表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

Quest25 

基本的に、戦闘というのは敵の数が多ければ多いほどに不利になる。

それは一々考えなくともわかることだ。

しかし、そうであっても一対多という状況での戦闘がおきてしまうのがこの世界である。

実力差が大きく離れていれば多数相手でも勝てるだろうが、そんな事例はほとんどなく普通は同程度の実力の者と戦うのが常だ。

だからこそ、剣や槍といった武器を扱う流派の中には一対多を想定した型が存在し、様々な戦い方が研究されている。


そんな中で澪夜が見せたこの一連の攻撃は独学とはいえ上位冒険者手前の銀級冒険者まで剣一本で登り詰めたリュークを驚愕させるには十分だった。



自分が起こした惨状に澪夜が顔を顰めていると生き残ったオークたちが騒ぎ出した。

人間の言葉に翻訳すれば「アイツやべぇ!逃げるぞ!」といったところだろうか。

澪夜が顔を顰め、リューク達が呆然としている間に相手が動かねぇならこれ幸いと散り散りになりながらオーク達が走り出した。


「あ……逃げた」

「追い掛け……るのはこの時間じゃ危険だね。それにあの数じゃ逆にこっちがやられかねない。処理をしてから休み直そう」


逃げ出したオークの背中を見ながらリュークは冷静に判断を下した。


夜の森であることを考慮すればこれは正しい判断だったのかもしれない。

しかし、このオーク達を逃したことで後に起こる事件がさらに大きなものになるとは誰も思っては居なかった。





◇◆◇◆◇


討伐難度14。

一般的なオークの強さを大まかに表したのがこの数値だ。

冒険者で言えば赤銅級の中位以上なら近接職3人掛かりで、銅級の中位あたりなら1人で倒せるというのが大まかな指標だ。

大まかなというのは成長などによってその強さが上下するからである。


そんなオークだが、今回戦ってみたオークは一般的なオークと言って差し支えないだろうというのがリュークの感想だ。

パッと見上位種と見られる個体は居らず、戦った範囲ならば稀に見られるただのオークでありながらとんでもない強さを持つ異常個体も居なかった──いや、実際には居たのだがリュークたちと当たる前に澪夜が磨り潰していた。


しかし、だからといって澪夜の異常性が変わるわけでは無かった。


討伐難度14というのは前述の通り銅級なら1人で倒せる強さだ。そんなモンスターが40体というのは銅級や鉄級ならばキツイとしても銀級のそれも比較的上位に位置付けるリューク達ならばしっかりと連携を取ればそれほど怖くない数である。それほどに冒険者の階級には実力差というものが存在するのだ。

だがしかし。

一度の攻撃でおよそ半数のオークを殺すというのは銀級であってもできることではない。

魔術師による魔術なら時間は掛かるものの一応可能ではある。事実、リュークのパーティーには魔術に秀でたエルフであり、大魔術師(アークウィザード)のクラスに就いているミュウが居る。彼女の魔術ならば澪夜がやったようなことをすることも可能だろう。

だがそれは魔術だからだ。

澪夜が魔術を使ってオークを殺したのなら納得をしよう。

なにか魔導具を使ったのなら納得をしよう。


しかし、澪夜はおそらくは剣術スキル系統のなにかしらのアビリティ──技だからアーツとでもいうべきだろうか──を使っていた。


そんな技をリュークは知らなかった。


そして、同時にただただそんな技を容易く使う澪夜がリュークは羨ましかった。












◇◆◇◆◇


「……オーク、ですか?」

「正確にはオークとコボルトの混成ですが、そうです」

「そうですか……」


ふむ、とルーシアは顎に手を当てた。



冒険者ギルドの一室。

そこにはルーシア、リューク、ミュウの三人が集まっていた。

その目的はアヴルル森林での戦闘、野営に関する報告なのだが、それを語る上では昨夜の戦闘は外せないものだった。


「リュークさん、ここ最近オークだけでなくゴブリンやコボルトとの戦闘が多いというのをご存知ですか?」

「それは知りませんでした」

「そうですか。なら、説明させていただいてもよろしいですか?」


ルーシアの問いにリュークは即座に頷く。


「それでは……一ヶ月程前から王都周辺でのオークの目撃情報が多くなっていました。コボルトやゴブリンも同様にです。

ですが、オーク達は発情期になると動きが活発になるため同様のものだろうと判断し、各方に警戒を出しました。ゴブリンに関しては元々の数が多かったことから特に警戒を出すということはしていませんが」

「まあ、普通はそうですよね」

「はい。いつも通りならオークの発情期は一週間程度で終わり特に活発になることもないのですが、今回に関しては今もまだその動きは活発なままです。

最近ではオークを見ることのなかった場所にも群れが現れ、商隊も襲われることが多々あるそうです。

それと、これは広めないでいただきたいのですが…………とある貴族の馬車もオークの群れに襲われたそうです。そしてそこには上位種の中でもトップクラスと言われるオークベルセルクが居たらしいです」

「なっ……」


思わず叫びそうになったリュークの口を隣に座っていたミュウが無言で塞ぐ。


「ルーシア、それが本当だとしたら」

「はい、相当危機的な状況だと思われます。

オークベルセルクは上位種ですが、オークバーサーカー以外のオークやゴブリン種などの支配は基本的にしないというのが通説です。

ですから……ここ最近の動きや数を考えると……」

「支配階級、王種が生まれたと考えるのが妥当」

「はい。ギルドも同じ考えです。それと、同時に問題も」

「わかってる。生まれながらの王か、それとも進化したのか」

「そのとおりです。もし、今の仮説が正しければ…………かつての様な大きな混乱が起こります。リュークさん、ミュウさん、お二人にこの話をした理由はおわかりですね?」

「は、はい」

「もちろん」

「現在、王都にはミスリル級冒険者が28人、白金級が64人、金級が143人、銀級が324人居ます。その全員に王都で待機して頂くことが昨日の会議で決定しました。リュークさん達のパーティー【蒼の羽根】もその対象です。

そして、今日偵察から帰ってくる予定のパーティーの報告によっては即座に迎撃態勢を取る必要があります。その場合、リュークさんたちにはある程度他の冒険者達を纏めてもらうこともあります」

「待って、ギルド規則によれば基本的には金級以上で尚且つギルドから承認を受けなければ有事の際の冒険者に対する指揮権は持たないはず」

「はい、そのとおりです。小さな街など無い限り、まして一国の王都となれば規則通りになります。

本来ならもう少ししっかりとした場で伝えなければならないのですが、今回は仕方無いでしょう。

冒険者リューク・アルトラシオ、ラーミュウ・エン・リーラの二名の金級昇格が決定しました。従って、【蒼の羽根】も金級パーティーとなります」


冒険者ギルドにおける金級冒険者とは……冒険者の中でも数パーセントしか存在しない上位冒険者を指す。

上位冒険者の一番下とはいえ今までとは格の違う…………場合によっては討伐難度600を超えるようなモンスターと戦い、貴族からの依頼を受ける事もあるそんな者達だ。


「待ってください、俺達はまだ昇格試験を受けては居ません」

「そうですね。ですが、ある一つの討伐を持ってそれは免除されています。首無し幻影騎士(ファントムデュラハン)の討伐、それを持って昇格試験とされています」

「そうなると、討伐難度500以上のモンスターの討伐が昇格試験ということ?」

「それはなんとも」


今更ながら討伐難度というものがなんなのか説明すると、読んで字のごとくモンスターの討伐の難易度である。

だが、難度に関しては明確な基準はなく、例えばゴブリン一体の討伐難度が1だったとしても、オーク(討伐難度14)はゴブリン14体分の強さを持つというわけではない。

ドラ○ンボールだと銃を持った男の戦闘力は5だが、例えばその男が106000人居たとしても、フリ○ザと全く同じ強さを持つわけではないだろう。


「話を戻します。

今回の件に関して、冒険者ギルドクラウディス王国本部は金級パーティーのうちクラン【竜爪の旅団】所属の【竜の鋭爪】【焔の宴】を主とした12のパーティーと、白金級から3パーティー、ミスリル級から3パーティーに冒険者の簡易指揮権を付与することを決めています。その中にはリュークさんたちも含まれています。

勿論、ギルドからもできる範囲ではありますが援助──例えば優秀な冒険者の斡旋なども行えますのでなにかありましたらお申し付けください」


まだ確定ではないがモンスターの大発生による戦いが起きた際、その対処は主に冒険者とその地区の領主の軍、そこに駐留する国軍が行う。しかし、ちゃんとした組織である軍とは違い、等級による上下関係はあるものの組織としての指揮系統が冒険者には存在しない。それによる戦線の乱れを防ぐ役割を果たすのが、冒険者ギルドが上級冒険者に一時的に付与する簡易指揮権だ。そして、同時に上級冒険者達はモンスターに対する戦力の中核を担う存在でもある。だが、パーティーによっては回復役(ヒーラー)が居なかったり、強力な魔術師が居なかったりと戦力にはバラつきがでる。それが無かったところで上級冒険者という戦力に変わりはないのだが、あればそれだけ殲滅力が上がる。そこでこの様な時には指揮権を付与された上級冒険者にはいくつかギルドから援助が行われるのだ。

その援助または恩恵には上に述べたような戦力の補充のほかに回復薬やアイテムの使用の優先だったり、腕利きの職人への口利きだったりといったものも存在する。



ルーシアの言葉を聞いたリュークの中にはある思いが生まれていた。リュークはそれをミュウに小声で伝えた。

考えていたことは同じだったのだろう、ミュウも了承の意を頷きで返した。


「ルーシアさん、なら幾つかお願いしたいことがあります」

「なんでしょう?」

「まず一つ目は────────」





























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ