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奈落の悪魔と雨に踊れば  作者: 青山喜太
出会い編

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26/63

第26話 自責のコーラスが止まらないから

「先輩!!」


 叫ぶ、声が枯れるぐらいに、先輩か血を流して倒れている。しかも足が瓦礫の下敷きになっていた。


 訳がわからない何が起こったんだ。

 そんなふうに混乱している時、瓦礫によってできた煙の中から、奴は出てきた。


 大男だ。校舎を破壊したあの鬼のような。ジンドーが戦っていたはずじゃなかったのか、なぜここに奴がいるのだろう。


 そんなの決まっているじゃないか、頭の中で変に冷静な私は呟く。


 ──ジンドーは負けたんだ。


 ただ、その事実を受け入れるしかない。

 これはツケだと思った。今までジンドーに頼り切ってきた分の。私は何もかも彼に任せきりだった。だからその分の負債をいま返す時が来たのだと。


 血を流している須藤先輩が、呻く。

 ああ、なんてことだ、先輩は大丈夫なのだろうか、なんでこんなことに。


 ──アンタのせいよ!


 頭の中にそんな声が響く、明田さんの声で。

 私のせい、私の……そっか、これは私のせいなのか。


 学校に行きたいと思ったのも。本当は思っちゃいけないのか。

 本当は須藤先輩のことを好きだなんて思っちゃいけなかった。


 その結果がこれじゃないか。


 先生や生徒達は逃げ始めていた。私のことを責めた明田さんももうここにいない。どこかへ逃げたのだろう。

 そんな生徒たちを、無視して大男は私に向かって、ゆっくりと近づいてくる。


 やっぱり標的は私なのだ。


 その事実がさらに私を責める。やっぱり私がここにいるからみんなこうなったのだという事実を補強するような気がしたから。


 もういい……もういい、私はあの時、やっぱり、いや、でも……そうだ──。


「──死ぬべきだったんだよあの時さ」


 ポタリと私の涙がこぼれ落ちた。


 ─────────────


「そんなことない」


 僕はそう言った。彼女に向かって。


「ジンドー?」


 ボロボロの体、吹き飛ばされ体のあちこちは傷だらけそれでも、彼女の目の前には僕は戻ってこれた。


「言ったろ。君が死ねば僕は悲しい」


 界さんは何も言わない。僕は愛刀の天涙(てんるい)を構える。

 今は、全力を出すだけだ。

 目の前の鬼に向かって全てをぶつける。


「貴様……往生際が……悪いな……」


「そうかい? もっと僕に付き合ってくれよ、頼むからさぁ!!」


 僕は刀を構えて、力を全身に込める。

 今なら、使える。


「我、四肢を雨に晒し──」


「──詠唱!!」


 鬼は、僕に対して拳を振るってくる、だが、その拳を刀の峰で弾き返す。


「なに?!」


「悲しみを討つ──!」


 そして蹴りで、驚愕したままの鬼を吹き飛ばした。


「永遠の雨空に終焉を告げる者! 我が名は!!」


 そして力いっぱいに叫んだ。僕たちの名を。


奈落の悪魔(ラフメイカー)!!」


 僕の体は光に包まれる、背中だけでなく、頭と腰にも羽が生える。

 星空を閉じ込めたような模様の羽は広がり、体にまとわりついた。


 頭の両羽は僕の顔を覆い隠し、仮面となり。

 腰の羽は腰にまとわりつき、羽のコートと化した。


 この姿になるのは久しぶりだ。


「なるほど……」


 鬼は蹴られた腹を押さえながらいう。


「それが……貴様の真の姿ということか」


「真の姿なんてないよ、今の僕に……」


 皮肉げに僕は言った。


「だがそうだな、あえていうなら、これは君を倒す時の姿だ」


「ふん……やってみろ……!」


 鬼は再び僕に襲い掛かろうと体育館の床を蹴る


 だが、もうここでは戦わせない。

 僕は鬼の床を蹴るのと同時に、飛び出す。

 そして一瞬で鬼の懐に入ると。そのまま体当たりを繰り出す。


「ぐっ……!!」


 鬼の体をそのまま、こいつが開けただろう天井の穴まで持っていき、空まで連れて行く。

 この空中でなら気にせず戦える。


「貴様……!」


 鬼は僕の体当たりの衝撃を受けつつも、拳を僕に向かって突き出して僕の体を吹き飛ばす。

 衝撃を殺し僕は空中に止まった。図らずもこれでお互い距離を取れたというわけだ。


「面白い……ここで、決着をつけようとしよう」


 鬼の言葉に答えるかのように、刀を構える。


 お互いに沈黙が流れる。その間に、鬼は拳を握りしめ、僕は刀を構え直す。


 そして、何の前触れもなく、殺意のこもった斬撃と殴打が空中でぶつかり合う。

 衝撃波が、辺りに波及し、学校と近くの民家の窓ガラスが割れる。

 刀は拳によって弾かれるも、鬼の方もどうやら刀によって負傷を負ったようだ。

 拳から血が噴き出ている。

 お互いの一撃が決定打にならないと分かるとそのまま、僕と鬼は二撃目を繰り出す。


 だが、今度は拳と刀は交わらなかった。


 刀を瞬間的に加速させて拳をすり抜けさせ、そして鬼の攻撃を僕自身かわしつつ、そのまますれ違い胴体に一撃を入れた。


「が……! ぐ……う!」


 鬼の切り裂かれた胴から血が噴き出る。

 そしてそのまま、空中に止まる力すら失ったのか、ぐらりと鬼は体勢を崩す。


 そのまま崩れ落ちるかと思った瞬間だった。


「舐め……るなぁ!!」


 鬼の体に電流が走る、可視化されるほどの強靭な雷を纏った鬼は、叫ぶ。


「うおお!!」


 その叫びは天にまで轟き、そして、雷を全範囲に撒き散らした。


 それは稲妻の花が空中で咲いた。

 本来なら避けようもない鬼の全身全霊の一撃だ。

 だが、今の僕は違う。


「なんだと……!」


 鬼の驚愕の声が僕の耳にも届いた。僕は未だに空中に止まっていた。

 耐えたのだあの電撃の雨を。


「馬鹿な……この一撃を……」


「言ったろ……?」


 天涙が、黄金に輝き出す。


「この姿は君を倒すためのものだと」


 そして黄金の輝きと共に僕は刀、横一文字に振るった輝きは光波に変わりそして──。


「な……! ぐおお!!」


 そのまま鬼は黄金の光波に飲み込まれ、爆発的に広がる金色の光と共に消え去った。


「皮肉なものだ」


忌々しげに僕は呟く。


「明田さんが悲しんだおかげで、少し力が戻ったこれでは、奈落の悪魔、失格なのであるな……」

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