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奈落の悪魔と雨に踊れば  作者: 青山喜太
出会い編

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25/63

第25話 私の……

 弱まっている。その鬼の言葉にジンドーは不敵な笑みで返す。

 だが、あの化物は、確実に見抜いていたジンドーの体の秘密を。


 ──やはりバレるか。鼻が良くて困るのであるな。


 ジンドーは、それでも刀を構えなければならなかった。

 この鬼の目的はヒナタの誘拐か、最悪殺害だ。

 それだけは阻止しなくてはならない。


 しかし、以前のようにジンドーは力を出せなくなっていた。


「くだらん……」


 鬼は吐き捨てる。


「貴様……契約が果たされかかっている……元の世界に魂が戻りかけているような……そんな弱者など相手にならん」


 そう、ジンドーは気がついていた。もはや界ヒナタの心の中に悲しみが消えかかっていることに。

 今、ヒナタの心の中には希望の芽が芽生え始めている。それは喜ばしいことだ。


 しかし、それは同時にジンドーの弱体化も意味していた。

 奈落の悪魔は、悲しみと涙に呼ばれ奈落より現界する。

 だがもし、悲しみと涙が消えかけたら果たしてどうなるのだろうか。


 当然、奈落の悪魔は現界する力が弱まり、やがて元の世界に奈落へと還る。


 奈落の悪魔にとって、ラフメイカーにとって悲しみと涙はこの世という名の海に存在するための酸素ボンベのようなものなのである。


 ──もはや、太った姿にすら戻れんが……!


「それが、どうした……! 弱者かどうかはやってみなきゃわからんだろうが!」


 そうだ、だからこそ、ジンドーは戦わなくてはならない。

 希望の芽が出てきた今だからこそ、その芽を吹き飛ばされるわけにはいかない。


 ──吾輩は! 界さんを笑顔にするためにきたのだから!


 刀を握りしめるジンドーは、足に万力を込めて、地を蹴り鬼に向かって突進する。


 須臾の間に鬼の懐に肉薄したジンドーは、そのまま跳躍し、愛刀である天涙で横一直線に薙ぎ払いを放った。しかしその薙ぎ払いは鬼の急所には届かない。


 首を狙った一撃であったが咄嗟に、鬼の腕が刀を弾く。

 しかしジンドーの攻撃は止まらなかった。日差しが降り注ぐ中、天涙は日光を反射しながら、今度は鬼の胴体に迫る。


 その二撃目すらジンドーは鬼に防がれる。

 だが防がれた瞬間、その瞬間を起点に、ジンドーは高速で刀を何度も振るった。

 まるで流星群ののようは軌道を刀は描き、それを振るうジンドーの手元はもはや常人では見切れない。


 そんな超人的な攻撃すらも、鬼の両手によって斬撃は弾かれていく。それでもジンドーは諦めない、一旦距離を取り翼を広げて、飛んだ。


 そしてそのまま鬼の周りに円を描くように高速で飛ぶ。

 円を数回、描いた跡、ジンドーは唐突に鬼に肉薄し、そしてすれ違いざまに切り付けた。


 その斬撃すらも防がれたが、それもジンドーの計算のうちだった。

 力で敵わなければスピードで勝負をすれば良い。


 防がれた瞬間再び、ジンドーは鬼の視界の死角に飛び、再び肉薄、すれ違いざまに切りつける。

 鬼は咄嗟にその斬撃を腕で防いだものの、明らかに反応は遅れていた。


「姑息な……」


 何と言われようとも構わない、ジンドーは再びスピードで鬼を翻弄する。死角に行き、鬼に向かって突進し、斬撃を放つ。という行為を連続で何回も何回も、ジンドーは繰り返す。


 やがて斬撃と、拳の応酬の末、血が飛び散った。

 鬼の血だった。鬼の頬から血が迸った。


「ぐぬぅ……!」


 鬼は一瞬怯む、その隙をジンドーは見逃さなかった。すかさず、ジンドーは鬼の懐に飛び込む。


 ──終わりだ。


 ジンドーはそのまま、刀を叩き込むべく、横一直線の斬撃を放つ。


 しかしその時だった。


「もう、いい……茶番は……!」


 瞬間、恐ろしいほどの衝撃がジンドーを襲った。

 それは雷だった。

 鬼を中心に発生した。強大な雷、それはジンドーの体を容易に吹き飛ばした。


 ─────────────


「みんな! 落ち着け! 落ち着いてくれ!」


 田中先生の声が体育館に響き渡る。私の目の前には今、混乱して私語が止められない生徒たちの姿が写っている。

 それもそのはずだ、みんな、ジンドーと化物が戦うのを見てしまった。


 先生方も緊急事態ということを理解し、素早くみんなを体育館に避難させた。


 なにせ、得体の知れない化物が学校で暴れているのだ、どうしようもないだろう。

 ひとまず、警察に連絡することになったらしいが、何故か、携帯電話が全員つながらないらしい。


 ジンドーは大丈夫だろうか……あの化物、今まで見たやつよりも強そうだ。


 いけないネガティブになっては、ジンドーならきっと「いやー界さん、今日の敵も強かったである!」なんて言いながら無事に戻ったくるに違いないのだ。


「あんたのせいよ!」


 そんなことを思っていた時、私の耳に、突然の甲高い怒声が叩き込まれた。


「あ、あ、明田さん……!」


 私は思わず体をこわばらせて、声の主を見る。明田さんだ、いつのまにか私の背後にいた明田さんは涙を浮かべながら私を睨みつけていた。

 体育館に集まった。他の生徒たちも、何事かと思って一斉に黙り、私と明田さんに視線を集中させた。


「あんたが! 学校に戻ってくるから!」


「え?」


「あんたが学校に戻ってくるから、私! だからお願いするしかなかったんじゃない!」


 そう言って泣き出す、明田さん。なんだ何を言っているんだ。


「ま、まって、明田さんなんで私が出てくるの?!」


「お願いしたの! しちゃったの!」


「え、あ、な、なにを?」


 ざわつくクラスメート、先生も何がこの異様な空気について行けず呆然としている。


「アンタが学校来れないようになりますようにって!」


 ビシリと音がした、全員がその後のする方に視線が向いた。

 そこは体育館の天井だった。

 そして次の瞬間、体育館の天井の一部が崩れた。おちてくる瓦礫に、驚く生徒たちは一瞬遅れて、走り出す。


 崩れてくる天井に何人かの生徒が下敷きになる、照明も落ち、火花が散った。

 私はただ、運が良かった、呆然としてても、大丈夫な位置にいただけだ。

 私は無傷だった。

 私は。


「須藤先輩……?」


 私の目の前には頭から血を流す、須藤先輩の姿があった。

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