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奈落の悪魔と雨に踊れば  作者: 青山喜太
出会い編

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第27話 罪悪感と共に

 上空で轟音がした。どっちが勝ったんだろう。

 だめだ頭が回らない。しっかりしろ界ヒナタ。私がどうにかしないと先輩が……。


 わかっていても力の抜けた足では立ち上がれない

 そんなただ呆然としている私の耳にとドタドタと数人の足音が聞こえた。


「大丈夫ですか!」


 入ってきたのは、救急隊員の人達だった、誰かが救急車を呼んだんだ。


「私は、大丈夫です、でも……」


 私の視線の先に、さらに瓦礫の下敷きになっている生徒がいることを確認した救急隊員は、


「わかりました! ではアナタは自分で移動を、後は私たちに任せてください!」


 そう言って、無傷そうな私を立たせるや否や、救急隊員たちは、後から来た消防隊の隊員たちと連携して、人命救助をし始めた。


 私はただ、その光景を生み出したのは自分なのではないか、という考えを否定できずにいた。

 ジンドーはそんなことないと言ってくれた、でも……

 私は……。


 ─────────────


 事件から数日たった。学校は当たり前だが、休校になった。

 母さんは心配から、事件当日には早めに帰り私の様子を見にきてくれた。

 なんでも母さんの病院に、うちの学校の生徒が緊急入院で来たから驚いたらしい。


 幸い、生徒たちは命に関わるなような怪我はなかった、と言っても先輩のようにどこかを骨折をした人は、入院する必要もあるようだ。


 学校の事件の方は、どうやらジンドーが手回しをしてくれたのか、原因不明のガス爆発か何かということになったらしい。


 少なくとも大男、あの鬼の存在を触れるような報道はなかった。

 それが幸いしてなのか、私は、私たちは精神的ショックもあるだろうからという理由で特に警察からも取り調べは受けていない。


「私のせい……」


 ボソリ、自室でつぶやく私は、自分でも精神的にも参っているのが分かる。


 とにかく、何かしなければ、そうだ先輩に謝らなくてはならない。

 今回の事件は私が原因なんだから、何か償えることをしなきゃ。

 そんなことを考えつつただ私は、何かしていないと、罪悪感で押しつぶされそうなのをなんとかしたいだけだった。


 だってそうだろう、本当はできることなんて何もないくせに。


 それ以上考える前に私は、玄関へと走っていった。償えることなんて何もない、でもきっと誰かに会いたかったんだろう。


 そして私は靴を履く、先輩のいるクロカミ病院に向かって。


 ─────────────


「あの、お見舞いって可能ですか?」


 私は、クロカミ病院の受付の事務員の女性に恐る恐る聞いた。

 すると事務員の人は私の顔を見るや否や。


「ああ、ご友人の方ですか?」


「いや、まぁ、はい……」


 ご友人ではないような気もするがそれでも話はトントン拍子で進んでいった。

 どうやら他にも、先輩の友人はいるようだそのおかげで入管証首をいともたやすくもらい、そして下げて私は行く。

 先輩の病室、三〇一号室に。


 謝らなきゃ、謝らなきゃいけないんだ。

 そんな思いの一心で私は廊下を歩いていく、エレベーターに乗り三階に着く。


 三〇一号室はエレベーターからすぐ近くだった。廊下を歩きナースステーションを通り過ぎたところに三〇一の文字が見える。


 私の胸の鼓動は段々と早くなっていき張り裂けそうな心臓が叫んでいた。


 会ってなんていうの? 謝って何ができるの? 私は何ができるの?


 その自分の問いに答えが出ないまま、私は三〇一号室の近くに来た。


 扉が開いている。少しだけ、話し声が聞こえる。

 須藤先輩と、誰か知らない。女の人の声。


 その時だった目に映ってしまった。須藤先輩が、その知らない女の人とキスする所。


 私は咄嗟に、隠れる。須藤先輩に気づかれないように。そして何もできもしないまま、私はそこから立ち去った。


 何が、何が、何が!!!


 謝りたいだけ、だ!!


 私は病院から飛び出した後、訳もわからず早歩きで歩いた。どこかに向かうわけでもないのに、家とも学校とも違うどこに通じるともわからない道を早歩きで歩きながら──。


 私は泣いた。


 結局、私はただ先輩に会いたかっただけなのだ。そして慰めてもらいたかっただけ。

 恋人がいるなんて知らなかった。

 知らなくて当然か、私は、学校にいなかったんだから……私は、私は!!


「死んじゃいたい……」


 情けない自分がいた。どこかの道の、人通りの少ない道で膝を抱えて、うずくまってしまう自分がいた。こんなの馬鹿みたい。


 勝手に期待を押しつけて、勝手に裏切られて、泣いてる。

 先輩は何も悪くないし、私は何もしていない。

 むしろ先輩に危害を加えたのは私のようなものだ。


 それなのに、謝れもしなかった。ただ自分の恋が叶わなかったという事実を突きつかられて逃げ出してきただけだ。

 本当に私はどうしようもない。


 私は死んでしまいたかった。


 なんで今生きているのかすらわからない、こんなしょうもない人間なんて……。


「どうしたであるか?」


 そんな時だ。声がした、私のよく知る声。


「もうすぐ夕方、雨も降るであるよ」


 ジンドーがうずくまる私の視線の先にいた。

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