第23話 おまじない
学校の通学路、電柱と、白線とたまにおはようが聞こえるだけのなんの変哲もない道。
その道を私は歩く。周りの目を気にしながら。昨日は結局よく眠れたような眠れなかったような、それほどまでに先輩と話せたのが嬉しかった。
できれば先輩と一緒に行きたいかったが。先輩は部活の朝練があるため時間が合わないのである。
でも、もし可能なら朝早く起きて先輩といつか先輩と一緒に……なんて考えながら私は休み明けの学校へと向かって行く。
こんな風に学校に行けるようになれるなんて私も驚いた。
これも恐らくジンドーと、そして先輩のおかげだろう。あの二人のお陰で私は学校に行く勇気をもらえたのだ。
「勇気……か」
もし二人がいなかったら私はどうしていただろうか、想像したくもない。
だが逆に言えば、私は今とても環境に恵まれているとと言えるわけだ。
そのことに感謝しながらも今日も私は無事学校へ到着した。
何事もなく、襲われることもなく。
環境には恵まれている。後は懸念すべきはクレナイ様だけだ。
早く彼女とも決着をつけなければならない。私や、周りの人達のためにも。次は父さんにでも電話をしてみるか、いやでも母さんと話は変わらないだろう。
そしてそれよりも今は学校生活をきちんとこなさねば。教室に移動した私はいつも通り鞄を机の横にかけ一時間目を確認する。
今日は数学か、なんて、確認していると──。
「みんな、おはようなのである」
ジンドーが教室に入ってくる。しかしいつもとは様子が違った。
「な……!」
ジンドーは痩せていた。イケメンモードに変わっていたのだ。しかし、羽は生えていないあくまで普通の人間の姿を、中学生の姿を保っている。
「お! おはよう大福」
「おはよう! 仁斗!」
しかし、周りのみんなは驚きもせずに受け入れていた、私がおかしいのか?
ジンドーは私の隣に座る。いつもと同じように、いやいやいや! なんで平然としていられるのだみんな!
先生もきて授業が始まる、先生までジンドーの変化に気がついていない。なぜだ!
そして、一時間目が終わった後、私はこっそりとジンドーに話かける。
「ジンドー! なんで……痩せてるの……!」
「ああ、これであるか? 衣替え! である……!」
「で、でも目立つんじゃ、というかなんでみんなスルー……?!」
「界さん、舐めちゃぁいかんのである、吾輩は悪魔、周りのみんなには催眠をかけてあるのである、というか国籍などを持たない吾輩が学校に来れたのも催眠術で学校側を騙したお陰なのである」
「そ、そうなの?」
「そうである、だから周りのみんなはきっと、いつもと同じ大福 仁斗として見ているはずである」
「でも、わざわざなんでそんな面倒なことを? 衣替えって言っても……」
「……衣替えであるよ、お洒落がしたかったのである」
何か含みがあるような気がするがそれ以上私は聞かなかった、二時間目が始まるからだ。次の教科を机の上に起き、そのまま授業に集中すると、痩せたジンドーが隣にいるのも別に気にならなくなってしまった。
─────────────
二時間目休み、ジンドーは考えていた。なぜ、前回の人面蜘蛛の襲撃、あの化物は唐突に現れたのか、気配が消すのが上手い怪異ではあったが、ジンドー自身が探知できないほどではなかった。
だというのに、最初に界ヒナタを襲った時、完全にあの蜘蛛の化物唐突に姿を現した。
そうとしか言いようがないほどに、気配が突然現れたのだ。
そのことがジンドーにとっては不可解だった。
──まるで誰かに召喚されたかのようであるな。
考えすぎか。
そう思いつつ、懸念が拭えないジンドーは、それを振り払うために、ヒナタと別れ、クラスメートと話あっていた。
「なぁ、大福」
「なんであるか?」
たわいもない、会話をしている最中だった。
「そういえば知ってる? 願いを叶えるおまじないってやつ」
「……いや知らないのである」
「なんか、女子の間で流行ってるらしいぜ」
そのクラスメートが言うには、この学校ではとあるまじないが流行っていると言う。
なんでも、ここの学校に生えている太い松の木に、自分の願いを言うと、それを叶えてくれるらしい。
どこにでもあるような、普通のおまじないだが、これにとある工程を加えるとさらに効果が上がるらしい。
「なぁ、知ってる? 自分の爪とか髪の毛とかをその松の木に添えるらしいぜ、怖いよなぁ」
「……ちなみに、その松の木はどこにあるのであるか?」
「体育館の裏だよ、誰もいかねぇんだだから、結構くるらしいぜ、お願いしにさ」
それを聞いてジンドーは嫌な予感がした。怪異が現れる原因は、クレナイ様が、怪異を使役しているものだと、ジンドーは推察していた。
だがもしそれが間違っているとしたら、分霊を倒したから、クレナイ様はしばらく手が出せない、もしそれが間違いだとしたら。
いつの世も神とは、求められるからいるものだ。
ジンドーは走る、その松の木まで、走り、そして走り、ついにその体育館裏まで到着した。
そこには、明田コノミがジンドー背を向けて、松に向かって手を合わせていた。
彼女の足元には何かの箱が。
コノミは気配に気がついたのか、ジンドーの方へと振り向く。
「ちょっとあんた、何見てんの」
「何をお願いしたであるか……!?」
「あんたには関係ない」
「あるのである!」
ジンドーは焦っていた。
「は、キモ」
「早く! その願いを取り消せ! 明田さん!」
「何を言って……」
その瞬間だった。
「願いを……承った……」
その巨大な松の木以上の巨躯が空を覆ったのは。
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