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Quest23

一時間程が経って、澪夜の姿はギルドの訓練場にあった。

武器の選択と習熟……というのがここに居る目的であるが、実際の所澪夜にそれが必要かと聞かれれば否と答えるべきだろう。


しかし、そうであったとしても一応はギルドで決められていること。それに従わなければならないのは組織に属するものとして仕方がないことだ。


「スキルはもうあるってことですね?」

「はい」


だが、澪夜の使用する武器はすでに決まっているし、新人育成における目的であるスキル取得も終了済み。

さらに、訓練相手である元鉄級冒険者のギルド職員を打ち倒したことにより、澪夜の本日の実技訓練は終了となってしまったのは仕方のないことだったのかもしれない。









新人育成というのは詰まるところ、家を継げなかった農家の子供や小さな商家の子供を対象にしたものであって、ある程度の実力があれば必要があるかと問われれば無いのかもしれない。しかし、それは実技に関してだけであって、座学に関してはほぼ総ての人間に必要と言えるだろう。


それは澪夜にとっても同じで……この日に澪夜が学んだことは多かった。

モンスターの生態は勿論、近くのアヴルル森林と数日前に澪夜の居たアーヴェンデルト大森林におけるモンスターの頒布、大まかな地理など。


学ぶことは多かったが、澪夜はその全てを完璧に吸収していった。





◇◆◇◆◇


異世界生活5日目。

新人育成2日目の朝。


澪夜の姿は前日とは違いギルドの資料室にあった。

分厚い本を机に置き、羊皮紙に只管に羽根ペンでその内容を要約し、書き写していた。


今澪夜が書き写している本の題は【リュウナン大迷宮の謎】というもの。

リュウナン大迷宮というのは俗にダンジョンと呼ばれるもので、内部は入り組み、モンスターが蔓延る魔の巣窟の名である。その内部には貴重なアイテムや強力無比な武具があることもあり、多くの冒険者がそれらを求めて日々探索を行っている。

もし、この中で見つけられたアイテムがオークションに掛けられれば大金で落札されることも珍しくなく、一攫千金も夢ではないのも彼らを駆り立てる理由だろう。

さて、この本は『謎』という単語を用いているがそれを解明していたりするわけではなく、その内容は現在攻略されている階層や攻略済みの階層、出現するモンスターや発見されたアイテムの情報などが書かれている。

簡単に言えばゲームの攻略本というのが一番近いだろうか。


本来なら、この勉強を澪夜がすることは無いはずだったのだが、初日に教師役であるルーシアの予想を大きく超えて本来の範囲を終了させてしまったために急遽こうなった次第だ。

そうなったのは澪夜の学習能力が高かったのもあるだろうが、同時にルーシアの教え方が良かったのも関係している。

国立魔法学術院を次席で卒業した才媛である彼女の長所が顕著に出たというところだろう。













「グギャッ」


そんな断末魔の声を響かせ、ゴブリンが倒れる。


時刻は16時42分。

澪夜の姿は……王都近くのアヴルル森林にあった。


「おつかれさま。そろそろ夜営の準備をしようか」

「わかりました」


刀をひと振りして刀身に付いた血を払い、鞘に納めた澪夜に声を掛けたのは金髪の青年……澪夜に新人育成を勧めた銀級冒険者であるリュークだ。

本来ならば鉄級あたりの冒険者が引率するのだが、生憎と新人育成の依頼を好んで受ける人間は居ない。そこで、白羽の矢が立ったのが新人育成出身のリューク達のパーティーだった。と、いっても彼らから進んで澪夜の面倒を見るとルーシアに掛け合ったのだが。


「それじゃあ、まずは野営地を探そうか」

「了解です」

「野営をするにあたって、重要なのは水源の確保だ。それは魔術師が居ても居なくても変わらない。だからといって水源……例えば川に近すぎてもいけない」


もし、仮に雨が降りでもしたら最悪の場合川が氾濫し流されることになるだろう。

そのくらいは澪夜も予想はしている。


「次になるべく開けた場所であること。死角が多いと敵からの襲撃を受けやすくなるからね。

そして、火だ。これが無いと、夜は暗いからなにもできないし、冬なんかに暖を取ることもできない」


敵からの襲撃という点に関しては澪夜は特に心配はしなかった。

【楽園の天幕】を使えばある程度の攻撃は防げるだろうと予想をしている。


「さて、これらを踏まえて場所を探すわけだけど……」


「おぉーーい、リューク!!夜飯とってきたぞーー!」


木々の間から大きなファングボアを引き摺りながら、人影が歩み寄ってきた。

金属の鎧を着け、背中に大きな盾と剣を背負った短く刈り上げられた赤髪の筋骨隆々の男。

彼はリュークのパーティーメンバーの【盾戦士シールダー】。名をダンケ・ハルバンと言う。


「ん、ああ。ダンケ、お疲れ様。他の皆は?」

「シリルとエリルとミュウは山菜と果物を探してくるってよ。んで、新人のほうはどうよ?」

「んー、優秀だね。技量も十分だし、躊躇いが無い。はっきり言ってゴブリンじゃ相手にならない。コボルト……いや、オーク相手でも戦えるね」

「てことは、銅級相当ってことか。優秀だな」

「ごめん、僕の言い方が悪かった。オークはオークでもハイ・オーク相手でも戦えるってこと」

「おいおい……それって鉄級相当じゃねーか。俺達がそこまで行くのに何年掛かったと思ってんだ?」

「3年……だね」


一般的に、殆どの冒険者は鉄級でそのキャリアを終了する。

その理由は怪我だったり年齢を重ねたことによる身体の衰えだったり、様々だ。しかし、その中で最も多いのが自身の実力不足というものだろう。

この世界にも、ステータスという概念は存在する。その中にはレベルというものも含まれているわけだが、レベルアップはそう簡単に起こるものではない。

そもそも、レベルアップにはなにかしらの経験値が必要なわけだが、人間全員が全くおなじ経験で同じだけ成長するかといったら違うのはわかりきっていることだ。

少ない経験で大きく成長できる人間を人は俗に天才なんて呼ぶわけだが、冒険者の殆どはいうなれば凡人である。

その凡人達の到れる最高点が鉄級冒険者というものなのだ。


リューク達は若くして銀級冒険者となっているわけだが、それはその凡人達よりも高い才能を持ち、尚且つ努力を重ねてきたからだ。

そんな彼らが冒険者として活動し始めたのは18歳のころだったのだが、それから7年が経っている。

冒険者となって3年で鉄級冒険者。

それを早いと見るか遅いと見るか。それは人それぞれではある。

しかし、今世界に名を轟かせる冒険者はその頃には今のリューク達と同じ銀級や金級であった。


登録時点、それも自分たちの登録した時と同じ年齢で既に鉄級もしくはそれ以上の強さをもっているかもしれない澪夜。

リューク達はどこか焦るような、そんな気持ちを心に抱えていた。









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