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奈落の悪魔と雨に踊れば  作者: 青山喜太
出会い編

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第37話 腹の中で

「怪獣ってあんた、何言ってんの?」


 明田さんの、冷たい言葉が私を射抜く。だが、同時に気づいたことが彼女にもあったようだ、


「ていうか、何ここ、暗いし、ベトベトする。気持ち悪い」


「だから言ったでしょ、ここは怪獣みたいなやつのお腹の中なの私たちは飲み込まれたんだよ」


 私は繰り返し彼女に説明する。すると明田さんはどうやら状況を飲み込み始めたのか。段々と息を取り乱し始める。

 どうやら体に伝わる肉塊の感触が、現実を彼女に教えているらしい。


「いや待って。本当なの?」


 信じられないといった口調で私に再び聞く明田さん。


「うん」


 私は無慈悲に頷く。


「なんで、そんなに落ち着いてられるのよ!」


「逆に、落ち着いて明田さん! 貴女ずっと悪い神様に憑かれてたんだよ! 痛いところとかないの?」


 とりあえずこの状況では明田さんを落ち着かせることが優先だと思った私はそう言う。明田さんは動揺しつつも何かを思い出したのか、ボソリと呟いた。


「悪い神様、って……じゃああれは夢じゃなかったの?」


「夢?」


 明田さんの言葉に、疑問符を浮かべる私は聞き返した。

 すると明田さんはポツポツと喋り始める。


「アンタの家に行った夢を見た。私の体は勝手に動いて、私の声なのに、私じゃないやつが世界に復讐してやるとか言ってた」


「それが、クレナイ様だよ、明田さん。貴女の体を乗っ取った」


「信じられない……」


 彼女の混乱はもっともだ。なにせ非現実的な世界に飲み込まれたのだから。


「ねぇ」


 唐突に明田さんは私に問う。


「なんで、私のことを庇ったの?」


「え?」


 明田さんが何を言っているのか分からなかった。


「だって、私ごと私の中にいたクレナイ様ごと殺してしまえば、アンタだってこんな事ならなかったでしょ」


 それに、と明田さんは続けた。


「アンタの声ほんの少しだけどさっき聞こえてた、明田さんは関係ないって……朧げだったけど聞こえてた」


 ねぇ、と明田さんは聞く。


「なんで私をアンタは助けたの?」


 難しい質問だった、それはなぜかと言うとそうしたかったとしか言いようがなかったからだ。


「難しいな、助けたかった、じゃダメ?」


「なにそれ?」


 訝しむ、彼女に私はさらに言った。


「貴女が死ぬ必要はないと思った、ジンドーもそう言うと思う。だから、貴女は──」


「私は! アンタをいじめたんだよ!?」


 明田さんの怒鳴りに私は硬直する。

 なんで急に。


「私はアンタのこと気に入らなかった! 先輩の受けも私より良かった、可愛いって言われてたし! だから私……! なのになんで! 私のこと助けてくれたの?」


 それはこの状況に対する混乱からなのか、それとも助けられたことに対する複雑な心境が彼女の心に複雑に作用した結果なのか。


「やっぱり、貴女がいじめてたんだ」


 私の言葉に明田さんは沈黙で答える。


「私は貴女を許したつもりはない、でもね、私は……だからってやっぱり貴女が不幸な目に遭うのは違うと思うな、何故かって言われると複雑だけど、多分ジンドーだってそう言うから」


「……ジンドー? って誰?」


 その質問に、私はちょっと考えた後、少し恥ずかしかったけどこう答えた。


「私の……尊敬する人かな?」


 その言葉に、明田さんは納得したのか、「そう」と言い、


「アンタ……優しいんだね」


 とだけ言った。どうやら少しは納得してくれたようだ。少し明田さんと私の間にあったわだかまりみたいなものが少し溶けて、理解が進んだ気がした。


 こんな危機的な状況だと言うのに少し可笑しい、私はそう思った。

 でもその時だった。私の体に痛みが走ったのは。


「うぅ!」


 私は暗闇の中でうずくまる。

 そんな私を明田さんは心配そうに尋ねた。


「どうしたの界?!」


「ごめん明田さん……クレナイ様が私を呪い始めたみたい」


 私の説明に明田さんは少し動揺する。


「あの神様ってやつ?」


「そう、多分私を殺す気……」


 その言葉がよほど衝撃的だったのか、明田さんは声を荒げた。


「そんななんとかならないの! アンタが死んだら私……!」


「大丈夫……!」


 その「大丈夫」は私が言った精一杯の強がりそして同時に、絶対の確信でもあった。


「ジンドーが……きっと助けに来てくれる……!!」


 私はそう信じていた。ジンドーはくる。


 ─────────────


 ジンドーは目を覚ます。


「寝ていたか……」


 破壊された廃ビルの瓦礫の中から、ジンドーは立ち上がる。

 そして羽を羽ばたかせ、空中へと飛び出した。

 ある程度の高さまで、行くとジンドーは静止し見下ろす。肉塊のクレナイ様を。


「クレナイ!! 吾輩はまだ死んではいないぞ!」


 すると、その言葉に肉塊はピクリ体を震わせと気付き、ぐるりと、目のない顔をこちらに向けた。


「これはこれは、まだ生きていていたか、奈落の悪魔」


 わざとらしく、笑うクレナイ様は、再び自身の体から複数の触手を生成し先端をジンドーに威嚇するように向けた。


「今度はちゃんと殺してやる、奈落の悪魔!!」


 そんな殺意のこもったその言葉を、しかしジンドーは意に介さない。

 ただ彼の意識にあるのは、たった一つのことだけだ。


「ヒナタさん待っててくれ……今そこから引き摺り出す!」

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