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奈落の悪魔と雨に踊れば  作者: 青山喜太
出会い編

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第21話 先輩

 家から最寄りバス停でバスから降りた私と母は、お互いに顔を共に歩き始めた。


「それくらいかなぁ、お母さんが言えることは」


 母は歩きながらそう言った。


「他には本当にないの?」


「うーん、そうね、特にはないかな……」


 そっか、と私は呟く。確かに母さんはなんでも知っているわけじゃない。ここまでだろう。

 あれ、そういえば、誰か忘れているような。

 あ……。


 ジンドー! ジンドーはそういえばどこにいるのだろうか?

 バスに急いで乗ってから、ジンドーの姿を見ていない。ていうか結構焦っていたんだな私は。ジンドーの存在を忘れるなんて……。


 私は辺りを見回した。ジンドーを探すために。


「どうしたの? ヒナちゃん」


 母さんが不思議がる。えっと……なんといえばいいのだろうか。


「い、いやぁなんていうか……ひ、久しぶりにここに来るなって思って」


 だめだ良い言い訳思いつかない

 私の言った通りどこかへ身を隠してくれたのだろうか?

 だめだ探しても見つからない。ていうかジンドーは普段どこにいるのだろう。


 まあしょうがないか、私と母は歩き始めた。


「ヒナちゃんそういえば、ご飯まだじゃない? ここ近くに最近新しいコンビニできたのよ!」


「え? そうなの?」


「そうなの! 名前はえっとなんだったっけ! でもねすごいのよ店員さんがたまにしかいなくて完全、セルフレジ制!」


「え? 防犯大丈夫なの?」


「わかんないけど、まぁすごい最近できた場所なの、だからまぁなんか最新の防犯システムがあるんじゃない?」


 そういうものだろうか、でもお腹が減ったのは事実、とりあえず、その新しいコンビニに行ってみることにした。


 ─────────────


 そのコンビニは確かに私の家の近くにあった、通学路には被らない、絶妙な位置。私も知らないわけだ、名前はえっと、ディアボロマート、なんだすごく不吉な名前だ。


 まぁとにかく入ってみるか。

 母と一緒に久しぶりに買い物なんて、今日は珍しい──。


「いらっしゃいませなのであるー!」


 そこには満面の笑みのジンドーがいた。


「じ、ジンドォォォ!!!!」


「あら、店員さんこんばんは、何、知り合い? ヒナちゃん」


 私は驚いたまま固まってしまう、いや知り合いていうか、いや知り合いも何も!


「な、なんだ……ろう、その学校の友達……」


「まぁ!!」


 なんだその反応は、まて何を勘違いしている! オカン!!

 やめろ!


「そうだったのぉ!! あの、これからも娘をよろしくお願いしますね!!」


「いやはや! 逆にいつも、界さんには助けていただいているのであります!!」


「まぁ! 礼儀正しい!? ちょっとヒナちゃんよかったじゃないこんな良い子が友達なんて!」


 うおぉぉぉ……めんどくさい! めんどくさい!!

 友達なのはそうだがすぐに母は恋愛に結びつけそうで嫌だ。

 そりゃあ確かに、ジンドーはいい人だ!


 でもその……私は先輩が好きだし……!


「あ、私ご飯選んでくるから!! 二人で話しててね! オホホ!」


 何がオホホだ!!

 心の中でつっこむが、母もうすでにその場から消えていた。目を離した隙にお弁当コーナに行ったのだ。


「なんかごめんジンドー……」


「いやいや! いいのである! どうせ他のお客様いないであるからな!」


「もしかして、その……ジンドーの資金源ってこのコンビニ?」


「そうなのである!」


 ジンドーは胸を、張ってそう言った。なるほど通りでお金があるわけだ。同時に私は感心してしまった。ジンドーは私の見えないところでこうやってお金を稼いでいたのだ。

 悪魔らしからぬ、こんな正攻法なやり方で。


 その事実がなんだかジンドーらしくて安心した。それにしても、よくこんなセルフレジなんていう、最新の機器を揃えられたものだ。


「ねぇ、ジンドーどうやってこんなコンビニ作ったの?」


「吾輩は奈落の悪魔! なんでもできるのである! というのは冗談で、ここだけの話、これハイテクじゃないのであるよ」


「え?」


「全部吾輩の力で作り出した、ガワだけのハリボテのコンビニに、吾輩の力で生み出した使い魔たちを機械の中で動員させているだけなのである! 発注も全部使い魔たちがやってらのである!」


「つ、使い魔なんて使えるの?」


「うむ! まぁ、吾輩の魔力で作り出した分身みたいなものである、分霊と同じであるな! あ! 別にこの程度の分身では護衛に支障はないから安心して欲しいのである!」


「別にそこは心配してないけど……」


 見れば見るほど普通のコンビニエンスストアだ。唯一違うのは、今母さんが真剣に悩んで選んでいるお弁当が全部手作りなことぐらいか。


「それで、情報は聞けたであるか?」


「あ、うん! だいたいはね! ジンドーはそういえばいつからここにいたの?」


「いやぁ! 界さんがバスに急いで乗ったあと、やることもないからここの様子を見にきたのである!」


「そっか、ごめん置いてあったみたいな感じになって。後で、情報共有しようね!」


「うむ!」


 その時だった。入り口の自動ドアが開いたのは。


「あれ? えっと……界?」


 コンビニの中に入ってきた人は私のよく知る人。それどころか、今一番、会いたい人だった。


「あ……! 須藤先輩……!!」

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