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Quest30

「なんで剣聖がここに……」

「なんででしょうね?」


リュークはここの看板娘であるミーシャに案内される剣聖をチラチラと見る。

確かにここは巷でも有名な店で、ギルドも紹介するような優良店だが、剣聖という地位のあるものの来るような場所ではない。

なにせ、ここは東地区。裕福な市民や商人は居るが、貴族や大商人、またそれに類する者は殆ど足を踏み入れることすらない。

それこそ、そういった人間は冒険者ギルドに依頼を出すときも王国本部であるこちらに出向くのを嫌い、それに配慮したギルドが中央区に支部を作るほどだ。さらに言えば、東門から王都に入ることすらしない者も存在する。

そんな地域にあるこの酒場に剣聖が来たという時点で謎なのである。


「リュークさんに会いに来たとか?」

「ははっ、まさか。僕は金級の末端だよ?これが白金やミスリルならともかく、それはないよ」


首元のプレートを指で弾きながらリュークは笑う。

一応、上位冒険者に位置付けられる金級だが、なったばかりのリュークの地位はそれほど高くない。そんな自分に剣聖という存在が会いに来るわけないとリュークは言い、笑ったのだ。

そんなリュークの笑い声は澪夜たち以外に剣聖しか居ない酒場の中でよく響いた。


それこそ、剣聖が澪夜たちのテーブルを一瞥するくらいには。










「あのご注文は?」


勇者だ!あの剣聖に臆することなく話し掛けた彼女は勇者だ!僕だったら緊張して話し掛けられない!と、少し騒がしくなったリュークの目線の先には、看板娘のミーシャがお盆を手に剣聖へ話し掛けていた。

いや、ただ単に剣聖ってわかっていないだけでは?と澪夜は思うが口には出さない。


「そうね、オススメを教えてもらえるかしら?」

「オススメでしたら、三角バッファローの煮込み、炎牛焼きです」

「なら、その2つを貰おうかしら」

「わかりました。他にご注文はございますか?」

「そうね……ならパンと水を」

「はい」


そんなやりとりを聞きながら、リュークは手元の三角バッファローの煮込みを口に入れた。

何度か咀嚼し飲み込み、澪夜を見る。


「剣聖は三角バッファロー食べるんだね」

「まあ、頼んでたからには食べるんじゃないですか?」

「確かにこれはおいしいけど、貴族が食べるイメージはあんまり無いんだけど」


三角バッファローの煮込みは、赤ワインで野菜と一緒にじっくり煮込んだ料理だ。手間も材料費もかかっているため割高ではあるが、美味い。だが、貴族が食べるような料理ではないことは確かだ。


「剣聖って貴族だったんですか?」

「うん、ああそうだよ」


炎牛焼きを口に運びながら聞いた澪夜にリュークはワインを飲み干してから答える。


「剣聖、エリシア・リラ・ド・フォン・アルカディア。由緒正しき王国貴族の中の王国貴族、重鎮中の重鎮アルカディア公爵家のご令嬢さ」

「アルカディア……?どこかで聞いたような」

「そりゃあ、どこかで聞いたこともあるだろうさ。有名だもの…………からっ」


澪夜の言葉にそう言いながら炎牛焼きを口に入れ、その辛さに慌てて、ワインを飲もうとする。


炎牛焼き。

まあ、簡単な料理だが香辛料に漬け込んだ肉を焼き、さらに特性のソースを掛けたことでとても辛い。

そのため、炎を吐くほど辛い牛肉を焼いたもの、で炎牛焼きというわけだ。

香辛料が簡単に手に入るこの国だからできる料理であり、もし他の国でやろうとすればこれは相当な高級料理になってしまうだろう。


「リュークさん、ワインもう無いですよ。注文しますか?」

「お、お願いするよ。ちょっと、口が痛い」

「わかりました……ミーシャちゃん!ワインを1本お願い!」


「はーい」


「レイヤくん……よくこれを顔色変えずに食べられるね……」


ワインを注文し終え、もくもくと炎牛焼きを頬張る澪夜を、リュークは舌を出してどうにか痛みを無くせないかと試行錯誤しながら恐ろしいものを見るかのような目で見る。

炎牛焼きは不味いわけではない。ただ、醍醐味としてその辛さを感じ酒と一緒に楽しむというのが定着しており、家庭を除き酒場などでは普通よりも辛くなっていることが多い。

そんな炎牛焼きを澪夜はなにか飲むでもなく食べすすめているのだ。

リュークからしたら驚き以外のなにものでもない。


「いや、ほんとにレイヤさんすごいですよね。ウチの炎牛焼きはかなり辛めに作ってるってお父さん言ってたんですけど」

「だよねぇ。僕がおかしいんじゃなくてレイヤくんがおかしいんだよね」


ボトルのワインを持ってきたミーシャが会話に入ってくる。

やはりミーシャからしても澪夜はすこし異常なのだろう。


「まあ、昔から辛いものをよく食べてたからじゃないですかね。ほら、蒙○タンメンとか」

「モ○コタ○メン?」

「ああ、いや故郷の麺料理です」


そんなものがあるのか、くらいにリュークは相槌をうち、ワインを注ぐ。

その間も、澪夜は炎牛焼きを食べながら、アルカディアというどこかで聞いた名前を思い出そうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても良いです、物語の展開もかなり流動的です。 [気になる点] ギルドでより多くのステータスとより速い上昇をお願いします。 [一言] 歴史を通して世界で最も有名になりました。
[気になる点] 続きが気になりすぎる
[一言] 続き楽しみにしてます!
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