如く燃え上がれ"!!」


迫る冷凍波に対し、ブレイブレッドは右手を前に、チカラある言葉――"呪文"を唱えた。

それは、ファンタジーの国であるエイリスに伝わる魔法と呼ばれる技術。

彼の言葉に、空間が反応し――何も無かった中空に、炎の竜が顕現する。


「――行け!」


号令と共に、炎の竜は冷凍波へと突進する。


――激突。


瞬間、爆発が生じた。冷凍波と炎、相反する二つのチカラがぶつかった結果、反発作用によって爆発したのだ。


「――くっ」


爆発によって生じた白煙と衝撃に、マシンフリーザーが呻き、一瞬目を閉じる。


――それが最大の隙だった。


「"ファイアー・レッドスラッシュ"!!」


白煙の中から、ブレイブレッドが現れ――炎を纏った剣で、マシンフリーザーを両断する。


「馬鹿な……爆発の中に飛び込んだというのか、貴様は……!」


「"勇者"、なんでね。お前達マシン獣を倒すためなら、どんな無茶でもするさ」


「理解……出来ぬ……だが、恐るべき敵……マシンエンパイアに栄光あれ――ッ!!」


――爆発。


機能停止したマシン獣が、爆発四散した。

後に残ったのは、赤いパワードスーツのブレイブレッドだけ。

彼は頭部のヘルメットを外すと、ふぅ、と一息つき――氷漬けのままの、ヴィーズンの街を見やった。


「あとは――」


●●●


あれから数日後。ヴィーズンの街はそれからほどなく現れた王国の救助隊によって氷漬けから解放された。

住人も客達も、命に別状は無かった。

――マシン獣は人の命を奪わない。彼らは人間の発する感情エネルギーを集めているからだ――

氷漬けから解放されたヴィーズンの街は、しばらくの復興作業の後――


「ここに第518回! ヴィーズン・オクトーバーフェストを開催いたします!

 今回はひどい目に遭いもしましたが――その分、存分に飲み、食べ――大いに楽しみましょう!

 ――乾杯!!」


大広場にて。町長の宣言と共に、オクトーバーフェストが開催された。

住人も客達も、一緒になって酒を、出店の食べ物を、大いに飲み食らい楽しんでいる。


「――この"ハンバーガー"ってのをください」

「いいのを頼むな少年! このハンバーガーは本場ベイリカと同じ作り方の本物だ! コーラと一緒に楽しむのがベイリカ流だぜ!」

「へぇ……じゃあコーラも!」

「あいよぉ!」


出店の一軒に、赤いジャケットの少年の姿があった。店主からハンバーガーとコーラを受け取った彼は、広場の中央――無数のテーブルが並ぶ場所に行き、空いている席に座る。

そのまま彼は、周りを見ていた。

男がいる。女がいる。子供もいれば、大人もいる。皆楽しそうに飲み物を、食べ物を楽しんでいる。

――皆、笑顔だった。


「――良かった」


そう呟いた彼の横顔は、笑みの形だった。

笑顔のまま、彼はハンバーガーを食べ始めるのだった――。


勇者戦隊ブレイブレンジャーの第X話「氷結フェス」完


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