第30話 行方不明者
──ちゃりん。
鈴の音がする。ああ、またこの夢か、私は気を確かに持つ。あの時と同じ、どこか浅瀬の水場で、水平線の見え、鳥居が立っている。
あのいつもの場所だ。私は相変わらず動けない。また後ろから近づく足音が聞こえてくる。
静寂の中を規則的にゆっくりと水に足をつける音が鳴り響く。
そして、その音の主は私の背後にくると言った。
「運良く好きな人は死ななかったね」
恐らく、須藤先輩のことを言っているのだろう。
私は言い返す。
「もうやめて……先輩や他のクラスメートの人は関係ないでしょ!!」
私の言葉はしかし彼女には届かない。
「待ってるよ」
返答にならない発言。私もそれ以上、言葉を発しようとしたが、その前に浮遊感とともに、目の前の景色が急に切り替わったのを感じた。
窓から差し込む夏の気配を感じる陽気、いつもの部屋だ私のよく知る。
目が覚めたのだ。
結局、何もわからなかった。私はベットから上体を起こす、こうやって何もわからないまま、また目が覚めるというのはなんというか胸にモヤモヤが残る。
「クロカミ様……」
ボソリと私は呟く、これは脅迫だ、はやく生贄に来ないとさらに被害を拡大させるという。
だがだからといって、当のクレナイ様に至る手がかりすらないのもないのも確かだ。
「どうしろっていうの?」
そう言わずにはいられない。ただ確かなのは私は生贄にはなりたくないという確かな、思いだけだった。
どうすればいいかわからない私はベットから出て、自室から出る。すると香ばしい匂いが鼻につく。誰かが食事の準備をしているのか。
ジンドーがつくってくれてるのかな? と予測して、階段を降りてリビングの扉を開けた。
「まぁ! ジンドーくん手際いいわね!」
「ありがとうございます!」
お母さんが、いた……。え、なんで……今日は母さんがいるのだ、てっきりまた家に帰れないほどの激務かと思ったのに。
何故ジンドーは母さんとご飯を作っているのだろうか。
「あ、界さん」
「あ、ヒナちゃんおはよう!」
「母さん! 帰ってきてたの!?」
「ええ! そしたらなに! ちょっとあなた男の子連れ込んで!」
「な、ちがう! ちがうからね! まだそういう関係じゃないから!」
「大丈夫! 最初びっくりしたけど、朝早くからうちの家、掃除してるような子が悪い子なわけないから!!」
そんなことしてたんだジンドー。
じゃなくて! なんでそんなことを! いやこうなったのは私の責任だ。昨日の段階で私はどうせ母さんが、帰らずビジネスホテルにでも泊まるのだろうと、と思い、お風呂から上がった後すぐに寝てしまったのだ。
それで、この結果か……私は頭を抱える。何故こんな時に限ってお母さんはちゃんと帰ってくるのだ!
「ジンドー君、礼儀正しいし、お母さん気にいっちゃった」
どうやら母さんとジンドーのファーストコンタクトは良好らしい。
「最初泥棒かと思ったけど、すごくイケメンだしぃ、もうやるじゃないヒナちゃん!」
「だ、だから、ちがうって──」
「あ、ミキさんできました」
「ありがとうジンドー君!」
ジンドーは料理をさらによそう。あ、ベーコンエッグ美味しそう。ってそうじゃない!
「ミキさん!? ミキさんって何?」
「いや、界さんって呼ぶと混乱するし……」
私のツッコミに対してそう返すジンドー。あ……何故かモヤモヤする、なんだこの気持ちは。
そんなこんなをするうちに、ベーコンエッグはパンと共に机に並べられ、私たちは席に着いた。
「いやー料理作ってくれるなんて、本当に助かるわ、ジンドー君!」
「いえ、家に上がらせていただいて、さらにお風呂まで頂いたのでこれくらいは……」
「まぁ!!! ほんといい子!」
「お母さん!」
私はお母さんを嗜める、すると母さんは「ごめんなさい♪」といってご飯を美味しい、美味しいと食べだす。
ぐ、うう! 恥ずかしい!
でも、ベーコンエッグは美味しかった、不思議といつもの食パンも美味しかった。
ジンドーがいたからだろうかなんて少し恥ずかしいことを考えた。
─────────────
「じゃあ! 私! また仕事行ってくるから!」
「うん……行ってらっしゃい……」
「あ、ヒナちゃん!」
「なに?」
「交際は清く正しくね!」
「違うっていってるじゃん!! いってるじゃん!」
「おほほ! またねぇ!」
バタンと扉が閉まるやっと行った。
「ミキさん、面白い人であるな」
「なんかごめん」
「いやいや大丈夫なのである!」
ジンドーに謝る私だったが当の本人は全く気にしていないようだ。
あとこれだけはハッキリさせなければならない事がある。
「ジンドー」
「なんであるか?」
「ヒナタって呼んで」
「え、でも……」
「い、いいから!」
ジンドーは少し考えたあと、改めて何故か恥ずかしそうにしながら、
「ひ、ヒナタさん」
と言った。
「な、なんで恥ずかしそうなの」
「いや、なんか界さんで慣れちゃってたから」
ハハと笑うジンドー。私まで恥ずかしいじゃないか。
すると、唐突に携帯の着信音がなる。誰のだろうと辺りを見回していると。母さんの携帯が机の上にあった。
何をやってるんだと思って見てみるとどうやら連絡網が回ってきたようだった。
わたしはどうせ自分に関係ある事なら聞くことになるのだろうと思って母さんの携帯の画面をよく注視する。そこには衝撃的なことが書いてあった。
──件名 行方不明の明田コノミさんの目撃情報について
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